五章のまとめ
第四章のあらすじと人物紹介です。
読み飛ばして頂いても問題ないです。
また、本編とは直接関係のない内容ではありますが、本作のスピンオフ的短編を投稿済みです。
世界観も雰囲気も違うお話ではありますが、とあるキャラクターのバックボーンとなる内容ですので、
もしもご興味があれば、お読みいただけると嬉しく思います。
一万字ちょいのお話ですので、ちょっとお時間が空いた時にでも如何でしょうか?
『日の当たらない場所 あたたかな日々』
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『 四章のあらすじ 』
本作のヒロイン枠、絹川です!
何度でも、声を大にして言いましょう。私が、そう、わ~た~し~が~! ヒロインの小友理なのですょ。あぁ、いえ……、別に何ってわけじゃあないんです。けど、なんとなく私の立場を脅かす存在の影がちらほらしてまして。
そりゃそうと、とうとう、うさみんとの対決です。あの子よりにもよって、農業改革だなんてこの世界の構造を根底からひっくり返すようなコト企んでたんです。しかもハインツさんのお話だと、半年くらい前からちくちく計画してたかもなんですって。
私ゃ別に、友情がどうのとかえらっそうに語れるような人間じゃね~ですけど、それでも他の二人を騙くらかしてまでやるようなこっちゃないでしょよ。どんだけこの世界でおっきい顔したいんでしょうねぇ、宇佐美さんは。
……えっ? アレ、宇佐美さん自身の意志じゃないかもなんです? 女神サマとやらに精神汚染されちゃってるかもしれないんですか? ……何それ、おっかなっ! 洗脳と神様とか、混ぜるな危険の筆頭みたいなモンじゃないですか。ほんと、いよいよもってきなくせ~カンジになっちゃいましたねぇ。
ってことで、本作もいよいよ佳境。これまで防戦一方だった私たちも、そろそろこっちから対策に乗り出しますよ? ……いいかげんあのはた迷惑な存在とは、何とかして決着つけなきゃならんのです。
わかってんですか、ハインツさん。可愛いJKにごろにゃんされて、鼻の下伸ばしてる場合じゃね~んですからねッ!!
§§§
『 第五章の登場人物 』
●リーゼン伯ハインツ = 魔王、ラルザ・ハインツ = 山之辺 卓
腹黒系大人気ない主人公。好きな野菜は茄子。
ハ「滋味がたまらん。それに知ってるか? 親の言葉と茄子の花にゃ千に一つも徒は無しってな」
絹「実際は、結構がっつり摘果するらしいですけどねぇ」
ハ「んな哀しいツッコミはいらねぇんだよ」
●絹川 小友理
どうあがいても地味系ヒロイン。好きな野菜はもやし。
絹「チープでヘルシーな素敵お野菜ですねぇ」
ハ「もやしっ子なお前にピッタリだな。ヒゲと芽を取るのがめんどくさいあたり含めて」
絹「ンマッ、失礼な。それにご自宅用ならそのまんまで良いでしょ? 芽とヒゲも栄養たっぷりで、口ざわり以外に取る理由なんて無いんです。つまりはそういうことですよ♪」
●和泉 宏彰
……つまり、どういうことだってばよ? 系男勇者。好きな野菜はモロヘイヤ。
絹「ほぉ……。で? どうやって食べるのがお好きで?」
和「さ、サラダとか……」
ハ「お前、名前だけで選んだろ?(モロヘイヤ:名前の由来が『野菜の王様』)」
●百合沢 美華子
思い込んだら一直線系、実はチョロかった女勇者。好きな野菜はトマト。
ハ「嫌いじゃないんだが、あの食感がちょっとなぁ……」
百「でしたら私が美味しいトマトのお料理をッ! 良いですか、ハインツさん。トマトは熱を加えることで甘みが増しますし、きちんと湯剥きをすれば皮が口にあたる事もありません。我が家に伝わる絶品メニューを是非お試しくださいませ。そうです! どうせなら私がハインツさんのお家にお邪魔して――」
絹「……あ~ぁハインツさん。そんな見えてる地雷、踏みます? フツウ?」
●宇佐美 梓
黒幕系意識乗っ取られ女勇者。好きな野菜はアケビ。
ハ「あれって果物じゃないのか?」
絹「実を食べる時はそうですけど、皮の部分を野菜として扱うこともあるんですよ」
百「揚げ物ですとか、炒め物にしたりもしますわ」
●メリッサ王女
宇佐美にまんまと乗せられてしまった王女。現在猛省中。
●農村の人たち
