表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕は辿る  作者: 沖ノ灯
35/41

アシーンナ2.

翌日には僕の全身を覆うモールフの防具ができあがった。

顔というかヘルメットみたいなのも作ってくれるみたいだったけど、断った。

手伝ってもらいながら身につけていくと、背中を向けたままキロエが肩を震わせて笑っている。

最初は見てたのに、もうこっちも見ない。

シータが

「防御って意味ではぁ合格だけどぉ、ファッションって意味ではぁ、ナイ。」

確かに、モールフの繊維を張り合わせているから全身に茶色の毛が生えた人みたいになってる。

怪我しないのが目的だし、いいんだよ。

市長が

「これは魔力刃で切りつけたくらいでは全くちぎれない木なんです。」

そう言いながら、手元のモールフにシータに魔力刃を当ててもらってる。

何度が当てると焦げたようになり、表面が弱くなる。

パティナが

「石や普通の刃物でも何回か切りつけないと破れないから、もう怪我はしないと思うの。」

キロエが

「ただし炎には弱い。

アシーンナ様の石を炎と氷で何度か攻撃しなくてはならないから、身体のほうに燃え移らないようにしないと、な。」

笑いすぎて咳き込んでる。

自分だって全身ではないけど、腕と上半身に張りつけてる癖に。



市長が城に向かう前に、飛行の魔方陣を描きながら、

「アシーンナ様に対抗するため、魔方陣で素早く移動しなくてはならないと思うのですが。」

僕は市長の話を身体を近づけて聞いていた。

「普通のスピード程度なら微々たる魔力消耗ですが、早く飛ぶとかなり消耗してしまいます。」

キロエが近づいてきて

「ひとまず城の近くから、俺が魔力糸でどの程度アシーンナ様が動きまわるか試してみないとな。」

そう言いながら、キロエが何かの皮に書いた飛行の魔方陣を手渡してくれた。

紙だと燃えるけど、皮革なら少しの間は大丈夫そうだ。

紐がついていて手首に引っかけるようになっている。

「これなら出したり消したりできるだろ。」

シータも準備を済ませて魔方陣の近くに来た。

「多分ねぇ、あの深さだとアシーンナ様の魔方陣を壊すのに4分か5分いるよねぇ。」

つまり、その間アシーンナ様を僕が引きつけたままにしなくてはならない。

余分に時間がかかると思ったほうが良さそうだ。


各地の長達が見送ってくれる。

僕たちは再び城に向かった。



この戦いが終われば、この景色も見る事はないだろう。

そう思うと、なんとも言えない気持ちになる。

ほんの短い間だけど、違う星の人とこんな風にやりとりできるなんて、夢のような事だ。

帰って、みんなに話して信じてもらえるかどうか。



上から見ると、城の城壁の魔方陣があった部分が、まるで池のようになっていた。

この高さからではアシーンナ様は全く見えない。

慎重に操って、魔方陣から一番遠い城壁の内側に降り立った。

僕は、素早い動きがすぐできるように身体を徐々に動かしていく。

キロエが座って、手を動かしていた。

市長が小声で

「ほんとうに面白い術を使う。

これは魔力を持った小さい分身のようですね。」

「実は俺自身、何を形造っているか、わかってないんだ。」

そういいながら、キロエは掌の何かを放った。

回廊をのぞいていると風切り音とともにアシーンナ様が何かを追って飛んでいる。

キロエは目を閉じて黙っていたが、

「人間の背丈程度しか、上には来ない。

平面運動で、せいぜいホールの周囲までのようだ。」

シータが

「発動してる魔方陣はぁ、池みたいな所から城壁の間にあって、昨日より小さい気がするぅ。」

聞いていたキロエが

「あっ、くっそ。切られた。」

笑っている。

「結構早く動いていたんだが、甘くみてるとマジでやばいな。」

市長とヤナギにむかって

「昨日、パティナがいた所に二人はいたほうがいいと思う。」

市長が、しゃがみこむお礼をして、

「もし上手くいかなくても、ここに近寄らないようにすればいいだけなので、無理はしないでください。」

キロエとシータと僕をかわるがわる見ながら言った。

「引き際は、わかってる。

ヤナギ、市長を頼むぞ。」



二人が飛行の魔方陣で飛び去っていくのを見送った。

キロエが

「はじめに、シータと俺がアシーンナ様を起動してる魔方陣の位置を確認する。

シータが離れて、ギンゴとアシーンナの状況を見る。

俺はできるだけ早く起動を止める。

シータは状況次第で、全員を飛ばす。いいか?」

そう言って僕とシータを見つめた。

「ギンゴ、みんなにシールドをかけてくれ。」

「シールドかけてもアシーンナ様の攻撃は防げないよ?」

「防ごうとは思ってない。

これで3人がどこにいるか程度はわかるだろ?」

僕は納得してうなづいた。

自分でさえ、その感覚は気づいてなかったのに、新しい発見だった。


「さてと、ショータイムと行きますか?」

シータが本当に楽しそうにしてる。

キロエが自分とシータが乗る魔方陣を呼びだした。

「みんな生き抜く事だけ考えろよ。」

素早く上へと二人は昇っていく。

それを見ていて、昨日の余裕と違って身体が小刻みに震えてくる。

軽くジャンプしながら、力を抜いた。

治まってきたので、自分で腕にひっかけた皮革を触って飛行の魔方陣を呼びだした。

そして、ゆっくりホール後方に向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