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 その日の朝、俺は激痛とともに目を覚ました。痛いし熱い、主に背中が凄い痛い、いや、やっぱり体全体が痛い、痛すぎるし熱すぎる。何でこんなにも痛いんだ!? 人間だった頃もこんな痛み一回も感じたことないぞ! まるで全身に針を刺されたうえに熱湯に入ってるような痛みと熱さだ!


 原因を探るべく目を開ける、木の枝にぶら下がるように眠っていたので、視界には木の下の地面が見える。異常はどこにもない、自分の手を見つめる、なんか少しデカくなってる気がする。気がするってか、実際デカくなってるよな……。成長痛? こんなにも痛い成長痛があってたまるかクソめ!!こんな痛みの中意識を保てる自分を褒めてやりたい気分だ、自分を褒めるなんて気持ち悪いからやらないがな。


 近くの枝に寄りかかる相棒を見ると、同じように苦しそうだし心なしか大きくなっている。こりゃ、兄弟全員が同じように成長痛を迎えてるんだな。ホントにおかし……な世界だ……な。俺は余りの痛みにだんだんと意識が遠くなる……。


 次に目が覚めると、なんか体が大きくなったように感じていた。相棒を見るとそこには結果にコミットした相棒の変わり果てた姿が! あんなにもひ弱そうだった小さな体だった(俺と同じ大きさ)狸がどう見ても二倍程大きくなっているじゃないか!?


 この世界の生き物は皆こんな感じなのか? だとしたら怖わ! 短期間で二倍の大きさになったり、魔法一瞬で敵をを真っ二つにする奴らがわんさかいるってことだろう!? なんちゅう地獄みたいな世界だ、狸に成り立ての頃に何も知らずに、「いいじゃん狸生活、楽しそう」と、思ってた腑抜けた自分を殴ってやりたくなる。


そうして悩んでる内に、相棒も目を覚ましたので、いったん考えるのをやめた。つーか、考えてもしかたないよな、諦めよう、諦めは大事だ。こんなこといくら考えてもいてもしょうがないよな、そんな無駄なことに頭使うよりも、今日の飯を見つけることのほうが大事だ。


よく考えれば相棒が二倍の大きさになったてことは、俺も二倍の大きなになってるってことじゃないか! 体格もガッシリとしてるように見えるから身体能力もさぞ上がってることだろう、なんか進化みたいでワクワクするな! 俺は進化って単語が大好きだ、なんか聞くだけでワクワクしないか?


ゲームとかで手持ちのモンスターが進化する時とか最高だろ? その大好きな進化が自分の身に起こったんだ、興奮してメチャクチャ楽しい気分だ、そのおかげか、さっきまでの恐ろしい気分がスパーンと吹き飛んでいったようだ。やべぇ! 凄くワクワクしてきた! 今すぐどれくらい変わったか試したい! 早速、俺は木枝からスタリと飛び降りてそこら辺を見渡した、まず目線が高くなっている、それに前よりも色彩が綺麗に見える、既にこんなに違うのか!


 お次は聴力! 風によって、草木が揺れる音が聴こえるが、あんまり変わらないな。少しガッカリだが気を取り治して、次は周りを駆けてみた。


全然違う! 風を感じるように速い! 多分、地球のトップアスリートよりも速い気がする! 駆ける速度がこんなに違うのか! 進化だ! これ、絶対に進化だ!


俺がやたら高いテンションで喜んでいる駆け回っていると、相棒がようやく起きて、俺は相棒に近寄ってこの新たなる体を見せつける、俺の体格が変わったことに少し驚いた後、ポージング(体に力を入れている)をとる俺に、「なにしてんだお前」みたいな目で見てきた。だが、俺はそんな目線は全然気にしない。


ようやくお目覚めか相棒よ!! 清々しい朝だと思わんかね? どうだい、この俺の進化したニューボディは? 凄いだろ? 相棒、君の体格も俺と同じく逞しくなってるんだぜ? 俺とお前が手を組めば、この森に敵などいないも同然だ! ビーバーみたいな奴だろうが、魔法を撃つ前に素早く殺れば問題ない。早速朝の狩りに出掛けよう。この体で早く戦いたくてウズウズして堪らない、もはや怯えなど全くないね!


自信満々の俺は相棒に一声鳴いて朝の狩りに出掛けた、しばらく進むと湖を見つけ、そこに俺達より大きな巨大な像みたいな奴が一匹で水浴びをしついた。ちょうどいい、腕試しにピッタリな愚鈍そうな奴だと思った俺は、像を狩ろうと身相棒と共に身を構えた、すると突然、像が空に浮かんだ。否、像の胴体がデカイ爪に捕まれていた。


グチャ、像は一瞬で握り潰されて色々はみ出た。真っ赤に染まる湖。上を向くとそこにはデッカイ茶色い羽根の鳥がバサリバサリと羽ばたいていた。


ジロリ、俺達を二つの黄色い目が見る。鳥は死んだ像を湖に放す。

そこまで見た俺はいつぞやの相棒の如く逃げ出した。馬鹿かあんなやつに勝てるか! 誰だよ、森に敵なしとかほざいてた奴は! まぎれもなく俺だよ! 何だよあの鳥! 殺した像食えばいいだろが! なんで捨てんだよ! 明らかに俺達に目線がガッチリロックオンされてんじゃないか!!


横を見ると相棒が必死に駆けていた、後ろを向くと、凄い速さで巨体鳥が迫ってきている! 今の速度じゃ絶対に追い付かれる! ならば、こんな時の為の相棒だ! スマン相棒、お前の分まで生きてやるからな!


ゲシッ! 俺は勢いよく横の相棒に体当たりをした。相棒は体当たりでよろめいて転んだ。

 さらばだ相棒! そして最初に戻るワケだ。


最低だって? 最低で結構、生きてさえいれば明日がある、死んだらなにもないだろ? 助かるためには相棒の犠牲は不可欠だった。二匹とも死ぬよりはマシだろ?


そんなワケで逃げ延びた俺は、森の中で一息ついた。


フゥ~、危なかった、助かって良かった。生きてるって最高、やっぱ俺みたいな狸は戦いを好まず、怯えるように生きるほうがいいな。


助かったと思った俺だったが甘かった、バサリ、バサリと真上から音が聞こえたと思うと、、。


ガシッ! 大きな爪が俺を掴んでいた。フワッと浮遊感を感じた。気がついたら空にいた、下を見るとみるみる遠ざかる地上の森が見えだんだんと小さくなってゆく。


「キュイィ!」


隣から鳴き声が聞こえたので横を見ると、もう片方の爪に相棒が捕まっていた、凄い睨んでる、絶対に怒ってるよな、よせ相棒そんなに睨んでもどうにもならないぜ。


キュイ、しばらくすると相棒は睨むのをやめ、呆然と下に広がる地上の森を見つめた。顔が狸なのに青白くなってゆくように見える。


俺もこれからのことを考えるだけで嫌になってくる、この鳥に喰われるんだろうか? 一体どこに向かっているんだろうか? 考えるだけ無駄か……。


多分これは人生最後の空の旅になるんだろうな。短かったが濃厚な人生だった、いや、、もしかしたらこれは全部夢なのかもしれない、おかしいと思った、そもそも俺は寝ていただけだ、それが目を覚ましたら狸になってたんだ、ほら目を閉じてもう一度開ければ、……。


目を開けると辛い現実が変わらずあった。むしろ悪化していた、相棒が消えていた、上を見上げると鳥のクチバシに頭をツイバまれていた.

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