謎の白い液体
酒! 飲まずにはいられないッ!!
あれから神通力の修行の日々が過ぎた、そして休憩中にやらかしてしまったのだ。
前にも説明したが、この小屋には様々なものが置かれている。そのほとんどが薬品やら占いや星読み道具だったが、未だに用途不明のものが多々ある。それに食料のあった部屋にも様々な物が置かれている。
そんな物を宝探しの気分で漁っていたら見つけてしまったのだ。
地下室のだ、食料があった地下室の土壁の向こうに空洞があったので内丹術の人体強化を駆使した体当たりをしてみるとそこにはいくつものの大きな壺が置かれた石造りの部屋だった。
そして興味本意に壺の蓋を開けたのがいけなかった。思えばあの壺は全てパンドラの箱であったと言えるだろう。
壺を開けた瞬間、ムワッとした匂いが俺鼻を突いた。
酒の匂いだ。
壺の中には乳白色の液体が詰まっていた、そして何故か自然と壺の中身に口をつけてしまったのだ。
口に含んだソレは酸味がよく効いていて、ほんのりと甘い。ドロリとした感触が舌を……そして喉を通り抜けていく。
美味い!? なんだこの酒! 俺は壺に顔を近付けるようにして乳白色の酒に口をつけてガブガブと飲んだ。
味は濃厚で美味いとゆいより旨い! そしてこのドロドロの感触! 前に金丹を食べて今まで食べてきた物は糞だと明言した俺を全力でぶん殴ってやりたい!
長いこと霞を食べる生活を続けてきたせいか久しぶりの味のあるものが尚更美味く感じる! やっぱり人は味のあるものを飲食しなきゃダメだな!! ただ腹を満たせればいいってもんじゃない!!
旨い! 旨いぞ!!
ガブガブと飲み続け、気が付けば壺の中身は半分程になっていた。
俺酔いではよろよろと床に倒れた、幸せだ……。何とも心地いい。
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それ以来、修行の後に、隠し部屋の酒をチビチビ飲む日々が過ぎた、止められないのだ、飲むのが楽しすぎて何度も飲んでしまうのだ。
毎日飲んでも飽きのこない味わい、俺はこの名もしらない酒の虜になってしまった。
しかし、悲しすぎることに2ヶ月程で大量の壺は空になり、今では最後の一壺になってしまった。
アカン、酒が無くなったら俺はこれから何を飲めばいいんだ? このままじゃヤバイ!! 何か方法はないのか?
酒が減るとともに募っていく、やがて俺は一つの結論に達した。
かつて、かの豪遊の限りを尽くした女王、マリー・アントワネットは貧困の民衆に、「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」と言ったとされていた。その後、その噂が民衆に広まり怒りで反乱を起こし、捕らえられた彼女はギロチンで首チョンパの刑に処されたが……、彼女のその言葉を借りてこうゆう作戦名になった。
題して、「お酒がないなら作ればいいじゃない」作戦だ!
が、しかし。この作戦には致命的なミスがあった。
それは、、製法が全くの謎。作り方なんぞわかりゃしない俺は、付け焼き刃の知識で酒造など出来るわけがなかった。
多くのアルコールを含んでそうな薬品やらを使い、繰り返し蒸留してアルコールを作り、俺の飲んでいる酒を混ぜて味を付けたものを一応作ってみたが……。
「ギュエェ!! ブォエェ!!」(飲めるかこんなもん!! げえぇぇ!!)
不味いし、喉は焼けるように熱くなるし、舌は痺れるしで散々な目にあった。「ギュエェ!?」(糞マズ!?)俺は思い切りアルコールを吐き出した
飲めたもんじゃなかった、少し飲んだだけで喉が焼けるように熱くなり、舌は痺れるは散々な目にあった。
いくら酒が飲みたくてもこんなものは飲めない、つーかなんでただのアルコールを飲んだんだ俺は……、しょうがなく次の作戦に変更した。
題して、「酒造できないなら買えばいいじゃない」作戦だ。
だがこの作戦にも大きな欠点がある、まず人だが。人はこの小屋を作った仙人がいるように、多分存在する。問題は、俺の姿だ。
狸だ、俺は今では狸なのだ。当然人前に出ることは出来ないだろう。
そこの問題はまぁ、実はどうにかできるが。
次の問題は金だ、人間だった頃は金、金、金な世界だったが、果たしてこの世界には貨幣は存在するのか? 物々交換ならこの小屋の物を少し拝借すればどうにかなるが、貨幣が存在するならばどうやって手に入れる? 働くか? 働くならバイトとかがあれぱいいが果たしてバイトが存在するのか?
