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真っ二つ

 俺は今、人間だった頃の倍はあるじゃないかと思われるスピードを感じていた。だがわかるのだ……、この速度で走り続けることは無理だということを。今、俺と相棒が追うビーバーの速さは俺達よりも少し遅い、奴の体力が切れるのが先か、俺達の体力が尽きるのが先か。俺達の親は四人乗りの軽自動車のようなデカさの巨大狸だったが、あの狸は自分よりも早そうなドラゴンっぽい奴を狩っていた、たぶんその身体能力を俺達も受け継いでることだろう。受け継いでるよな? う~む、まだ小さいから無理かも知れないな……、それでも俺はビーバーを追わなくちゃならない。


 たとえまだ、身体能力が低くかろうが気合でどうにかしてやる! 人間だった頃から気合だけはあったからな! ゼッテエ捕まえてやる!


 俺はグイグイ速度を上げて走った……、すると突然ビーバーが立ち止まって一番近くの相棒の方に向かって「うぉ~ん! うぉ~ん!」と鳴いた、すると突然ビーバーの口が淡く光りだした、そして……。


 バシュウウウゥ! と、凄い音がしたと思うと……、相棒の体が真っ二つになった! ひえぇっ! 相棒が真っ二つに!! 指パッチンで真っ二つならわかるけど、なんだアレ! もしかして魔法!? 嘘だろう!! 俺のいる世界は魔法の世界だったのか!?


真っ二つの相棒から血がドバドバと溢れ、一瞬だけ小さくピクリと震えて。……死んだ。 俺ずっと、巨大で危険な生物がわんさかいるモンスターワールドだと思ってたんだが!? しかし、今が絶好のチャンスに見えるぞ! 奴は口から血をダラダラ流している様子から、そう何発も撃てるわけじゃなさそうだ! 多分、あの、「バシュッ」は命の危険な時だけ出せるヤツだ! そうに決まってる! むしろそうじゃなきゃ困るぜベイベー!! もう一回撃たれる前に殺せば問題ない!大丈夫だ問題ない!


 俺は相棒が真っ二つになったことでパニックになって変なテンションで恐ろしいビーバーの首筋に飛び掛かる、ガブリと俺の歯に感じる肉を裂く感触、そして血の味……。俺はビーバーの喉に噛みいて……、裂いた! 成功だ! ビーバーの野郎はぐったりと倒れて動きを止めたのだった。



 俺はビーバー(ただし魔法は口から出る)を倒した後、半分になってしまった相棒を見つめる。相棒の目は驚くような表情のだ。俺ももしかしたらこうなってたかもしれないと思うとゾッとするが、俺は生きている。ありがとう相棒、お前が代わりに死んだお陰で助かった、ただし、可哀想だとは思わんがな!! 自業自得だ、あの時ビーバーを襲うときコッソリと近づいて喉を裂けばよかったものを、わざわざ鳴き声を上げながら駆けていったのだ、思えば果実の時もコイツだけ先にトンズラしやがったな……。あれ? コイツちっとも役に立たなかったような……。


 まぁいいさ、最後は身代わりになってくれたんだ、それで全部チャラだ、俺は心が広い人間(狸)だからな。よし、戦いも終わったことだ、遅めの朝ごはんにしようじゃないか。


 俺がビーバーの死体に近づいたその時だった……、ガサガサと茂みがまたもやゆれだした、何でわざわざ茂みを揺らすんだ? 形式美なのか? 俺は警戒をして茂みを見た、すると中から現れたのは……。


「キューン……」俺のブラザーだった昨日のブラザーとは別の奴だ。あいつらよりも小さいし、体中にいくつもの浅い傷を負っていて、だいぶ窶れている。俺の姿を見たブラザーは嬉しそうに鳴きながら駆けて来る。

このタイミングで来るか! やっと食事にありつこうとしている時に! 俺達は全員ペアを組んでいた、嬉しそうに近づいて来るが、実はコイツの相棒が一匹、辺りに潜んで俺の獲物を昨日の時のように奪い取る気かもしれん! やらんぞ! 俺は急いでビーバーの後ろ首をくわえてブラザーから逃げだした。


が、しかし! 俺は俺より軽いとはいえビーバーをくわえているために動きが遅い。後ろから、「キュイーン! キュイーン!」と、鳴きながら少しずつ距離を詰めるブラザー! 俺は気合いを入れて更にスピードを上げようと足に力を入れようとした、次の瞬間!