宇佐美によって今年の収穫量を増やしてもらった農家の方々。実際問題、この時点で改革を中止したところで、彼らにとっては得しかない。宇佐美の残した農業技術の一端が、以降も彼らの中に残り続けることは確実で、それは彼らの生活に劇的とは言えないまでも変化を及ぼす。
そのことにハインツが思い至るのは、まだ当分先の話。
●ナザン地方領主
宇佐美にまんまと乗せられてしまった領主。これまで特に大きな功績を残した訳ではないが、それでも堅実な領地運営で中央からの評価は高い。高齢の為、そろそろ領主の地位を後進に譲ろうとしていたところで舞い込んできた宇佐美の提案に、まんまと乗せられてしまう。己の名を残したいと言うより、少しでも自領が豊かになればという思いだった。
●四輪作法
イギリスはイングランド東部、ノーフォーク州に由来する事から、ノーフォーク農法と呼ばれることも。
同じ土地で、かぶ→大麦→クローバー→小麦を4年周期で輪作することで、作物の収穫と家畜の飼育を絶え間なく行えることから、農業物の安定生産に繋がる画期的方策であった。
それ以前の農業は、作付地と休耕地を交互に行う二圃制、春耕地→秋耕地→休耕地というサイクルを三年周期で繰り返す三圃制を主に行っていたとされる為、毎年生産物を収穫できる四輪作法が如何にその土地の食物生産に寄与したかが窺い知れる。
とはいえ、始めて数年の間は一時的にせよ生産力が低下することに加え、高度に計画的な農法は農家自身の意志によって為せるレベルの事業ではないことから、土地の支配者が先導して行う領地改革という面で語られるべき改革であることは疑いようが無い。
安易に一個人がやり始めようとしても、確実に失敗する。
ちなみに、宇佐美を始めとした異世界勇者一向は知りもしない事だが、現在この土地で行われている農業方法は、村周辺の森の中から一定区画の木材を伐採し、残った植物を焼き払うことで土地に栄養を与える、いわゆる焼き畑農業である。森を焼き払い開いた畑は非常に富んだ土壌となるが、連続して農耕を行えば年をおうごとに土地は痩せていく。そのため、一度開墾した土地でも数年で見切りをつけ、新たな焼き畑を行うのが従来のやり方であった。
つまり、今回宇佐美が農耕地だと判断し肥料の散布を行った土地は、どのみち来年か再来年には放置される運命が待っていた。どれだけ地力を回復させていようと、次に使われるのは、そこが再度森に飲み込まれた後の数十年後の話だっただろう。
この周遊的方法で都市人口を賄うほどの生産量を確保できていたのは、ひとえに都市部を含めた国全体の人口が一定数以下であった為であり、現状の食料消費量で言えば、定置農法へと移行することすら求められてはいなかった。
そんな焼き畑農業から、二圃式、三圃式農業への移行ですら、歴史的大事業と呼んでも過言ではないほどの大改革であるのに、その辺りすっ飛ばしていきなり四輪作法始めようとするなど、無謀にも程がある。
後に、絹川氏は語る。
「――ハインツさんが言ってた、『農業改革を行う為に必要な三つのモノ』……すなわち、知識、時間、協力者。私たちはこの三つを宇佐美さんが満たしてると思ってたし、だからこそ邪魔する為に色々やったわけですけど、実際は違ったんですよねぇ。
宇佐美さんは、ここより進んだ未来の知識は持ってても、肝心な、今この世界で実際に行われてることはなんなのかっていう知識が無かった。そして、これからずっとこの土地の農業を支えていこうっていう時間も無かった。だから、一度は掴まえたように見えてた協力者からも最終的に見捨てられちゃった訳ですもん」
「結局あの時の宇佐美さんは、ハインツさんの話してた大前提を、三つとも満たしてなかったんです。多分ですけど、私たちがチャチャ入れてなかったとしても、一年もたずにダメになっちゃってたんじゃないですかねぇ?
ま、なんにせよ……、どだい画期的な知識チートなんて上手く行きっこないって事なんですよ。ほんとにナニカを変えたいなら、地道で気長な長期的発展しか無理。チートしようとしたって無駄ってのが、歴史の必然ってモノじゃあないんです?」
「ほぉ~。ちったぁわかってきたじゃねぇか、絹川」
「そりゃこんだけアナタに付き合ってりゃあねぇ。ホレホレ、もっと褒めても良いですよん」
「……ぅっぜぇ。調子にのんな」
各方面に喧嘩を売った気がしてしょうがない第五章でした。




