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僕は辿る  作者: 沖ノ灯
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傷心の救世主?

翌日の夕方、僕は昨日降り立った飛行場に来ていた。

一般の旅行客用のジェット機は一日2本しかない。

ロビーにいても冷えた空気が足元からくる。

到着して次々に人が降りてくるのに、小柄な人は、いつまで待ってもこない。

とうとう誰もいなくなった。

僕はスマホを取り出して簡易メールを送った。

『ロビーで待ってるけど、どこ?』

返事がない。

それから15分まった。

間に合わなくて明日の朝か?


しかたなく駐車場に向かうと、すっかり日が暮れて照らす照明も少なく、かろうじて乗ってきた車が見える程度だ。

キャリーバッグを引く音の方に向くと、あれは探していた人影に似てる。

もう少し近づかないと相手も気づかないだろうと思って、小走りに向かった。

僕の足音に気づいたのか、なぜか反対方向目指して人影が走り出した。

あれ?別人か、おかしいな。

誰もいないんだから名前呼んでもいいよね。

「ソルデア!ソルデアだよね?」

人影が止まる。

なんで、そんなにおののく?

「え?誰ですか?」

あぁ逆光か、僕はスマホの電源を入れて顔に近づけた。

「ギンゴだけど、ソルデアでしょ?」

スマホで余計に驚いて声を上げた。

「うわっ!え?だって、猫背でもっと細かったじゃん?」

確かに姿勢が良くなって、身長が伸びたみたいとは母にも言われた。

「ほら、訓練だよ。三か月しごかれて、こんなになったんだ。」

そろそろとソルデアが近寄ってきた。

見慣れないメガネをかけている。

「ソルデア視力悪かったっけ?」

なんか、こうして見ると博士に似てるような気もする。

「急に行けって言われて急いで荷物まとめたから、機内で眠くて、コンタクト外したんだよ。」

メガネを外して、かけなおす。

「コンタクトは検診があるから合ってるけど、メガネは忘れてたから作りに行かなきゃと思ってたんだよね。」

確かに急がせた僕のせいでもあるから謝った。

準備も何もなかったろう。

ソルデアは以前の僕に似た体型の誰かの後を追いかけてたらしい。




フォードのエクスプローラースポーツに手渡されたキャリーバッグを丁寧に載せて走り始めた。

こんな急な任務をいろんな人を経由してソルデアに依頼して、軽く断られるだろうと思ってた。

博士がいるから島を出るのは短期だけと聞いた記憶がある。

助かったと思ったのと、本当に良かったのか、二人の時に聞いてみようと思ってた。

「ソルデア、仕事を快諾してくれてボスも僕も嬉しいよ。」

なんだろう。

大きなシートに座ったソルデアは、いつもより小さくみえた。

「あぁもういいんだよ。」

この位置で蹴られるのも嫌なので、恐るおそる。

「なんか元気ない、みたいだけど。博士は元気?」

珍しく長いため息をソルデアは吐いた。

「おじいちゃん、島にいないんだ。」

えっ?ワシは島から出ん、って言ってなかったっけ?

「あっ調査か何か頼まれて仕事してるの?」

なんだ、このスローペースの会話。

らしくない、本当にソルデアらしくない。

でも蹴ってこない保証はない。

「こないだギンゴの件で帰りの飛行機、二人で隣の席はとれなくてさ。

ボクとおじいちゃん離れ離れに座ったんだよね。」


そこで博士は、年齢が同じくらいの上品な夫人の隣に座ったらしい。

途中で出された食事が口に合わなくて、

「ラザニアならトッポーの店が一番じゃて。」

と、口を滑らせてしまったんだって。

すると隣のご夫人が

「もうあの店は閉店して7年になるじゃないの。」

と返してきた。

つまり以前はイタリア近海のリグワーノ島に住んでいた女性だったんだ。

彼女はミランダ・カーロスという名前で、子供は成人しヨーロッパのどこかで順調に事業をしていて、夫と旅をするのが楽しみだったが、その夫は3年前に死別してるんだそうだ。

そこまで聞いて僕は、

「疑う訳じゃないけど、大丈夫なの?、そのミランダさん。」

「うんボクも心配になって、いろんな人づてにこっそり調べたけど。」

特に博士を陥れてやろうなんて考えそうな人ではなかったらしい。

ソルデアが調べたんだから、それはもう調べたんだろう。



しばらく何事もなく、博士は毎日調べ物してたのに、1週間前に訪問するとお手伝いのミーナさんがいなくなっていた。

「ミーナはどこ?そのわりに部屋とっても綺麗だね。」

不思議がってるとミランダさんが家にいた。

ソルデアは怒ってるか悲しんでるのかわからない言い方で

「なんにもボクには、なんにも言ってくれなかったんだ、勝手に全部進めて。」

前々からミーナさんは、もうイタリアのどこかに移住するから、いつかは辞めるねと話していたけれど、ソルデアはお礼すら言えずに出発してしまったと悔やんでいた。

僕は黙って聞いていた。

ソルデアに車内で暴れられるのが怖かったのも少しあるけど、博士も大人だからね。

「おじいちゃん、なんて言ったと思う?

ソルデアもワシに気をつかわんでも好きにしたらいいんじゃよって。」

そして3日後に二人で世界の遺跡を巡る豪華な船旅に出かけてしまったらしい。

泣いてるのかと思って信号待ちの時にソルデアを見たら、シートベルトを握りしめながら、ものすごい無理な体勢で横の窓に額をつけて黙り込んでしまった。

しばらくチラチラ様子を見てたけど、泣いてる気配はしなかったので、現状について説明した。

説明を終わった頃に、警察訓練所に到着した。

ソルデア、大丈夫かなぁ。

いや、上手くまとめるんじゃなく、もっとひどくなると困るなぁ。


ソルデア好きなんです。

表裏がはっきりしていて世渡り上手で、人の弱みを見つけるのが得意です。

おじいちゃんことパトモット博士も気になります。

どっかに入れますね。

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