表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/13

狩り

7/17 短編を削除しました。

 ようやく相棒に追いついた! 俺はあの後に、全速力で逃げていった相棒を追って同じく全速力で駆けていたのだが、相棒は疲れを知らないように駆け続ける、ようやく追いついた俺はクタクタになっていた。疲れたぜ相棒……、お前なんであんなに速いんだよ! こんだけ走れる程丈夫なら、あの二匹にも勝てたんじゃないのか? 俺は相棒をキツク睨み付けるが、一方の相棒は「きゅーい?」と可愛らしく首を傾げるばかりだった。


 そんな相棒を見ると睨み付けてる俺は馬鹿らしくなって、睨むのをやめた。チクショウ……、せめて果実を一口でも齧ることができたらな……。走ったせいで腹が減って堪らないな。どっかにまた果実とか実ってないもんかな……。


 俺は周りをキョロキョロと見渡すが、そう都合よく果実があるハズもない、さっきの場所からはだいぶ遠くに離れたのでこの広大な森ではまた見つけることができるか分からないし……、狩りしかないな……、獲物を見つけて狩るしかないだろうなぁ……。


 考えていてもしょうがないので俺は眠ることにした、もう夜も遅い。夜行性の動物に鉢合わせになるのは勘弁だ、今のうちにたっぷり眠って、明日に備えよう。俺はすぐそばの木の上に駆け上がり眠る事にした。

地面で直で眠っていつ襲われるかビクビクするよりも、木の上のほうが安全だからな。


 俺が木の上に登ると何故か相棒が「キュイイ?」と疑問的な鳴き声を上げた、馬鹿かアイツ? 地面でそのまま寝る気か? 俺はお前も来いよと「キュイ」と鳴く、相棒はどこか釈然としないような感じで木に登ってきた。相棒はなんで木に登る? と、キョトンとしている。やっぱり所詮はただの動物何だな……、あまりオツムが良くないようだ。


「キュキュイ」と、相棒にサッサと寝ろと俺は一声鳴いて体を木の枝に預けて眠ったのだった。



======================




 俺はキャベツだった、冬に植えられ、寒冷の大地の肥沃な養分を吸って美味しく成長して春に収穫される。そう、全ては消費者達にに食べられるために! そして俺たちを頑張って育ててくれた農家の人たちのために! 俺は一生懸命に成長をした。

 

 俺や他のキャベツ達も肥沃な養分を吸って成長したおかげで、体の免疫力を高め、お肌のシミやソバカスを防ぎ、お肌に良いたっぷりのビタミンCと胃腸の様子を整える食物繊維、さらには不足しがちなカルシウムや俺達キャベツに含まれる肝臓の効能を高め、世のお父さん方の二日酔いを和らげ、さらには胃粘膜を強化して現代人の食生活の乱れで傷ついた胃を修復するキャベジンなどを多く含む、おいしくて柔らかい春キャベツへと成長していったんだ!


 だが……、悲劇が訪れたんだ。肥沃な土地だったために、俺達キャベツは増えすぎたんだ、だから農家のおじさん達は悲しそうな顔で俺たちをトラクターで丁寧に潰して数を調整したんだ。ゆっくりと前にいるキャベツを潰しながら俺の所にトラクターが迫ってくる。近づいてくるトラクターを見た時俺は怖いというよりも悔しかった……、せっかくこんなにも美味しくて柔らかく優しい甘みの綺麗なキャベツに時間と手間暇をかけて栄養分たっぷりに成長したのに、消費者の皆に食べられないことが悔しくて、とても悲しかった……。


 いよいよ俺の番だ、迫りくるトラクターは俺の目の前のキャベツを粉々に粉砕して俺の表面ににその瑞々しい透明な汁がかかる。俺にかかった透明な汁は太陽の光を浴びて俺の薄緑の表面を透かして、まるでエメラルドの宝石のようだった、俺は死ぬ……、だが! 今潰されなかったキャベツ達が必ずや俺たちの無念を晴らしてくれる! 兄弟たちよ! お前たちの栄養と春キャベツの優しく甘い美味しさを伝えるんだ! そして俺たちが成し遂げれなかった笑顔を食べた皆に!!