ズテン! 足を木の根に引っ掻けてビーバーの体と共に地面に音をたてて倒れた。ビーバーが地面に叩きつけられると共に、くわえていた俺の歯から頭にその衝撃が伝わり……俺は意識を失った。



目を覚ますと、俺の顔をジッとブラザーが見つめていた。ヒッィ! 慌てて飛び起きた俺はブラザーから距離をとる。


空の色は暗くなっている、時間がだいぶ経ってるようだな。さっきから俺のことを見つめているブラザーを見ると、どうも不安そうな顔だった。


俺よりも体は小さいので一匹ならどうかできるな、ビーバーの死体を見ると俺が引っ掛かった木の下にそのままだ、コイツ……もしかしてホントに一匹なのか? 食料目的なら俺が気絶している内にあそこのビーバーを持って逃げればいいなのにそうしなかったならば……、この種族ってメンタル弱いのか? いやそんなまさか、大狸は一匹だったし関係は……多分ないな……。


「キュウゥゥゥン……! キュウゥゥゥン……!」


 どうしたもんか……、凄いつぶらな瞳で俺の事を寂しそうに見つめるんだが……。試しに声をかけるみるか……。


「キュン?」


 俺は、「何か用?」っぽいみたいな感じで鳴いてみた、するとつぶらな瞳のブラザーが、「キュウン!」と一鳴きして俺に近づいてくる、。なぜ近づく……、俺は何か用か聞いただけのつもりなんだが……。大体表情と様子からわかるが、近づくのはやめて欲しい……、ホントに相棒とかもういいから、さっき死んだ相棒が近くに転がってるとこ見なかったのかコイツ? それでも近づいてくるならたいしたメンタルだ。俺は速くビーバーの肉が食べたいんだが……、この際コイツを新たな相棒にしてビーバーの時みたいに盾替わりになってもらうのも……、いいなそれ!


 俺はさっきとは打って変わって新たな相棒になるかもしれない狸に優しく声を掛けた。


「キュキュキューイ! キュキュキュ! キュイキュイーキュキュキュ!」

(寂しかっただろう兄弟! 俺も寂しかったところだ! もしよければ一緒に組まないか?)。


 すると今の鳴き声の意味を理解したのか、肉だt……ゲフンゲフン! 相棒二号が涙ながらに俺にすり寄ってきた。ヨッシャ! 新しい肉盾GETだぜ!! 


 その後、俺はしきりに俺に向かって鳴いてくる相棒二号のたぶんに耳を傾けて、時々相槌を打って

やって話を聞いてやる、、最初の相棒は役立たずだったが最後は約に立った。コイツにも頑張ってもらはなくては困る。 これから短いかもしれないが頼むぜ、新しい相棒! 


 俺は話(たぶん波乱万丈な)を数十分で聞き終えた後、本当に待ちに待った食事の時間になった。あらかじめ二号には俺が先に食べると伝えてある、少なくとも肉は二匹分以上はあるからな。


 では、早速! いただきます! 目の前のビーバーの腹に歯を突き立てるように噛みつく、すると! 驚く程硬い、それにあんまりおいしくはない……、いやまず過ぎるってほどでもないが……。あんまり無理して食べたい程でもないな。

そいえばビーバーの尻尾って珍味らしいな。俺は代わりにデカくて平らな尻尾を噛む、何度も噛むと罅が入って中からプルプルの白い塊のようなものが見えてくる、それを試しに口に入れると……。


うま!? なんだこれ、俺が想像していた食感は火を通してないのでヌメヌメでベタベタの脂身だと思っていたんだが、プリプリとした舌触りにモチモチとした歯触り、俺の口は新たな世界にハローワールド!(こんにちは世界)噛めば噛むほど楽しい美味しさ、味はあっさりほんのり甘い!しかも地球のビーバーよりも大きな尻尾! まだまだ続くこの美味しさ! 食べる事がこんなにも楽しいのは生まれて初めてだ! コイツはたまんねぇぜ!!


気が付けば俺は尻尾を全て食べ終えていた、相棒にやる尻尾はなかった、いや……コイツにはもったいない味だな。俺は残ったビーバーの肉を食べていいぞと首で仕草した後、しばらく余韻に浸っていた。ご馳走さまでした! いやぁ、久しぶりに美味いもん食ったな、人間だった時よりもひょっとして美味いもんを食ってるのかもしれん。狸になった後に食べてきた犬肉や蜜アリの蜜も美味しかったが、このビーバーも勝ると劣らない味だったな。


することもないので、相棒のビーバーの肉を食べる姿を見ていると顔を不味そうにしかめていた。その肉かなり不味いしなソレ……。

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