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僕は辿る  作者: 沖ノ灯
13/41

ジョージナ

翌日、いつもより1時間余分に寝て、すごく気分が良かった。

朝食は普通に食べ、銀の報告書を形どおり作成し、母さんに電話した。

軽い昼食後、ホテルの敷地の地図を見て走る事にした。

チームの誰とも会わない。

ホテルの中に一人だけみたいに静かだ。


筋肉を疲労させすぎると魔力も発動しにくくなる。

走ったり、受け身をとる時に、ほんの少し魔力を使ってやる。

基本的な体力や柔軟性は必要だけど、僕ら魔術師の武器は魔力だ。

ホテルの外に出て軽く身体を動かしはじめ、徐々に大きな動きをする。

ここの敷地は、散策できるように小道が作ってある。

建物の裏側は高低差があるので、ちょうどいいトレイルランニングができる。

舗装した道路ではない場所でランニングすると、緊張感を保ちつつ体力もつく。

散策路を少しずつペースをあげて走り、建物の裏側のほうへと向かった。

濡れた落ち葉は滑る。

親指側に力を入れつつ魔力を使う。

木が並ぶ場所はジクザクに進みながら、幹に足をかけてリズムよく登る。

そして枝をクッションに使いながら、飛び降りる。

この時も魔力を少しだけ使う。

だんだん楽しくなって、魔力を強くしながら、す早く木のてっぺんまで登って、地面にフワッと降りる。

誰かが遠くで僕を呼んだ。

周りを見回していると、ジョージナが笑いながら走ってきた。

「すごい、すごいわ。それは体操選手だからってわけじゃないわよね。」

息を切らしてる。

僕はそうだよと答えた。

「ソルデアが言ってたけど、あなたは魔法使いの中でも特殊なんですってね。」

「ああ、うん。説明したほうがいいの?」

突然ジョージナは笑いだした。

「アハハッあなた息も切らしてないのね!驚きだわ。」

質問なのか感想なのか、これは会話にならない。

「ジョージナはエレメンタルは何が使える?」

「水と氷よ。」

そう言いながら手の平に水を出し、そこから氷のカケラに変化させる。

早いし的確だ。優秀な人だ。

「僕はエレメントなら全部扱えるんだ。」

これで充分だろう。

ついでに言えば、頭で考えた術は練習すれば大抵できる。

金属プレートの魔方陣は別。

僕が走り出そうとするとジョージナは

「ねぇなんで、もっと自慢しないの?」

「へ?なんでって言われても。」

「あなたがあたりまえって思ってても、みんなのあたりまえではないでしょう?」

違う。そういう意味じゃない。

「多分、僕はこういう自分が好きじゃないんだ。」

しまったと思った。

こんな話しするつもりなんかなかったのに。

「なんで?わたしなら自分をすごく誇りに思うわ。」

コルムナだから全部のエレメントが使えるのは普通の事だ。

自慢でもなんでもない。

逆に人の期待以上の事をしなければ、落胆が待っている。

昨日のやりとりが、予想以上にキツかったのかもしれない。

「三国連合にとって、僕は有能なコマでしかないからさ。」

ジョージナの顔から笑顔が消えた。

「あなた、ちゃんと頭ついてるわよね?

自分の考えあるのよね?

それとも何か弱みでもあるの?」

責められてる気がして、口ごもってくる。

「別に弱みなんかない。」

「それなら単に考えが無いって事よ。

それは恥ずべき事ね。」

緑の目がまっすぐ見てくる。

なんなんだ?

「なんで、そんな事言われなきゃならない?」

ジョージナは呆れたように

「それはあなたが優秀だからよ。

あなたがクズなら捨てておくわ。」

むしろ捨てて欲しい。

僕が黙っていると

「わたしは、ここにいる事が不満よ。

危険だし、得られるものが少ないと思うから。

でも給料は良いから、しばらく働いて、そしたら大学にもどって学位を取りたい。

だけど、さっきあなたを見ていて、ここも悪くないって思えたの。

その感動をあなたは奪うつもり?」

「僕にどうしろって言うんだよ。」

「簡単な事よ。

もっとちゃんと見て、考えなさい。

その時その時で答えは変わるかもしれないけど、それこそが成長だわ。

影響は受けてもいいけど、流されちゃダメ。

常に答えは自分の中にあるから。

優れているからこそ、忠告するわ。」

わかった?とジョージナは言うと、さっさとランニングに戻って行った。

似たような事、前にも言われてる。

前に言われた時は頑張るよって思ったけど、ジョージナに言われると傷つく。


全部忘れてどこか遠くに行きたい。

南の島とか?

こんな寒い所と違って、温かい海で泳いだら、気持ちいいよな。

間違って口に入ると、しょっぱいんだ、涙みたいに。

クレアさんが泣いてる姿を思い出した。

トニーの残りの人生や、クレアさんの喜びを奪い去った黒い煙にこれ以上好き勝手やらしてはいけない。

煙、魔物?そういやいつからいるんだろう。

もしかすると。

僕は急いで建物の中にもどった。

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