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僕は辿る  作者: 沖ノ灯
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到着

カナダとの国境に近い小さな空港に我らのビジネスジェットは降り立った。

実に快適な空の旅だった。

高級ホテルで一泊したのと変わりない。

ヤナギと僕は開いた扉を目指して通路を歩いた。

アミグ総括は他の仕事があるから一緒には来ない、そのほうが気は楽だ。

軽く会釈してアミグ総括の前を通り過ぎようとした時、腕を掴まれた。

「キロエが三国連合の指名手配から消えた。」

僕は総括の顔を凝視するしかなかった。

アミグ総括の目は僕を通り越して、別の何かを見据えていた。

肩を叩かれ、仕方なく歩きだした。



数段のタラップを降りると、フォードのエクスプローラースポーツが止まって、前にごつい男が二人立ってる。

なんで笑顔なのに怖いと感じるんだろう。

「はじめまして、君がヤナギで、こちらがギンゴでいいかな?

どうぞよろしく。」

茶色の髪に目が青空のようなブルー、年齢は40歳くらいだろうか。

「わたしはジャレッド・ドナヒュー。」

もう一人の方は黒髪でハシバミ色の瞳で、いたずらっ子みたいな男だ。

「ビード・モリソンだ、よろしく。」

握手で握り返してやったら、眉がぴくぴく動いた。

後部座席に乗せられ、チームリーダーのジャレッド・ドナヒューが運転しながら説明してくれた。



空港から30分ほどの距離に拠点となる施設はあった。

警察の訓練所の一部を借りているらしい。

リーダーのジャレッド以下、全部で8人で捜査にあたる。

僕とヤナギ以外は、この半年ほどで自分が魔術師だと知ったようだ。

緯度が北だからか、もう初冬の空気だ。

東京で快適だった服より、もう一枚着こまなくてはならない。

車も全部で5台、自由に使える。

寮のように、ここで住む事になるものの個室でベッドやデスク、テレビと小さい冷蔵庫も備えてあり、広さも充分だ。

セミナールームだった部屋に各自仕事用のデスクが置かれている。

リーダーのジャレッドだけはガラス張りの個室が用意されているが、会議室、自由な時間に食事のとれるビュッフェもある。

ヤナギが

「捜査抜きで環境は素晴らしいですね。」

同感だ。

ジャレッドが

「ま、今日のところは部屋で寛いで、仕事は明日から始めてくれ。

みんな、にも紹介しないといけないしな。」

そう言いつつ、ビードの方をチラリと見た。

ビードは肩をすくめて、どこかに歩いていく。

ジャレッドが自分のデスク前の小ぶりなソファに座ると、ヤナギと僕も座るように勧められた。

いつのまにかビードがコーヒーを人数分持ってきてくれた。

「全部ミルクも砂糖も入ってるからな、低脂肪やソイミルクがよければカフェのボードに書いとくんだ。」

お礼を言って受け取る。

ジャレッドがため息をついた。

「わたしは長年警察の署長として仕事をしてきたが、2か月前の検査で魔術師だと知ったものの、大した能力はないんだ。

君達は子供の頃から訓練してきているだろうが、残りの者は素人も同じと思って欲しい。」

ヤナギが

「今までの生活から一変でしょうね。」

「ああ、家族にも影響は出てるが、ビードも含め、みんな同じような思いは抱えている。」

僕は

「何か捜査に影響でもあるのですか?」

「みんな、バラバラなんだよ。」

ビードがジャレッドのデスクに腰をかけながら言った。

「魔術師だとしても何のメリットがある?」

ビードの目は笑っていない。

ヤナギは黙り込んでしまった。

僕は

「一人の時の掃除は楽ですよ。」

みんな自虐的に笑ってくれただけ、ましだった。

ビードが

「特に一人だけ女性のジョーがイライラしてる。」

ジャレッドが

「そう、ジョージナ・シュワルツは、若いが優秀だから余計ここに派遣されて怒ってる。」

バラバラのみんなの気持ちを一つにまとめて、半年の捜査が有効に進める目標か何かが必要ってことか。

ジャレッドが両手をあけで

「お手上げだよ、誰か助けてくれる人でもいればいいんだが。」

そう言いながら笑った。

何かじゃなくて、誰かでもいいのなら。

ほら、一人しかいないじゃないか。

もしかしたら薬じゃなくて毒かもしれないが。

僕は

「お役に立てそうな人物なら知ってます。一人増員でも大丈夫ならすぐ連絡してみますが?」

ジャレッドの顔が期待に満ちていた。

僕はあんまり嬉しくは、ない。


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