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屋敷

ストックはこれで終了です。


う~む、どうしたものか……。


あれから他の依頼を受けたものの全て失敗、荷運びなどの割りのいい仕事の張り紙は全て取られており、最初の頃の掲示板はかなり運がついていたらしい。


すると残るのは必然的に、薬品の被験、薬草採取の二つのみ、後は全て剥がされているのだ。


当然俺は薬草採取をやるしかない、前のように毒草と薬草を間違えることは無くなったが、次は速さが課題となった。


俺はどうやら採取が苦手らしく、朝に集めていたら夜だったこともざらだ。当然、薬草採取の依頼はその間に既に達成されてしまい、俺は取ってきた薬草をギルド内で買い取ってもらうしかなかった。


はぁ~、思わず溜め息が出る。


かくなる上は薬品の被験を……。うむ? 掲示板をよく見ると、古くて黄ばんだ張り紙が貼られていた。


何々? 屋敷の清掃、銀貨八枚、定員数一名、ふむふむ……。掃除用具は依頼主側で貸し出しか、むむむ?! 三食飯付き、さらにはFランクの依頼十二の評価だと!!


なんていい依頼なんだ!! 今日の俺は運がいいぞ!


俺は受付のじいさんにこの古い依頼を受けることができるか聞いた。


「屋敷の清掃依頼? そんなもの貼った覚えはないのだが……。評価十二だぁ!?。確かに印は本物だがなんだこれは――」とか、なんとか言ってじいさんは、分厚い帳簿を取り出してパラパラとめくった後確認したのか、正式な依頼だと言ってようやく受注ができた。


俺は直ぐに手続きをすると依頼の場所に向かった。


ヒャッハーー!!美味い依頼が俺を待っている!!


======================



着いた屋敷は街の隅に建つ古びた館だった。


木造の館にはツルが伸びて広がっていて、壁はボロボロ、おまけに窓は全て破れておりとても人が住むような場所ではなかった。


廃墟だ、これどうみても廃墟だ。


本当にここなのか? ここが依頼の屋敷なのか? ここの清掃ってことはつまり……。「よく来たね!君が依頼を受けた人かい?」


ヒィッ!? いきなり後ろから声を掛けられて俺は驚いた。


振り向くとそこにはいつの間にか、鮮やかな中華風のドレスを纏った黒髪の若い少女がいた。


「君が依頼を受けた人かい?」


「そ、そうだ」


「名前は?」


「タノキュウだ、アンタがホワンさんか?」


「僕はホワンさんの代理だよ、判子は貰ったから証明書を渡してくれるかい?」


俺はギルドで発行される証明書を渡した、ホワンの代理人の少女は証明書を受けとる。


「どうやら本人のみたいだね。早速だけども、家の修繕を頼むよ。用具はそこにある物置に全部あるから、やっておいてくれ」


「待て、待て、話が違うぞ。依頼では清掃だけでいいハズでは……」

こんな大きな屋敷を、一人で修繕しろなんて無茶な。


「困っているんだろう? Fランクの依頼が達成出来なくて?」 ぐぅむ。


「いいのかい? ただこの屋敷の修繕するだけでいいんだよ? こんな楽な仕事は他にないよ君?ここでこの依頼を止めちゃえば、、ずっとFのままだったりして」


ぐうの音も出ない。


「はぁ……、分かった。引き受けよう」


「よろしい、それじゃこの家の修繕しゅうぜんと清掃は頼むよ、昼には何か腹に溜まるものを持ってくるから食事の心配はしなくていいよ」


依頼主の少女(あるいは代理人)はそう言うと去っていった。


……。




======================



引き受けてしまったものはしょうがないと諦めて、俺は物置小屋に道具を取りに行った。中には金づち、梯子はしご、釘、ノコギリ、壺に入った塗料などがあった。


 道具はどれも屋敷の修繕に必要な物ばかりだ。


ご丁寧にも屋敷の木材と同じ色合いの板が何十枚もある。


こりゃ最初から屋敷の修繕をさせる気で依頼をだしやがったな、、チクショウ。


とにかく作業をしなくりゃ日が暮れちまう、さっさと仕事に取り掛かるとしますか。



まずは一部ボロボロになった板を剥がしてしまう、バールのような形状の工具で板を次々に剥がしてゆく。


続いて、新しい板を釘で打ち付けていく、ここで俺はあることを思い出した。


こうゆう時こそ仙術じゃねぇか?


こんな一本一本チマチマと打たなくても一気に終わらせれるじゃねぇか!


俺は釘を全て口に含み、板を張り付ける位置に放り投げた。


そこで内丹術で肺活量を強化し、て「シュバババ」と釘を撃ち出す!


