邪剣の舞踏曲
「邪剣の舞踏曲(カオスワルツ)ッ!!」
ディルの技名と共に辺りは黒い霧に包まれた。
「な!?」
急な目隠しに綾太は驚きを隠せない。
「各自警戒を緩めちゃ駄目だよ!」
どこからか聞こえるメリアラの声に各自警戒を強めた。
ヒュッと綾太の前に斬撃が放たれた。
「ぐうッ!」
重い一撃に怯んだ綾太は目を凝らしてディルを探す。
「綾太!そこにいるのね!?」
近くからノエルの声が聞こえる。
「来ちゃ駄目だ!!」
「キャアッ!」
綾太の警告よりもディルの判断の方が早かった。ノエルは脇腹を斬られたのである。
「ノエルッ!!」
探しても見当たらないノエルの名を呼ぶ。
「速さは疾風、慈愛は暴風、嵐を集わせし四大元素の一つよ、好意と嫌悪、慈悲と憎悪もろとも切り裂き砂塵となれ!サイクロン!!」
ステラの風の上位魔法を唱えた声と共に黒い霧は吹き飛んだ。
「流石魔王様、お早い対応です。」
ディルは霧を吹き飛ばされたのに余裕である。ディルには余裕になれる理由があった。
「嘘だろ・・・。ディルが五人。」
メリアラと戦闘するのがディル。ノエルの血が付いた邪剣を振り、血を払うディル。ステラと睨みあうディル。腕に傷を負い倒れるティーナの横に立つディル。綾太の近くに邪剣を構えるディル。
余裕の理由はこれだった。
「五人も・・・。ステラ!!今すぐノエルとティーナを連れて離れろ!安全なところまで行ったら二人を治療してくれ!!」
五人のディルに絶望しそうになる綾太だったが、ノエルとティーナの横に立つディルの返り血を見て我に返ったのである。
「ここは俺とメリーで何とかする!早く行け!!」
「わかったわ。絶対負けないでよ。」
ノエルをおぶり、ティーナを腕に抱えた状態でステラは戦場から離れて行った。
「魔王様が消えたのは俺にも好都合だ。メリアラ、いつまでそのお荷物を抱えたまま戦えるかな?」
ディルはメリアラと綾太を挑発する。
「お荷物かどうかは戦ってから言え!」
綾太は自分の近くにいたディルに拳を作り走り出した。
「綾太!一人は任せたよ!時間稼ぎだけでいいからね!」
メリアラはディルを四人纏めて相手する。
綾太対ディル、メリアラ対4ディルの戦闘が始まった。
「クソッ!当たれ!」
盾を当てようとしたり殴ろうとするが、綾太の攻撃は一向に当たらない。
「貴様一人が時間稼ぎか・・・。」
「お前一人なら俺でもできるさ。」
綾太は拳を作りディルに殴り掛かる。避けないディルに拳は当たると確信した綾太だった。
「笑わせるな!!」
ディルは綾太の拳を簡単に避け、綾太の殴り掛かってきた右腕を折り、腹に蹴りを入れ吹き飛ばす。
「あ、あ、あぁぁぁぁぁ!!」
吹き飛ばせれた綾太は折れた腕を見ながら絶叫する。
「貴様一人でどうにかなるほど魔王軍幹部は弱くはない!」
ディルは地面を蹴ると、一瞬で綾太の目の前まで行き頬に蹴りを入れる。
「うぐぁ!」
地面を転がりながら吹き飛ぶ綾太は痛みで声を漏らす。
「貴様など邪剣を抜くまでもない!」
徐々にディルが寄ってくる。
綾太は恐怖で声も出ない。
「メリアラも哀れなものだ。こんな軟弱な男に振り回さているなんてな。」
鞘に入った邪剣で綾太を殴る。鈍い音が辺りに響く。
綾太は殴られる間考えていた。
俺何で異世界に来たのにもう死にそうになってんだろ?
やっと来れたのに何でこんな辛い思いしてんだろ?
カッコつけたのに何でボロボロになってダサすぎるカッコになってんだろ?
仲間を助けられたかもしれないのに何で動けなかったんだろ?
疑問しかない。俺以外ならうまくやれたのかな?俺が強ければ良かったのかな?ならいっそのことここで、ここで朽ち果てても・・・。
「綾太ぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!!」
メリアラの声が綾太の耳に届く。綾太はメリアラを見るとメリアラは涙を流していた。
何で女の子泣かしてんだろ?何で友達を悲しませてるんだろう?
メリーを悲しませたくない。友達を泣かせたくない。
ならわかってるだろ?立つんだ。辛くてもいい。ダサくてもいい。弱者でもいい。
ここで朽ち果てて友達を泣かせるわけにはいかないんだ!
だから俺は、俺は・・・。
負けられないんだッ!!!!
ガシッと綾太は左手で殴り続けるディルの邪剣の鞘を掴む。
「何!?まだ悪あがきを続けるか!」
そう言って邪剣から振り払おうとするが、綾太の左手は絶対に離すまいと死ぬ気で掴んでいる。
「捕まえたぜ。」
綾太はほくそ笑むのであった。