 俺はその思いを胸に秘めて黒く巨大なトラクターのタイヤに潰された……、未練……だぜ。



======================




 なんかまた凄く変な夢を見たぞ!? 俺は鮮明に今見ていた夢の内容に体中に寒気が走っていた。だってだぜ! なんかやたらと鮮明だったし、潰される感触とかホントにリアル過ぎて……、もしや俺の前世は春キャベツだったか!? いや、そんなことはないハズだ……、俺は元は人間だからな!? そもそも死んだ覚えもないし、狸になる前は寝てた覚えしかないからな?

 

 俺は一人(一匹)で真剣に夢のことを考えながら眠っていた枝から飛び降りた。空には暖かな太陽が昇り、森の木々の葉の間から細かな日差しが俺に降り注いで上を向くと眩しい。相棒は既に起きていて、俺が地面に降りると、相棒も木の下に降りてきた。


「キュキュイ!」と、たぶん、「おはよう」的な鳴き声を俺に上げてきたので、俺も、「キュキュイ!」と泣き返す。


 俺は未だにこの鳴き声の意味が分からんが、何となくその場の状況で鳴いたり、鳴き返したりしていれば大体どうにかなることを覚えた。むしろ人間だった頃の会話よりも大体のニュアンスで鳴けばいいから、かなり楽だ。


 よし! 今日も一日元気にいこうか! そうと決まれば飯だ! 飯! 昨日の夜はあのクソブラザー二匹に果実を取られたせいで何にも食ってない、おかげで腹ペコだ。相棒も少し齧っただけで同じだろうし、朝飯を探そう!


 俺は相棒とともに朝飯を探しにいった……、んで、数時間後だ。見つからないんだが、果実も動物も!? いや? あんまりにも無さすぎじゃありませんかね!? 昨日の夜はあんなにすぐに果実が見つかったのに、なんでだ? もしや、ここら辺は食べられる食料が全くないのか? それでも草食の生き物がいるだろうに! あぁ~腹が減った、後ろにいる相棒の表情もどこか力ないような気がするが、気のせいではないだろう。


 こりゃ、早くなんでもいいから食べられるものを見つけなければ餓死する! 水は洞窟の奥にある湧き水を出る前にたっぷりと飲んだおかげか今のところ大丈夫そうだが、いつまで持つか……、俺が途方に暮れていたその時だった! 


 ガサガサとすぐ傍の茂みが揺れて中から現れたのは俺よりも小さく、濃い色合いの茶色で、フワフワした、長い胴を持つ中型動物だった。何となくだがビーバーっぽい人間だった頃動物園で見たビーバーの特徴的な平べったい尻尾がついてるし、地球のより尻尾のサイズがやたらデカく二倍程あるけども……。


 小動物は俺達に気づいてないようで、傍に生える他の木よりも太い種類の木の皮を長い前歯でガリガリと削って口の中に含んで両頬をモゴモゴさせている。これがドキュメンタリー番組だったならば、可愛い動物だなと和んでいただろうが……。


 腹の皮がくっつきそうな程に腹が空いている俺には、あの小動物が今は、ただの美味しそうな肉を蓄えた獲物にしか見えない。「キュイ?」相棒は俺の方に首を向けて小さく鳴く、「あいつを殺す(ヤル)か?」と鳴いたのだろうことが容易にわかるぞ相棒よ、だが焦るな……、せっかくの獲物が逃げてしまっては元も子もない、俺は振り出しに戻るのが一番嫌いなんだ、また数時間獲物を探して見つかる保証はどこにもない。

ここは隠密に、しかし迅速に奴の背後に忍び寄って、アイツを素早く殺る(ヤル)! 俺は相棒に、「キュキュイ!」と鳴いてから首で奴の後ろに回と、示したのだったが……。


「キュキュキュキュー!!」と、あろうことか相棒は大きな鳴き声を上げながらビーバー(たぶん)に向かっていきやがった!! あの阿保ダヌキが!! 当然、ビーバーは鳴き声を上げながら猛スピードで迫ってくる馬鹿狸に気づいて慌てて逃げてゆく。


 おお、ジーザス!!(何てことだ!) コンチクショウが!! 俺は慌ててビーバの前に先回りすべく素早く駆け出していく。あのビーバーを何としてでも捕まえてやる! 

 



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