まるでアメリカのコメディーアニメのように板は綺麗に壁に打ち付けられた。


大成功だ!! 内丹術万歳だ!!


俺はこの要領で次々に壁を張り替た。


お次は邪魔なツルだ、変幻の術で両手を鋭い鎌に変化させて背中に大きな鳥の羽根を生やす、ここら辺には人気ひとけがないのでこんな変身を街中でしようが気にする必要はない、ヒャッハー!!


次々と壁に張り付いたツルをバサバサと飛ながら切り裂く、たのすいぃ!!

さぁて、次は塗料だ!


塗料の壺を持ってきて一旦地面に置く、そして俺は変幻の術で今の体の形を大幅に変えた。


グニャグニャとした八本の足、テラリとヌメル頭、そう、、タコだ。


しかし、ただのタコと思うなかれ! 体長十メートルにも及ぶ巨大ダコだ!! その気になれば俺は二百メートルにも変幻できるが今は必要ない!


大ダコに変幻した俺は地面置いた塗料の入った壺をたぶんの真ん中の墨吐き口にまで持っていき、「グィー!!」と一気に飲み干す! なんか変な気分になるなこれ。


次にその飲み干した塗料を変幻で小さくした墨吐き口からカラースプレーのように霧状にして吐き出して屋敷の壁に塗りつけていく。やべッ、タコ墨が少し混ざりやがった!?いや、、かえって上品な色になったような気がするな。結果オーライだ!!


続いては屋敷の中だ、タコの状態で足に様々な工具を持って次々に内装を解体! 修復! ぶれいく~、ぶれいく~、正義のユンボをなんたらかんたら~、と鼻歌を(心の中で、だって今タコの姿だから)うろ覚えで適当に歌いながら作業を進めていった。


そして全ての作業が午前のうちに全て終わったのだった。




======================




てーれ、てーれてーれーてぇ~、キュラン。ビフォア:なんとゆうことでしょう!! かつては老朽化が進み壁はボロボロになり、窓は割れ、ツルが絡み付いて廃墟のようだったお屋敷は。


アフター:壁を一旦引き剥がし壁を張り替え、ツルを全て剥が、茶色の塗料を塗ることによって綺麗なお屋敷に生まれ変わりました!


匠の粋なはからいでタコ墨が茶色の塗料に混じり、上品な色合いになった屋敷は、かつてのように道行く人々に廃墟と言われることは二度となく、これからは道行く人々の目を惹き付けることでしょう。


ビフォア:続いては屋敷の中、内装はどれも全てのボロボロだった屋敷の中は……。

アフター:なんとゆうことでしょう!! こちらの壁も全て匠一人の手で張り替えられ、依頼主が用意した、なんのへんてつもない白い塗料は、またも匠の粋なはからいで上品なグレーの色合いになって壁に塗りつけられました。


これからはここに住む家族や住人は、この綺麗に改築されたお屋敷で笑顔を絶やさないことでしょう。


今回の費用はなんと依頼主が材料を全て用意したお陰で見事に銀貨八枚に押さえられました! 素晴らしい。


ふぅ……。


頑張ったな、俺。


======================


「な……ナニコレ!? エェ!? 何で!?」


依頼主(または代理)の彼女は、朝に言っていた通りに昼飯を持って現れた。


どうやらとても喜んでいるようだ。フフフッ!! どうだいッ!! 俺の仕事ぶりに驚いただろう?


「どうだいッ、素晴らしい出来だろう?」


「きっ、君はなんてことをしてくれたんだ!! なんで屋敷がこんな色に!?」


「上品な色合いになったろ?」


「ばっ……馬鹿なのかい君は!? これのどこが上品なんだい!? 真っ黒じゃないか!!」


むむ!? 少し黒っぽいが、一応茶色なんだが……。こいつの目は節穴か?


「何を言っているんだ、少し黒いが茶色だろ?それに屋敷の修復も終わっている」


「どこがだ!! 確かに屋敷が修復されていることには驚いたよ、、でもね。なんでこんな真っ黒にしちゃったんだよぉ!!」


 いいじゃないか、黒いが綺麗に修復されてるし。


「いいではないか、短期間で修復できたではないか」


「よくないッ!!」



「ならばどうすればよい? 既に屋敷の中や外の塗料も塗り終わっているぞ?」


「ちょっと待って! 中も? 中もこんなに真っ黒にしたのかい? 嘘だろう……」


「安心しろ、中は灰色だ。大丈夫だ、問題ない!」


俺は右手をグッとサムズアップさせて依頼人を安心させた。


「大丈夫じゃない! 問題だよ!!」


わからん、一体どこが問題なんだ?

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