四章のまとめ
第四章のあらすじと人物紹介です
読み飛ばして頂いても問題ないです
『 四章のあらすじ 』
小友理です、ヒロインですよ、絹川です(七・五調字余り)
おかしい。ハインツさんの私に対する扱いが変わらない……。
いえですね? こないだからしばらく、ハインツさんの治めてるなんとかって名前の土地まで行ってきたんです。旅行ですよ、旅行。
んで、その間に和泉君が女の子にふられたり、暴れんぼうな魔族の人とドンパチやったりしたんです。その人の扱いをどうするかって百合沢さんが悩んじゃったりもしましたねぇ。あ、あと宇佐美さんがなんか怖かった。
でも、一番重要なのは、ハインツさんの昔のお話を聞けたこと。簡単に纏めちゃうと、…………まぁなんか色々あったんです。大変だったんですよ! で、その間に色んなお話をして、ハインツさんの弱いトコとか知っちゃって、ソレを私がなぐさめてあげちゃったりなんかして……。
普通そんな話しちゃったら、その後の人間関係変わりません? 変わりますよねぇ!? ソレまではぞんざいに扱ってた相手が、実は自分にとって大切な人間だったことに気づいて……それでこぅ、お互いの距離? みたいなんが縮まっちゃったりとか、イロイロあるじゃないですか。あって当然ってモンでしょ!?
だってのにあのオッサンときたら、口を開けば「邪魔」だの「落ち着きがない」だの「阿呆」だのって悪口ばっかり。これじゃ今までと変わんないですよっ。
……ん? いやいや、違いますよ。別にチヤホヤして欲しいってことじゃないです。ってか、今更あの人が私を女の子扱いとかしてきたらソレはそれで気持ち悪いですし。でもほら、なんかこぅあるじゃないですか。何がかって言われたら良くわかんないですけどっ!!
とにかくあのオッサンはむかつきます。そぅ、なんかモヤっとするんです!
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『 第四章の登場人物 』
●リーゼン伯ハインツ = 魔王、ラルザ・ハインツ = 山之辺 卓
シリアスに持ってくつもりは無いのに気がついたら重い話ばっかり系主人公。初恋の相手は幼稚園の先生。
絹「職業で相手選ぶって、なんか不純」
ハ「普通に幼稚園児の時の話だ。大人になってから幼稚園の先生に懸想してた訳じゃねぇよ!」
●絹川 小友理
シリアスに持っていきたいのに上手くいかない系ヒロイン。初恋の相手はおにいちゃん。
ハ「へぇ、兄弟いたのか」
絹「もう死んじゃいましたけどねぇ」
ハ「んな重い話さらっと言うな!」
●和泉 宏彰
直情八方美人系男勇者。初恋の相手は親戚のお姉さん(5歳当時、相手は既婚)。
「ってかさ、オレにしてみればいつも初めての恋と同じときめきを感じるワケ。だから、いちいち初恋が誰とかって、考えても仕方なくねぇ?」
●百合沢 美華子
イロイロ考えすぎちゃう系女勇者。初恋の相手は黙秘。
「初めての恋はあず……コホン。そういうものは、自分の中に秘めておくものだと思います」
●宇佐美 梓
不気味系女勇者。初恋の相手は和泉。
「中学ではじめて見た時、なんかビビビってきた」
●メリッサ王女
今回はほぼ出番なし
●マゼラン王国定例閣議参加者一同
「船頭」「多く」「して」「船」「山を」「登る」
●ブラレ・クラーマ
うっかり人属領に来ちゃった魔族の男。
その後の彼が無事故郷に戻れたのかは誰も知らない。それは黙して語られるべきことでは無い。
●メイドさん's
和泉担当、リズ。百合沢担当、キャス。宇佐美担当、イザベル。年はそれぞれ十六、十七、十六。
メイドとしての経験は和泉担当のリズが一番長く、十歳の頃からいっぱしのメイドとして働いてきた。母どころか、曾祖母の代から王城でのメイドとして仕えるエリートであり、母親は現在もメイドの取り仕切りを任されるハウスキーパーとして働いている。
キャスとイザベルはメイドになる以前からの友人同士だが、年下のイザベルのほうが先に上級メイドに上がっってしまった時から、二人の仲はあまり良好とはいえない。
三人とも隙あらば他二人を出し抜き、自分こそが一番気に入られる存在になろうと虎視眈々狙ってはいるが、そのような殺伐さを主人に気取られぬよう振舞うくらいの老練さも持ち合わせている。事実、和泉どころか百合沢までも、メイドたち三人を仲の良い娘たちだと感じているのである。故に、三人に手をつけた和泉を責めはすれど、それがメイドの側によって誘導された結果であるとは想像だにしていない。絹川が三人の攻防に気づけたのは、彼女の人間観察力の賜物といえよう。
この世界における婦女子の働き口としてのメイド、つまり女中という職はきわめて一般的であり、職業婦人の約六割を占める。王城を代表とする巨大施設や、貴族の邸宅の維持には相応の労力が必要であり、それらは基本的に非貴賓層によって賄われている。
メイド、と一言で言っても職域によって名称が変わり、厨房で働くキッチンメイド、寝室担当のチェインバー、洗濯を主とするランドリーなどがあげられる。そしてこの三人のように特定の個人の傍で働く、所謂人付きのメイドは、侍女、もしくはレディースメイドと呼ばれており、それぞれ担当とする相手の身の回りの世話全般を行う。
今回の旅行に同行したのも、仕える人間の傍で仕事をするという特権があるからで、他の場所についているメイドとは一線を画す、メイドの中でも上位の存在である証明ともいえよう。逆に侍女を付けられているという時点で、和泉たち勇者三人が貴賓としての扱いを受けているのだと言うことも出来る。
なお、絹川に専属のレディースメイドは居ない。これは別に王城側からのイジメなどではなく、本人が自分の世話くらい自分でできると断わったからである。絹川が日頃仲良くしているのは、専門の勤務地を持たず定期的に様々な場所を割り振られ家事全般を行うハウスメイドと呼ばれる職。つまりは下っ端である。
彼女達レディースメイドは一般的に十八~十九くらいまでの若い娘が勤めることが多く、いわばメイドという職の花形である。主人の外出に同行する機会もあり、多くの華やかな場に触れる経験も可能な、この世界の女子、憧れの職といえよう。
つまりは非常に競争の激しい環境で、気を抜けば数ヶ月で配置換えとなる者も珍しくは無く、余程主人に気に入られでもしない限りは数年で他の者にその座を奪われる。表にあっては自分を磨き、影にいっては他者の足を引っ張る。しかしながらあくまでも主人を立てることを忘れず、他者と協調してスムーズに職務を全うすることが求められるのである。
どんな純朴な娘であっても、一度侍女を体験すると魂の根底から『女』に作り変えられると言われるほど熾烈なその場所は、一言で言って魔窟。
そんな職場に身をおいていた彼女達三人が、和泉という一見超優良物件にホイホイされたのも自然な流れだし、彼女達の求めるナニガシが得られないと判断した瞬間に見限ったのも当然といえば当然なのである。
この世界の女性は、我々の思うそれより遥かに強く、そして逞しい。




