薬
7/15:サブタイトルを変更しました。
ハローワールド!(こんにちは世界!)
遂に着いたぜ谷の外へ! 結界内を鳥に変身して二時間程羽ばたいたせいで疲れたが、ようやく谷の外だ!
懐かしいッ! 鳥の巣があるじゃねぇか! 谷にへばりつく様に谷に作られてるな、俺はここから飛び降りたんだな、ホントよく生きてたな! あの時の怪鳥はもういないようだな……そりゃ三十年も谷の底にいたんだ、あの鳥もとうの昔にくたっばってるだろうな。
いないなら面倒じゃなくていいな……あんな化け物相手にしてらんないからな、幸先いいぞ!
見ろよ、辺りは見渡す限り大森林! 天高くに昇る御天道様が眩しい。本物の太陽の光だ! あんな結界内のまがい物なんかはない! 生きてるって素ん晴らしいッ!!
ここから俺の冒険が始まるんだ、ヒャッハーー、まだ見ぬ酒や世界が俺を待っている!! 胸のホクホクが止まんねぇぜ!!
俺は森の上を飛びながらこれからのことに思いを馳せた。
目指すは森の外、人がいて酒が買えるような場所だ!
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やってきました森の外! 広がるは背景に山々が広がる目に優しい色合いの緑の平原! 空からの眺めは最高だ、いやー、やっぱり人は太陽の下で過ごすのが一番だ、ポカポカした日差しが体を温めてくれる。それに風が羽に当たって気持ちいぃ! 鳥になって飛ぶのって楽しいぃぃ!!
途中で、道のように踏み固められた場所を見つけた、道だな……。どう見ても道だな。こりゃ明らかに人が踏み固めた道だな。ここを辿れば人が集まる場所に着けるだろうな。
俺はゆっくりと飛行しながら道を辿っていく、下を見ると様々な野生動物がいた、狼みたいな奴らがデカいイノシシを狩っていたり、ボロ布を纏った二足歩行の緑色の変な生物走っていた。ゴブリンだな、ホブの家事とか手伝うほうじゃない奴だ。
狂暴そうな奴らだ。さすが異世界、変な生物ばっかりだな。もしかしたらこの世界の人間も俺の知ってる姿とは違うのかもしれないな。
だとしたら嫌だな……、出来れば俺の知る人間と同じ姿形であって欲しいもんだ。
しばらく下を見ながら進んでいると、道に何やら荷馬車らしきものが止まっていた。そしてさっき見たような緑の奴らに囲まれていた。そして荷馬車の馬の上から白髪混じりの茶色い髪の初老のオッチャンが引きずり降ろされていた。
第一異世界人発見! ヒャッホイ!! 普通の姿だ!! ……とか言ってる場合じゃねぇ! 急いで助けねぇと! 助けたら町とか村の場所を教えてくれるかもしれねぇし!
今行くぞ名も知らぬオッチャン!! ほうッ!! 変・身!!
俺は地面に急降下してそのまま変化の術で変身した、いざメタモルフォーゼ!! これが俺の変身の一つ、人間形態! そいやッ!
鳥だった俺の鉤爪は太い足に変化し、続いて上半身は筋肉質な大きな胴体に腕、髪を後ろに結って髭を蓄えたその姿はまごうことなき武人、どう見ても武人のオッサンだ、下手したら馬車のオッサンよりオッサンらしい、ついでに俺の毛皮は服や靴になり裸ではない。この服は俺の体が化けたものだ。雨に濡れれば裸で濡れているようなものだ。つまり本物ではない。スッポンポンナウ!(俺、丸裸今!)
一見便利に見えるが普通に服を着ていた方がいい。谷の小屋に服がなかったことが悔やまれる。
まッ、オッサンを助ければ町や村に行けるんだ、それまでの辛抱だ。そんじゃあ行くぞ! ブワッと着地した俺は素早く駆け出した!
「大丈夫か!! 今助けるぞ……むッ!?」
ヒューン、ドドド!!!
突然の大音響、思わず耳を塞ぐ俺、何なんだ!? 風の杭!? なんだいありゃ?