考えたらキリがないな、、。まぁ目標は定まったのは良いことだ、目標があると無いとじゃ全然違うしな。そもそもいつまでもこの小屋にいられるか分からないしな。もしかしたらこの小屋の持ち主がここに来るかもしれない、俺は金丹を食べちまったし、それにここの物を色々使ってしまったしな……。
決めた、俺は出来るだけ早くここを出る! そして旅に出よう!
酒以外にも気になることは沢山あるしな! いいじゃんか旅に出るって、楽しそうだな観光とか、世界酒巡り&うまいもん探しとか。そうと決まれば早く神通力の習得だ! 長く見積もって後二年で全ての神通は習得出来そうだ。これを覚えればこの結界から出ることなんぞ簡単だ。
しかも内丹術と合わせれば向かうところ敵無しだしな!
そう考えたら俄然やる気が出てきたぞ! よーしッ! 気合い入れて頑張ろうじゃないか!!
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我が世の春がキタァァァア゛!!
遂に! 遂に習得出来たぞォオ!! 俺は狸をヤメルぞォオ!!
ここまで大変な道のりだったもんだ!
一つの神通力を覚えるために何年かかったことか……。
そもそも神通力とは何か? それは名が表す通り、神に通じる力だ。
たとえば千里を見たり、遥か遠くの音が聴こえたり、人の心を読んだり、自由自在に変身したり、
凄い万能な力だ。
しかし残念ながら、内丹術と違い、俺には全く才能がないらしい。なんとか変幻の術は覚えたが他はからっきしダメダメだったが。
だがだ……。変幻の術は十分過ぎる程になんとも素晴らしい能力だったのだ!
何にでも変身出来る、無機物から人間にも、小さなものなら虫にまで変身できる万能の能力、それが変幻の術!
だから俺は今こんなにもテンションが高いのだ、酒が無くなって早三年、来る日も来る日も思い出すあの酒を飲む快感! 毎日酒のことを考えてしまい胸が張り裂けそうな程に苦しんだ!
もはや異常な程の酒への執着ッ! これも狸だからなのかッ!?
散々苦しんだ! 俺は餓死しかけた時よりも間違いなく苦しんだ!! 長い間生殺しのような目にあったぶん尚更苦しんだ!!
だが、今日でその苦しみから解放される! グッバイ物置小屋! さよなら結界! 長い間ここで暮らしてきた、多分三十年ぐらい、暮らしてきたハズだ! 気付けば俺はオッサン……いや、中年狸だ、体毛もいつの間にか真っ白になり、体格も良い大狸だ。
金丹は老化は止めるが成長は止まらないらしくこんなにも立派に成長していた。
湖で体を洗っている時に自分の成長した姿を見て驚いたぜ! てっきり金丹の効果がなく歳をとったのかと思い慌てて金丹の説明書きを読んだもんだ。
長い間ホントに助かった! ありがとうここの持ち主! そしてスマナイ持ち主! この物置小屋の中はもうスッカラカンだ! 不完全だった変幻で手だけを人間にして長い間に練丹術のの練習をしたお陰で今では真っ黒な炭しか残ってないぜ! 才能が無かったんだぜ!
それではいざッ! 参る!
俺は凄まじいハイテンションを維持したまま、結界に向けて気を放った。
すると青白い結界は俺が気を放った部分だけグニャリと穴が開いた。
この結界を作ったのは仙人! ならば同じく仙人の力を使えば開くのは道理だ! もしこれで開かなかったら間違いなく泣いてたがな!
俺は結界に開いた穴を直ぐに通り抜けた、すると素早く穴が塞がるのだった。
これ、もしそのまま突っ立っていたら切り取られてたかもしれないな。
ま、まぁ無事に結界を出ることができてよかった! うんホントに良かった!
後は谷から出るだけだ! 我が世の未来は明るい! いざ参らん!!