あがる3.
キロエが
「ジガーが魔力に吸い寄せられてくるなら、俺達が何か術を使えば集まってくるわけだ。
だから、まずジガーの発生源を叩かないと、先に進めない。」
市長が隊長に何か聞いている。
「隊長が、おそらく屋上で湧いているのではないかと話してます。」
孫娘が
「兵士に話しを聞いたら、正面入り口から回廊を抜けた、中央ホールと、屋上も立ち入り禁止になってるって。」
キロエが
「それなら日が出てから屋上に行くか。飛べるから楽だな。」
戦いの前って言えば、食べて休息だ。
キロエがリュックの中から食料と水を取りだした。
「これで全部だ。軽くなるから減らしてくれ。」
シータは
「緊急の食糧と水なら持って来てるよぉ。オイラはいらない。」
市長が近づいてきて、
「水は大丈夫です。飲んでください。」
やっぱり食べ物は無理なんだな。
僕は市長に
「地球では食事どうしてたの?」
「食べ物は気分が悪くなるので水だけでしたよ。いくらでも持って行けたから。」
市長が離れていくのと入れ替わりに孫娘が来た。
「おじいちゃん、様子がおかしい。」
キロエが
「戦いの前日だから、おかしくなる人もいるさ。」
なんとなく市長が何を考えているのか、わかった。
僕は
「水が大丈夫なら顔洗ってもいいかな?」
僕は孫娘のパティナに案内を頼んだ。
川の水を色々なフィルターを通して流してる。
ニオイもしない綺麗な水だ。
顔を洗って、さっぱりした。
「市長が僕たちと一緒に戦うって言うんじゃないかって心配してるの?」
孫娘は
「そう。きっと行くと、言うと思うから。」
「でも止められないって事はわかってるんだよね。」
パティナは黙っていた。
「大切な誰かを亡くした悲しみが、どんなに深いものなのか。
僕もあんまりわからない。
どう決着つけるかは、その人次第のやり方があると思うんだよ。」
「おじいちゃんが、どう行動しても、それを見守るしかないって意味?」
「見守るのか、どうやっても止めるのか、それは僕には決められない。
君と市長は家族だから、家族の問題だよね。」
パティナは顔を上げた。
「そうね。誰かに止めてもらおうとするのは間違いだね。」
僕はパティナと、みんなの所に戻った。
使われていない建物に案内されて、清潔なベッドで眠った。
話し声で目が覚めた。
まだ暗い。
キロエとシータが小声で何か話してる。
市長が眠れるようにと用意してくれた部屋のベッドで二人は座ってる。
「どう何か見えるぅ?」
「階段も何もないんだ。石の隙間も全くないし、ドゥーナンがいてくれたらな。」
僕も小声で
「何してるの?」
キロエが閉じていた目を開けて
「城の偵察してんだ。いいから寝てろ。」
シータが
「自分の分身を魔力糸で作って、城の中、見てるんだよぉ。」
僕は
「寝なくて大丈夫なの?」
二人とも親指を立てた。
それが同時すぎて僕は少し笑った。
ヘンな二人。
なんだか安心して、また眠りに落ちていく。
翌朝、揺り起されて目覚めた。
簡単な身支度で出発する。
孫娘が言った通り、市長が同行すると言い張った。
「わたしがいなければ、もし生存者がいても何を言ってるのかわからないでしょう?」
当然、孫娘のパティナには行かせられない。
キロエがあっさり
「かまいませんが、ここでパティナに生きて帰る保証は無いと伝えてください。」
いつになく真面目だった。
「俺はめんどう事は嫌いです。」
「わたしは生きて帰りたいと思っていない。」
絞り出すように市長が言い放った。
「おじいちゃん…」
「すまない。でもアシーンナ様の最後を見届けるまでは死んでも死にきれない。」
僕は
「せめて城の近くでパティナに待機してもらうのは、だめかな。」
キロエが
「万が一ジガーすら倒せない場合もある。
だから、一人で城に来ない。市長や俺らが生きてるかどうかの確認も来るな。
そして日没まで戻らない場合は、一人でここまで戻ってくる事。
この三つを守れるなら城の近くにいてもいい。」
孫娘のパティナは
「約束する。だから何かあれば知らせてください。」
キロエが
「よし、それじゃ行くか。
男ばっかで、あんまり気分は上がらないが。」
シータ両手を上げて
「女の子いなくても、キロエとギンゴがいればいいよぉ。行こっ!」
叫んだ。
ヤナギと僕は黙って片手を上げた。
市長は自ら書いた飛行の魔方陣に手を当てていた。
そして魔方陣は地面を離れ、城目指して飛んだ。




