アシーンナ3.
二人が池みたいになった魔方陣の上に移動していく。
昨日の植物園の虚像のあった位置だ。
僕も中央ホールが見える位置まできた。
ここから見ていてもアシーンナ様は見えない。
シータとキロエの位置がさっきより低く下がっている。
本当に僕のシールドだけで、二人の位置は見えてないのに、わかる。
僕は中央ホール後方に、周囲を確認しながら近づくことにした。
キロエが作業をはじめる前に、アシーンナ様が僕を見つけてくれないと意味がない。
どこにいる?
ずっと高速では動いていないのか?
全身が総毛立ってチリチリしてくる。
ホール後方に来た。
池のような魔方陣のほうばかりみていたが、僕は気配で天井近くに上がった。
アシーンナ様が下から見上げている。
どっから見てたんだ?
それとも魔力に引き寄せられるのか。
自分が息をしてないのに気づいて、僕は深呼吸した。
僕が天井近くを移動すると同じ速度で追ってくる。
どのくらいのスピードが出るんだろう。
アシーンナ様もだけど、僕の飛行の魔方陣も。
これは一回早さ勝負をしたほうが良さそうだ。
僕は両足に起動してる飛行の魔方陣をしゃがみこんで掴んで、魔力を込めた。
バイクをスロットル回しといて、いきなりクラッチを入れるのと同じだ。
カウント、3、2、イチッゴーッ!
かなり早い。
早すぎて、バランス崩すと回転する。
スノーボードみたいで掴んだままのが動きやすい。
急な動きでアシーンナ様はすぐに反応しないが、すぐ僕の動きに合わせて追ってくる。
壁に当たらないように、カーブを大周りにならないように。
そして、アシーンナ様に適度な距離を取る。
いきなり魔方陣の速度が落ちた。
アシーンナ様が間髪入れず、石で切りつけてくる。
ひざ5cmくらいで石が空を切っていた。
僕は頭を下に反転して、天井近くにきた。
思った以上に魔力の消費が激しい。
1分どころか30秒たってないくらいだ。
そのまま天井から見ていると、アシーンナ様は魔方陣の中心に戻ろうとする。
僕は自分の魔力を温存するために魔力ボールの中に手を入れ、再び魔方陣を掴んだ。
アシーンナ様はゆっくりもどる。
1、2、3、4、5で10メートルくらい距離を置き床に下がった。
そしてアシーンナ様が振り返るのと同時に素早く飛ぶ。
こんな状況で火や氷で攻撃なんて無理だ。
時間稼ぎも続くかどうか自信がなくなってきた。
シータが僕の近くにきているのがわかる。
また天井近くに上がり、上を見ているアシーンナ様が何秒待っててくれるか、冷たい石に肩と顔を寄せながら数えていた。
1、2、3、4、
数えながら、この状況と酷似した夢を見ていたのを思い出した。
そしてミカエラが
どこか別の場所に行く時は、気をつけて
って言ってたのを思い出した。
ミカエラ、これのこと?
僕は忘れていた自分に腹が立つのと、こんな先を予知して心配したミカエラに、泣きそうなごちゃまぜの気持ちになった。
5、6、7、8、
アシーンナ様がゆっくりと戻る。
魔力ボールを触り、魔方陣を掴む。
1、2、3、4、5、
天井を蹴って飛ぶ。
アシーンナ様が振り返り、追ってくる。
後、何回できるだろう。
魔力ボールは貯めてたつもりだけど、指先に当たる感覚で少なくなっているのがわかる。
でもアシーンナ様の姿が消えてないって事は、まだキロエは魔方陣を壊すために地面を掘ってるんだ。
その後も同じ事を繰り返した。
天井でカウントしながらアシーンナ様を注視する。
もう魔力ボールが1個しかない。
取りだして見たら、ミカエラが東京でくれた虹のような魔力ボールだった。
アシーンナ様の虚像を消して、みんな元気なままで帰りたい。
僕は虹の魔力ボールを握りしめた。
握った手から、腕そして肩から上半身に向かって目で見えるほど魔力の光が満ちていく。
8秒カウントしてもアシーンナ様が移動しない。
やはり魔力に引き寄せられてくるのか。
建物の上のあたりでシータが叫んでいるのが聞こえた。
もしかして、シータやキロエまで、ミカエラの魔力が行き渡ってる?
これなら攻撃できるかもしれない。
魔方陣に魔力注入して、床に向かって飛びだした。
アシーンナ様がすぐさま追ってくる。
そこに続けざまに二度三度と石に向け火を放った。
天井に逃げると、かすかに石から音がする。
まだ行ける。
今度は待ち時間なしに、床に向かって振り向きざまに凍らせてやった。
石が熱かったからか、凍ってもすぐ溶けアシーンナ様の速さは同じままだった。
タイミングがずれて、近すぎるっ!
アシーンナ様は僕の足についた飛行の魔方陣を切った。
僕は空中から床に落下して、速度がついたまま壁に当たり反動でホール側に飛ばされた。
どこも折れてはいないようだけど、痛くてうなった。
床にあおむけに転がって、そこにアシーンナ様が、石を突き刺すようにかかげて突進してくる。
切られるくらいなら、モールフが耐えてくれるけど、刺されたら死ぬかもしれない。
僕は、あまりの事に声も出せずに身体を縮めた。
その時、キィィィーと言う女性の叫び声のような声とともに、アシーンナ様の虚像は消えた。
石がパァンと破裂して、破片が飛び散る。
僕は反射的に、目を閉じて、両手で顔を覆い、結果、石の破片を掴んでしまった。




