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僕は辿る  作者: 沖ノ灯
32/41

ハマるって2.

残酷表現があります。

ご気分の悪くなる方は適宜読み飛ばしてください。

アシーンナ様の最後の魔方陣では、植物園さながらに次から次へと花が咲いて鳥が飛んでいく。

そして、思いもかけないタイミングで、攻撃が訪れる。

石の壁に沿って、攻撃を回避しつつ屋上に到着した。

キロエに近づいて小声で

「市長は一緒じゃなくてもいいんじゃないの?」

キロエは

「ギンゴのミラーやシールドあれば、ひとまず死なねぇよ。」

そりゃそうかもだけど。

階段を降りる前に気分の悪くなるニオイが立ち上ってきた。

シータが

「うえっ吐きそう。」

そう言いながら風を発動してた。

僕が

「昨日、城の中ひとまわりくしてるんだよね。」

キロエが

「死体見て喜ぶ奴いないだろうから、最短距離でいくから心配しなくていいよ。」

そんなにあるって、ひどすぎる。

建物の中からなら、魔方陣の攻撃は来ない。

階段を下りていくと、小さな窓があるだけで、昼間でも薄暗い。

床や壁にもたれるように、小さな死体が累々と転がっている。

あまりに無造作すぎて人形のように見えてしまうけど、どれも胸を無残に射ぬかれていた。

仲間を、どうしたら、こんなに簡単に自らの手で殺せるんだ。

この城は、まるで巨大な墓石じゃないか。


キロエに続いて階段を下りて、部屋をいくつか横切って、中央ホールの左側面に近づいた。

一階前方の回廊部分が完全に崩れて、そこにアシーンナ様の魔方陣が発動してる。

おびただしい植物が生きているように波打つ中で、誰かが踊ってる。

市長が

「はっアシーンナ様だ。」

キロエが

「よく見えるな。ここにいると攻撃の的になるようなもんだな。」

市長とヤナギは中央ホール裏に待機させて、キロエとシータと僕とで、中央ホールに近づいた。

小声でなくても大丈夫だろうけどシータが

「ほらっあそこ、壁が柱じゃなく出っ張ってるぅ。」

キロエがリュックの中から、包装紙につつまれた重そうな固まりを出した。

僕は

「何それ?」

「シーフォー。」

シータが

「プラスチック爆弾だよぉ。」

え?何それ?

灰色の粘土みたいなのをカッターで切って、リュックから出したデカイ糸巻きみたいな導線を引っ張りだして先を割いて巻いてる。

僕が

「なんでそんなモノ持ち歩いてるんだよ。」

キロエがめんどくさそうに

「あのな、俺は地中探索のために、あそこにいたのよ。

ダイナマイトに比べたらC4は安全な爆弾なのよ。」

そう言うと屈んで壁際を移動して、シータが言った柱みたいに出っ張った部分にペタリと張りつけて戻ってきた。

市長とヤナギの所まで退いて、導線をペンチで切ると僕に渡した。

「ほい、雷発動。みんな耳と目を塞げ。」

そう言うと自分だけイヤーマフをして、僕の両耳をキロエは両手で押さえた。

市長は頭の上と少しずれた所を押さえてた。そこ耳なの?

キロエに促されて、握ったまま雷を発動した。

ビリビリして痛い。

と、すぐ衝撃と続けて振動が来た。

さすがに耳はふさがれてるから、そんなに聞こえない。

キロエが手を離して、いいぞと言うと、小石がガラガラ転がる音がして、周りが白いホコリに包まれた。

シータが風を起こして視界が開けてきた。

キロエは

「シータ、魔方陣のパイはどのくらいの段まで進んでる?」

「うんとねぇ、ちょうど半分くらいきてる。もう少しで大きい魔方陣に切り替わるよぉ。」

「そっか、ちょっと偵察してくる。頼むぞ。」

そう言うとキロエは目を閉じて、片手を動かした。

市長が

「なんだそれは?」

僕が

「何が見えるの?」

キロエは薄っすら笑ってる。

市長が

「両目か?」

キロエは反対の手で自分の目を指さすと、

「ちゃんと目は、ここに残してるから大丈夫だよ。

しばらく動けねぇから頼むぞ。」

シータと代わるがわる踊るアシーンナ様を観察したけど、特に変化は無かった。


キロエが壁にもたれて座っていたのが、身体を起こして、

「ああ、とんでもないモノ作りやがって。」

言いながら目を開けた。

シータが

「どうだった?」

キロエはうーんと唸りながら

「30センチかける、20センチくらいの穴は最初の魔方陣までは繋がってるんだが。」

そう言いながら、またC4の残りをリュックから取りだした。

「その下に続く魔方陣は土が重ねてあるんだ。あたりまえだな。」

僕は

「その残りの爆弾で地表と繋げるって事?」

キロエは、そうそうと言いながら、さっきと同じ作業をした。

「導線が届くといいんだけど。」

また壁際を進んで、穴にC4の固まりを放り込んだ。

僕たちの所まで戻ってくる途中で導線が終わって、僕だけが呼ばれた。

シータが

「耳閉じてぇ。」

みんなに言ってる。

キロエの所に僕が行くと、

「さっきと同じ、雷発動。今度は目も閉じろよ。」

自分にイヤーマフとゴーグル、僕の耳と目を塞いだ。

雷を発動すると、さっきより遅れてすごい地響きがした。

キロエの手が離れて、みんなの所に引っ張られた。

さっきより周囲に砂が舞って、目を開けていられない。

しばらくして小石が降ってきた。

シータが風を起こしながら、

「上手くいったかな?」

市長が

「音が止んでる。」

僕は壁際からアシーンナ様の魔方陣の方を見ると手前に穴が開いているのが見えた。

「地表と繋がってるよ。」


キロエが

「次は水だな。」

市長が

「一番近い川でも、かなり離れてます。」

シータが

「魔方陣で雨雲呼び出すんでしょ?」

キロエは

「一カ所に集中して注ぎ込みたいんだけど。」

キロエが僕を見てる。

「何?」

「ギンゴは、どのくらいの魔力あるのかなぁって思ってさ。」

僕は市長を見た。

市長は首をかしげてる。

そりゃ見えるって言っても数値化できるものではないよね。

「残量って意味なら、魔力ボール持ってるけど。」

なんとなく気配を感じて、20メートル位の先のアシーンナ様の魔方陣を見た。

もう音楽も聞こえないし、植物園みたいな虚像もないけど、踊ってたアシーンナ様が真ん中に立ってた。

「なんで。」

と言った所でアシーンナ様が、こっちを見た。

僕と目が合った。

驚いて息を吸った時点でアシーンナ様は、飛んできた。

ミラーを慌てて重ねた所で、また誰かに襟首を掴まれたけど、その時には目の前にアシーンナ様はいた。

怖くて左手を身体の前に持ってきた時に、アシーンナ様は持っていた小刀で切りつけてきた。

シータが何か叫んで、僕たちは城から瞬間移動した。


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