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僕は辿る  作者: 沖ノ灯
31/41

ハマるって1.

この「ハマるって」の章で残酷表現が出てきます。

ご気分の悪い方は適宜、読み飛ばしてください。

少し気温が下がったせいか、霧が立ち込めていた。

すぐに城が近づいてくる。

上から見ると、城はまるで楕円の船のような形をしている。

屋上は、ちょっとしたグラウンドくらいの広さがある。

シータが

「魔方陣が起動してるよぉ。すごーく魔力は弱いけどぉ。」

僕たちが屋上に近づくと、ジガーが集まってきた。

キロエが魔力の糸で何匹かの動きを封じて、シータが魔力刃でジガーの目と目の間を貫く。

僕もシータが取りこぼしたジガーの目の間を、貫いていった。

弱点を知っていれば、簡単に倒せる。

ジガーが消えると、後に魔力の光りが四方に散るのが僕でも見えた。

市長が屋上をくまなく見て、

「あれは、人だ。誰か倒れている。」

シータが屋上の魔方陣と言った辺りに近い。

ジガーはせいぜい2-30匹程度で、思ったより少ない。

注意深く屋上に全員で降り立った。

市長が、倒れている人に近づいていった。

僕は全員にシールドとミラーをかけていった。

もちろん魔力発動の部分だけ出ている。

市長にかけるために近づくと、倒れている人はわずかに意識がある。

「これはアシーンナ様の右腕と言われた宰相のモーリオです。」

宰相のモーリオは胸に管のようなものを刺して、それがジガーを呼びだす魔方陣に繋がっていた。

市長が

「こんな事までして、ジガーを呼びだすとは。」

モーリオは息が荒いが、なんとなく笑ってるような気がした。

何本かの管が同様に魔方陣に伸びている。

屋上に登ってくる階段に続いていた。

キロエが市長に

「この魔方陣がジガーを呼びだしてるんだよな。壊すぞ?」

市長が

「おそらく簡単に消えはしない。この石ごと壊してください。」

キロエが、わかったと言って石の表面に魔力刃を当てた。

薄っすら光っていたジガーを呼びだす魔方陣の光が弱まった。

僕が

「これでジガーは消えたね。」

誰にともなく言うと、宰相のモーリオが笑い声を立てて何か市長に言い放った。

僕は

「なんて言ってるの?」

市長が

「愚かな奴らと、笑っています。」

市長が宰相のモーリオの肩をゆさぶりながら、問い詰めている。

ジガーを呼びだしていた魔方陣が再び光りだして、それは徐々に輝きを増していく。

市長は掴んでいたモーリオの肩を離すと、放心したように立ち上がった。

僕は

「市長、これは一体。」

「このジガーの魔方陣は、壊した時に放っていたジガーが魔力を持って戻ってくるんだと。」

「それじゃ、これは…」

僕は後ろを振り返る事なく、まぶしく光り続ける魔方陣を背中に感じていた。

市長が

「モーリオが、お前たち自らアシーンナ様の最後の力を呼びだすのだ、と。」

宰相のモーリオは目を見開いたまま、もう息をしていなかった。

シータが叫んでる。

「すっごい量の魔力が城の底に向かって流れていくぅ!」

キロエが

「クッソォ仕組まれていたって事かよっ!

