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僕は辿る  作者: 沖ノ灯
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ノースノームの店

警察訓練所に戻って、ボスやソルデア、僕とビードでトニー・ブレッグマンのリュックを開いていた。

雨具や帽子、使いこんだヘッドライト、コンパスやビニール袋が出てきた。

「どこにハイキングしてたんだろう。」

ソルデアが何気なくビードを見る。

「俺に聞いてる?森を散策する趣味があるように見えるか?」

僕が

「ビールとポップコーン持ってスポーツ中継見るのが趣味だもんな。」

ボスとビードが揃って

「基本だな。」

ソルデアが一瞬無表情になったが、コリンとモーガン、ジェロームの三人組みが帰ってきたのを見て

「コリン、この辺りでハイキングするなら、どこ?」

コリンは肩をすくめた。

すると横のモーガンが

「ちょっと北に行けば、どこでも楽しめるよ。」

僕が

「何それ、いくらでもあるって事?」

モーガンが作業デスクに置かれたリュックの中身を見ながら、

「随分使ってるな。好きな人は毎週行くし、本当に好きな人なら自分でルート考えて歩くよ。」

ソルデアが

「それならトレッキングのグッズ売ってる店で何か買ってるはずよね。」

コリンが素早くキーボードを叩いて

「半年前にノースノームの店でいくつか買ってるな。

彼って現金払いで生活してたのかな。

カード履歴がすんごく少ない。」

言いながら住所を打ち出した。

「ボス、誰のスマホに店の住所転送すればいい?」

ボスが言うより早くソルデアが

「そりゃこの悪ガキの二人に決まってるでしょ。」

ボスが腰に手を当ててニカッと笑った。

ビードが

「全く人使いが荒いな。ソルデア、俺はガキじゃねぇ。」

僕は誰にも何も言い返せない。

あ、そうだ。

「ボス、トニー・ブレッグマンのお姉さんにトレッキングの話し聞いてください。」

ビードも

「昨日、弟の家で泣いてたらしいので、優しく。」

ボスが真顔で

「トニー・ブレッグマンに家族はいない。

両親は死んでるし、兄弟もいないはずだ。」

それじゃ大家さんが見たのは一体だれなんだ。

ビードと僕は報告をちゃんとしろと怒られた。

長くなりそうなので、急いでノースノームの店に喜んで行くことにした。

ソルデアがニヤニヤしながら、近くの警察にトニー・ブレッグマンのアパートの大家さんの所に似顔絵を描ける署員を頼んでいた。




僕とビードは北に向かって車を走らせた。

戻れるのは夜遅くなるはずだ。

秋は空が青い。

景色が良いのだけが救いだ。


ビードが

「腹減った。ボスに叱られなきゃ昼めし食べる余裕あったのによ。」

「なんにも持ってないよ。これ飲む?」

ビードがチラッと僕の保温マグを見た。

「それ飲むくらいなら川の水飲んだほうがマシだ。」

訓練の時に飲んでいた特製ドリンクなんだけど、栄養と味の両立を求めちゃいけない。

平日なのと観光シーズンは過ぎていて道が空いていたからか、思ったより早く到着した。

木を組み合わせて、ノースノームの店は看板にしている。

ログハウス風だけど、表側だけだ。

ビードが

「駐車場に止まってる車が一台もないじゃないか。やってんのかほんとに。」

「話しを聞くだけだから、すぐ終わるよ。」

ドアの前に「open」と、これまた木で作られたドア飾りが引っかけてある。

砂利の駐車場を歩いて店のドアを開けた。

ポーンと離れた所で電子音が鳴っている。

オフシーズンだけでなく、この店も人の気配がしない。

「やべえな。誰の話しも聞けずに帰ったら、またボスに叱られる。」

しばらく二人で入口で立ちつくしていた。

こんな商売してて儲かるんだろうか。

僕のスマホが鳴った。

「はいギンゴです。」

『ギンゴ、似顔絵ができあがったから画像送るね。』

ソルデアだった。

「似顔絵できたんだって、画像送ってくれる。」

離れた所から

「お客さーん。しばらく待っててもらえますかぁ。」

のんびりした店だ。

ビードが

「すいませーん、できれば急いでもらえますかぁ!?」

大声を張り上げた。

腹が減ると怒りっぽくなるのは全ての動物共通だろう。

店の奥のほうで物がガタゴト倒れるような音がする。

「ごめんなさーい。あんまりお客さんがいないから奥で倉庫整理してて。」

やっと顔がのぞいた。

「あら、初めての方かしら?」

ブロンドの髪を肩まで伸ばした優しそうな女性だった。

ビードが姿勢を正して

「いえ、急がせて申し訳ありません。

警察の者なんですが、少しお話伺えますか?」

急にソフトな声になった。

僕もバッジを見せながら、送られてくる画像を見ていた。

画像を見て店の女性を見て、もう一度画像をみた。

店の女性にそっくりだった。

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