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いやいや、チートとか勘弁してくださいね  (旧題【つじつまあわせはいつかのために】)  作者: 明智 治
第二章  青少年の健全な育成における突出した戦力の有害性とその対処
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03  『バレてないって事はやってないのと同じだ』

 勇者どもに続いて現れたのは、軽鎧姿の騎士が4人。そして魔道士が1人だった。


「うわっ。よりによってアイツかよ。めんどくせぇ」


「お知り合いですか?」


「あぁ、副魔道士長のローザリア。お前も知ってるギリスタックの爺さんの部下だ。……肩書きはな」


「あのお爺さんですか。面白い人ですよねぇ。教え方もわかりやすかったです。

 あの人の部下の方なら、悪い人じゃないんじゃないですか?」


 まぁ、悪いやつと言い切ることはできんだろうな。少なくとも現状、あの女を法で裁くことはできないんだから。証拠がない犯罪ってのは、やってないのと同じだからな。




「肩書きは、と言ったろ? 部下なのは立場だけだ。師と仰いでるわけじゃない」


「なぁんか引っかかる言い方ですねぇ」


「あの爺さん曰く、彼女が人より優れている所は3つだけ。

 1つは他人を蹴落としてでものし上がる政治手腕。もう1つはバレずに賄賂をやり取りする技だとよ」


「あの……。どう聞いても、貶してるように聞こえるんですけど」


「概ね正解。アイツは権力に集るダニみたいな女だ。

 今のポストだって魔道士としての腕で座ってるわけじゃない。研究者としては何も残さず、テメェの懐を暖めるためだけに地位についてる俗物だよ。

 今回ついて来たのだって、大方王女がご執心の勇者に擦り寄って、自分の発言力を強めようとでも思ったんだろ。ここが難易度の低い場所だってのも、戦闘魔道士としちゃクソ弱いアイツにおあつらえ向きだ」


 ちなみに、そんなローザリアの得意魔法は、探知と隠蔽。

 狙って覚えた結果なのか、良く使うから熟達したのかはわからん。なんにせよ、度し難い話だということに違いは無い。



「うぅ。どう聞いても悪い人としか思えないですよぅ」


「法に触れてないんだから悪くは無いだろ。少なくともバレてない。バレてないって事はやってないのと同じだ、少なくとも書面上はな。

 まぁ確かに、嫌なヤツではあるがな」


「なんだかなぁですよ。そういえば、優れてるトコの最後の1つは何なんですか?」


「…………答える気にもならん事だ」



 ギリスタック魔道士長曰く、彼女にしてもっとも優れており、かつ重要なことと言えば、あの立派な胸部装甲なんだとよ。あの乳があるから我慢できるなんて言ってやがる。

 もう80だろうに、いい加減枯れてろよなあの爺。


 とはいえ確かに政府高官の中にだって、あの阿婆擦れの手練手管に惑わされてコロッといっちまった大タワケが少なからず居るのだ。俺にとっちゃ一片の価値も見出せん質量過多な脂肪の塊にも、少々の評価くらいは下す必要があるのかもしれん。



「えぇ~。教えてくださいよぅ。気になるじゃないですか」


「知らん。知りたきゃ爺に直接聞け」


「うっ。ソコまで言われると、なんだか聞くのが怖い気が」


 その時は是非、俺の関与しない場所で聞いてくれ。下手にとばっちりを食うのは御免だからな。



「それにしても、その口ぶりだと仲良い相手ってワケじゃないんですねぇ」


「ったり前だろうが。俺があんな政治屋崩れとお友達になると思ってんのか?」


「だってハインツさんも偉い人なんだし。そういう人って悪いことしてのし上がってるんでしょ?」


「なんつう偏見だそりゃ。まぁ、俺だって清廉潔白かって言われりゃ素直にうなずくのに抵抗あるっちゃある。それでも趣味が利権漁りのあいつ等と一緒にされんのは業腹だぞ」


 そもそも魔族だってコトを誤魔化してる時点で、バレたら地位追われるくらいじゃすまないんだし。……だが、少なくとも国民に不利益となる状況を見過ごしたりはしていないつもりだ。

 魔族とコトを構えるような事態にならんように誘導はしてるけど。


 って、こんなやり取りしてる場合じゃないな。そろそろやつ等の方針が決まりそうだ。




「……どうやら入り口に2人残して、6人で進むようだな。俺たちも移動する。と、ローザリアは無能だが探知魔法だけは人並みだ。今まで以上に気をつけて進むぞ」


「わかりました。でも入り口には見張りがいるんですよね? どうするんですか」


「この洞窟は入り口が1つじゃない。もう1つ裏側から入るルートがあるからそっちに廻る。内部で追いつけるはずだ」


「了解でっす。でも、良くあの人たちの話聞き取れましたねぇ。かなり距離あるのに」


「魔族の耳は特別製なんだよ。このくらいの距離、意識すれば聞き取れる」


「おぉ。流石ですねぇ。地獄耳(デビル・イヤー)ってやつですねっ!」


「悪魔の力は身につけてねぇよ。俺は魔族だ。一緒にすんな」


「似たようなモンじゃないですか」


「全っ然違う。豆腐と高野豆腐くらい違う」


「元は同じじゃないですか。

 …………ってかですね。私、前々からず~っと気になってたんですけど。

 ハインツさんって、私たちの世界に詳しすぎますよねぇ?」


「そうか? たまたまだろ」


「絶対違います! それに、まだ何か隠してることあるみたいだし。召喚魔法を研究してた理由だって聞いてませんし。

 ……私たちの世界のこと、実はなんでも知ってるんじゃないんですか?」


「…………なんでもは知らねぇよ。知ってることだけだ」


「だから、その返しが既にイロイロ知ってるでしょっ!」




 勢いで茶化してしまったが、別に隠しておきたいわけじゃない。今更コイツに俺の事情を教えたところで、何かが変わるわけじゃないしな。

 魔族であることを知られている時点で、俺はコイツを自由にする気はないんだ。少なくともここに居る限りは。



 …………ただまぁ、いっぺん死んで生まれ変わったとか、昔のこととか。そういうのを話すのは気が引けただけだ。


 不幸自慢なんて聞いたって面白くも無いだろ? 他人の惚れた腫れたとおんなじくらい、金ももらわずに聞けるかってな話だ。



 もぞもぞ言ってる絹川を無視して先に進む。

 今は、先に進むことのほうが大事だからな。

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