俺が壊すまでもなく城が崩れるかもしれない。

みんな、これで自分の飛行の魔方陣を出せ。」

キロエが紙に描いた魔方陣を床に広げた。

次々に手をあて呼び出して、飛び乗る。

僕は

「市長、あの管の先って誰か生きてるんじゃないのかな?」

キロエが放心してる市長に

「ヤナギ、市長と一緒に生存者がいないか、確認して来い。」

二人が魔方陣に乗ったまま、階段を降りて行った。


それを見送ってキロエが

「シータ、どんな状況か、見えるか?」

「魔方陣がぁパイみたいに重なってて、それにぃ上から順に魔力が充填されていく。」

「やばそうなのは感じるか?」

「わかんないよぉ。でも下のほうが大きくなってるぅ。」

地響きが起きて、城の前面の回廊の部分が、ガラガラと崩れ出した。

ヤナギと市長が降りていった階段のほうは残ったままだ。

シータが

「全部の魔方陣に魔力充填しちゃったよぉ。」

ぼそっと言った。

ヤナギと市長が戻ってきて、ヤナギが

「誰も生きてない。数えきれないくらいの死体がある。」

シータが見ている魔方陣の辺りから何か音がしてきた。

市長が

「はじまった。戦いの前の太鼓の音です。」

一定のリズムを刻みながら、徐々に太鼓の音が近づいてくる。

太鼓の音がしっかり聞こえてくると、次に笛のような高い音が鳴り始めた。

崩れた石の間から、植物のツルのようなものが空に向かって伸びてきた。

市長が

「これがアシーンナ様の魔方陣です。

実際にはないものを、魔方陣を組み合わせる事で、あたかもそこにあるように再現します。」

キロエが

「これが、攻撃してくるって事なのか?」

市長が

「どの段階で攻撃してくるのかは、わたしにもわかりません。」

シータが

「オイラにも見分けはつかないよぉ。」

僕は

「アシーンナ様の使う攻撃の、エレメンタルは何かわかる?」

市長が

「魔方陣で全て出せるので、攻撃に備えるしか。」

ツルの間から茎が伸びて、花が咲き、花弁が落ちて、実がなる。

これが単に鑑賞用だったら、どんなによかったか。

少し感傷的な気分になったが、突如地面に落ちた実が弾けて、

僕が身構えるのと、同時にキロエが

「来るっ!気をつけろっ!」

僕はみんなのシールドを重ねた。

石の壁に当たって、石が削れている。

全員で距離をとる事にした。

キロエが

「こんな程度で終わるわけがないよな。」

僕は

「市長、さっき宰相のモーリオは他に何か話さなかったの?」

「ううっ、アシーンナ様の最後の力としか。」

キロエが

「つまり、アシーンナ様の技の全てがつぎ込まれてるって事だ。

市長が、その中で一番怖れる技って、なんだ?」

市長がキロエを見上げて、

「そんな、まさか。いくらなんでも、そんな事をするはずがない。」

キロエが

「言ってくれ。時間がない。」

「この星全てが壊れるほどの術が一つあります。」

キロエは

「これに載ってるのか?」

魔方陣の教典を指さした。

「いえ、アイガートマフ様が禁術としたので、あれは、ほんのお遊びでつくられたものだし。」

「覚えているだけでいいから、詳しく説明してくれ。」

「術を組み合わせていったら、どれだけの影響力が出るかを算出していって、おそらくそれが起動すれば、星が割れてしまうだろうと、でもあの時は、みんな机の上での話しだからと。」

市長はうつむいた。

「狭い空間を炎の魔方陣を重ねて温度を上昇させ、最後に水を加えて爆発を起こす術です。」

キロエが

「水蒸気爆発だ。

市長、この星は火山とかあるのか?」

「あります。でも火山は近くにはありません。」

僕が

「あまりに爆発が大きいなら、マグマを誘発しかねないって事か。」

キロエが

「そんな事になれば、噴煙でこの星が覆われて、作物が実らなくなる。どうする、どうする、考えろ。」

シータが

「魔方陣を壊すしかないよぉ。」

キロエが

「そうだ。だけど地中にある魔方陣を、どうやって壊すんだ?」

僕が

「城に戻らなきゃならない、あの場所に。」

キロエが

「そのまま近づけば、どんな術が発動するか、予測できない。なら?」

シータが

「城の側面か、横穴ないのかな。」

僕は

「地下の魔方陣て、パイみたいに重なってるんだよね。」

シータが

「さっきぃ、魔力が流れていったのは、もしかすると通路かもしんない。」

キロエが

「どんな流れ方していったか覚えてるか?思い出せ。」

シータが目を閉じて、

「あーっあーん、曲がったのぉ。

魔方陣から降りて、すぐ左行ってぇ、降りて、右行ってぇ、そっから地下!」

キロエが

「パティナが中央ホールも立ち入り禁止と話してたな。」

市長が

「中央ホールは、このアシーンナ様の歓迎の宴が行われていた場所です。」

キロエが

「つまり、これと似たような魔方陣が組んであるから、魔力を流さないように、わざと迂回してるって訳か。

よし建物の中から中央ホールの側面に向かう。」

僕は

「キロエ、何か策があるの?」

キロエは

「ないっ!こうなりゃ出たとこ勝負だ。屋上に戻るぞっ!」

なんで、そんな嬉しそうな顔してるんだよ。

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