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いやいや、チートとか勘弁してくださいね  (旧題【つじつまあわせはいつかのために】)  作者: 明智 治
第一章  自称、紳士的なハズだったオッサンが本性現すまでの一部始終
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09(第一章 終)  『世界の調整者になるんだっ!! → うわ、だっさ。ネーミングセンスなさすぎ』

「えっと……。はい、理解できました。多分。…………大体は」


「それなら自分の身に何が起きてるかもわかるだろ?」


「いや、ソコもちゃんと教えてくださいよ。勿体つけるのカンジ悪いですよ?」


 イラッとする。テメェの理解力の貧困さを棚に上げおってからに。


「だからな? お前がここにいる原因の勇者召喚魔法には、ちょろっと能力を底上げするだけの影響しかねぇんだよ。召喚されたからっていきなり人外の動きができるようにゃできてないし、スキルなんぞが生えてくる余地もねぇ」


 ってか、よくよく考えればコイツ等がいきなりこっちの言葉を理解できてる時点でおかしい。俺としたことがどうして気付かなかったかねぇ。周りに流されちまったか。




「つまり、私たちが出会った『女神サマ』ってのが問題なんですよね」


「大問題だ。おそらくだがその能力は、魂レベルで植えつけられている。ってことは、召喚魔法で魂が複製されたときか、移動してる最中に介入してきたわけだ。まぁそういうちょっかいの出し方しか、ヤツにはできないからなんだろが。

 んで、お前の話じゃあのクソアマの希望はこの世界の魔族を滅ぼすこと。となると、お前を素直に帰還させるわけにいかない理由もわかるだろ?」


「えっと。戻るときも同じように魂だけで世界を渡るわけだから。邪魔されちゃうってこと?」


「邪魔で済みゃ良いけどな。最悪消滅させられる。まぁここにいるお前が何かされたところで、あっちの世界で暮らしているはずのお前にゃ影響はないんだが。

 よしんば帰還できたとしても、……嫌がらせくらいはされるかもなぁ」


「ちょ、なにされちゃうんですか!?」


「まぁそうだな。……魂いじった上で元に戻して、人格崩壊させるとか?」


「おっそろしいこと考え付きますねぇ! そんなん身の破滅じゃないですか。私の未来がっ!」


「俺がやるわけじゃねぇよ。そういう危険があるって話だ。

 それに、俺のほうにも問題がある。俺は勇者なんぞに好き放題させるつもりは無い。だが、相手がお前みたいなゆるいのだったらどうとでもできるが、他の3人はそうじゃない。能力もよくわからん」


「たしかに和泉君とか気持ち悪いくらいすごい動きしてましたもんねぇ。

 というかですね、そもそもなんで女神なんかと敵対しちゃってるんです。やっぱり魔族だから? 世界を守ろうってしている神様とは相性が悪いんですか?」


「逆だ、逆。アイツは世界を捻じ曲げようと。……特定種族以外が存在しない世界にしようとしてるんだよ」




 この世界には人族がいる。だがそれ以外に魔族もいる。異なる見目や肌の色、違う生活様式や異なる価値観の種族がいろいろと居る。俺が考えるに、コイツ等は全て纏めて人間という同じ種だ。

 だがその間で差別や排斥、時には戦争が起こることは当然ある。それは悲劇かもしれんが、自然な流れでもある。だというのに……。



「あの女神とやらはその中のただ1種族。この国の殆どのヒト族と同じ、白肌金髪碧眼の人族のみを残し、それ以外の人間種を全滅させた自分のお気に入りだけの世界をお望みだ」


「何ですかその選民思想。あ、じゃあハインツさんは、そういう差別を無くそうとしてるんですね? そんなアナタが邪魔だから、女神に目をつけられている、と」


「いや? そんなんは考えてない。そりゃ自分の身の回りのやつがなんかされたら殴り返すが、俺個人は別にどんなやつがいてもかまわんと思うしな。

 そもそもそういう差別意識含めて、どんな考え持ってたとしてもソレはそいつの自由だろ。いちいちどうこうしようとは思わんぞ?」


 人が2人いりゃ喧嘩は起こる。3人居れば排斥される。それはどうしようもないくらい社会的生物の常だし、本能みたいなもんだ。それを無理やり、差別よくないとか言って抑圧するほうが不自然だ。