ゴブリンが次々と風の杭で粉々にはじけ飛んだでいた、馬車のオッチャンはいつの間にか茶色い杖を構えている……、もしや魔法? ヒューッ、俺の出る幕ないじゃないか。
俺は立ち止まって馬車のオッチャンを茫然と見ていた、どうせいと? 俺にどうせいと? おっちゃんがゴブリン倒しちゃったやないか。
魔法とか俺の内丹術より万能そうだな、すんごく強い。
はぁ、どないしよ……、どないしよか。ホントはゴブリンを華麗に蹴散らしてドヤッとした感じで「旅の者だが、ここいらに町や村はないかね?」とか聞こうと思っていたのに。
俺が立ち止まっているとゴブリンをあっさりと蹴散らしたおっちゃんが俺に声をかけてきた。
「お~い、あんた旅の者かね?」
旅の者……、まぁ確かにそんな服装だからな。
「まぁ、そんなところだ、ゴブリンにあんたが馬車から引きずり降ろされてたから助けようと駆け寄ったんだ、まぁ……、その心配はなかったようだがな」
俺は姿に合わせてオッサンのような口調で話す。
「助けようと? そんな服装でか? 武器も持ってないのにどうやって戦う気だったんだ?」
ギクリ! そういや俺、武器を持ってないな、内丹術を駆使して素手で戦おうと思ってたからな……。クソッ、失敗した。
「素手だ、」
「ほぅ……、さすらいの拳法家ってところかい?」
「……そんなところだ。ところでアンタ、商人か何かかね?」
「何って、見てのとうりの行商人だが?」
行商人! ヨッシッ! 商人ならここから近い街とか村のことを知っているはずだ! 神はまだ俺を見捨てていない!
「ここから近い街や村はないか? 俺は見ての通り旅人でね、ここいらのことはサッパリなんだ」
「ふむ、ここからだとロウスタスの街が近いね。ここで会ったのも何かの縁だ。もし良ければ乗ってくかい?」
「有難い! 是非乗せて頂きたい!」
「そうかい、なら銅貨を二枚程頂こう」
金取るのかよ、おっちゃん! 銅貨ってなんだよ。そんなもん持ってないぞ!いや、待てよ?
「あぁ、すまない。今は手持ちがなくてね。これで勘弁して頂けないだろうか?」
俺は腰に着けた袋から小さな青い宝石を取り出した。この袋は俺が小屋から持ち出した金目の物が色々なものが入っている。別に変幻の術で生み出した偽物ではない。
「ほぅ、こいつはまた結構な物を持ってるね。いいだろう、少し待っていてくれ」
そう言うと、おっちゃんは荷台の木箱から袋を取り出して中から銀や銅の貨幣を何枚か取り出した。
「その大きさならここらの相場じゃこのぐらいだね。いいかね?」
「あぁ、ありがとう。しかし換金してもらってもいいのか?」
「そりゃ銅貨二枚だけが欲しいだけだからね。それに今手持ちがないんだろう? それでどうして街に入るつもりだい?」
「金がとられるのか?」
「そりゃアンタ、当たり前だろう? 何処の街に税関を払わずに入れるところがある?」
取られるのか、、つーか税があるのかこの世界、それにこの荷馬車からして中世ぐらいかね?
「すまない、どうも長い間旅をしていたもので、少しボケたことを言ってしまったな」
「長い間ねー、あんたどこから来たんだい?」
嫌な質問するな、このおっちゃん。
「言わなくちゃならないか?」
「いや? ただたんに興味があったからね、無理に言わなくてもいいが」
やべ! 何か怪しまれてる! どうしよう、どうしよう! ハッ! こんなときこそ練丹術だ!
袋から小さな小瓶を取り出しす。小瓶は上部が霧吹きのようになっており、俺は吹き出し部分をおっちゃんに向けてシュッと中身の液をおっちゃんの顔にかける。
「むわぁ!? 何をす、、る」
しばらくすると、おっちゃんの目は虚ろになる、フッフッフッ! この薬の名は混迷水! 本来は液状の薬品で麻酔効果があるものだが、水に少量溶かすことで催眠状態を誘発させる凄い薬に大変身するのだ! しかも原液はホントにごく少量だけ使えばいいのでたっぷり使える優れものだ! これぞ医学の勝利だ!
ちなみに俺が作ったわけじゃなく、小屋にあったものを拝借したものだ。自慢じゃないが、俺が練丹術をすると必ず失敗する、だから俺には作るのは不可能だ。
そんな薬品が顔にもろにかかったおっちゃんは今は催眠状態になっている。
おっちゃんよ、あんたに罪はないが今あったことを少し忘れて頂こうか! な~に、少しの間、俺に従順になるだけでいい。そしてこの世界のことを教えてもらうだけだ、後積み荷に酒があるならついでに少し分け貰うだけだ!