 自分がその犠牲になるのがイヤなら抗えば良い。ダメなら逃げれば良い。大事なのはそういう時に抵抗するための手段を教えたり、逃げ場を保障してやったりすることだ。やみくもに加害者を徹底排除することじゃないだろ。

 まぁもちろん、加害者側にならないように良識を教育するのは大事だけど、それも最終的には理想論だしな。

 思想教育やりまくったって、出来上がるのはディストピアだぞ。




「じゃあ結局、女神の何が悪いんです。単純に異種族を守りたいってことじゃないんですよね?」


「まぁ、守れるなら守りたい。実は、その。

 ここだけの話なんだが……。

 俺も…………魔族、だし、な」


「いやそんな溜めなくても。ぶっちゃけバレバレでしたけど」


「だから立場上、この国と魔族が戦争をするようなことは避けたい。だが歴史の流れとしてどうしようもなく戦争になって、結果どちらかが全滅するようなことになったとしても、それはそれで仕方ないかとも思う。その時は凡庸な魔族としてある程度抵抗するけどな」


「うわっ、スルーした! 汚いなさすが魔族きたない」


 無視。


 とにかく、この先種族間戦争が起きる可能性はあるし、実際起こることだろう。だがそれはこの世界に生きる人々の選択の結果で、そういう歴史を紡いだってだけだ。善悪で語るような話じゃない。


「だがな? 女神はこの世界の存在じゃない。そして勇者もだ。本来あるはずのない要素が混入して、この世界に生きてる人たちが紡いでいく歴史を歪める。

 俺はそいつが、我慢ならん」



 この世界の行く末に興味が出て、のんびり眺めたいならそうすりゃ良い。観察者効果的な意味で影響を与えちゃうくらいなら、まぁ許容範囲だ。どこの風で桶屋が儲かるかなんざ読みきれる存在は居やしない。


 だが、岡目八目の観衆が茶々入れて、お気に入りの棋士が勝つように細工するのはルール違反だろ。




「俺は自分がこの世界にとって異物だと理解してる。だから昔は極力何にも影響を与えないようにと思って生きてきた。こんな立場になんて、なるつもりはこれぽっちもなかったんだ。

 けどいろんなことが重なって、見てるだけじゃ状況が悪化していくだけになっちまった。俺のせいで戦争になりかけたこともある。

 だから、自分が変えてしまったかもしれない世界の流れを元に戻せるように、これ以上悪化させないようにって動いてきたんだ。その為に潜入みたいなマネまでしてこの国の大臣やってるわけだしな」



「——この流れを、他所からしゃしゃり出てきた女神なんぞに邪魔されてたまるかよ。しかもとっかかりが自分のまいた種だなんて、絶対許さない」



「…………なるほど。おおむね考えはわかりました。色々屈折してる気もしますけど」


「いちいち突っかかるな。まぁ、そんな事情もあって俺は女神を止めたい。だが立場上表立って動くには限界がある。下手に勇者と接触して、警戒でもされた日にゃどう転ぶかわからん。アホ王女経由で失脚させられる恐れもあるしな」


「はい。大変なんですね」


「ハイじゃないが。……協力してもらうからな。

 俺はお前が無事帰還できるようにする方法を考える。だからお前は、勇者どもをどうにかする方を手伝え」


「どうにかって……どうするんです。こう見えて私、小学生とだって喧嘩じゃ負ける自信ありますよ? 低学年女子くらいなら、なんとか良い勝負できると思いますけど」


「別に奴らと殴り合いしてこいとは言ってねぇよ。要は、あいつらがこの世界で余計なマネをしなけりゃ良いんだ。

 お前の仕事は奴らの監視。そして俺に報告。後は俺が表に立てないときに奴らを止めることだ」




 そう。ああいうやつ等の考えそうなことは読める。

 やらせねぇぞ? 俺Tueeeも、NAISEIも、技術革命も、文化爆弾も。

 俺たちでチートを止める。世界の改変なんぞさせん。

 そう、俺たちが、世界の調整者(ワールド・バランサー)になるんだっ!!



「うわ、だっさ。ネーミングセンスなさすぎ」


 うっせぇ黙れ。もぐぞ。

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