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贖う者  作者: 魚野れん
第九章 砂漠の殿下 ─追跡者と噂─
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弔いと移動

「少しルートを考えた方が良い。

 堂々と行くか、隠密に行くか。

 俺は堂々と、最短距離を行くのが 最善だと思うけど」

「堂々と行けば行く程、俺達は本領発揮できなくなるぞ」

 アンドレアルフスがアンドロマリウスをまっすぐ見つめ、そう言うと彼は眉間にシワを寄せた。


「でも、あちらさんも一般人を巻き込むわけにゃいかねーだろ?」

 アンドレアルフスは首を傾げる。元々本領発揮するつもりのない彼でも、今の所は十分にシェリルとリリアンヌを守っている。相手が遥かに弱い人間なだけに、気楽に構えているのかもしれない。

 対するアンドロマリウスは、人間相手だからこそ面倒だと考えているようだ。小さく唸り、考え込むように俯いた。


「お前は皇族が元凶だと思っているのだろうが……あれは手段を選ばない。

 最終的には一般人も巻き込みかねん」


 アンドロマリウスの表情を見たアンドレアルフスが小さく吹いた。そんな彼を睨みつけるアンドロマリウスの肩に腕を回す。

「どうせあんたも皇族が元凶だと睨んでるんだろ。

 一般人が巻き込まれるのは、もっと切羽詰ってからだ。

 心配いらねーよ、堕ちたる天使様」




 悪魔二人が戻ると、シェリルとリリアンヌはナイフの扱い方で盛り上がっていた。

「あ」

 二人に先に気付いたシェリルが振り返る。その手はリリアンヌが先ほど振るっていた短剣が光を反射させている。


「ありがとう、弔ってくれて」

「構わん」


 シェリルの持つ短剣をさりげなく奪い、アンドレアルフスはリリアンヌに返した。シェリルは手から消えた短剣の行き先を見つめてから、じっとアンドロマリウスを恨めしそうに睨む。


「あのまま放って置くわけにもいかないだろ。

 死者を冒涜する趣味はないし、あれが面倒な諸々の発祥源になっても困るし」

 そんな事より、目くらましの術を戻してくれとアンドレアルフスが頼み始めた。シェリルは、はいはいと適当に返事をして術式に力を送っていく。再度力を込められた術式がアンドレアルフスのオーラを隠す。

 彼の雰囲気は、普通より美形な人間として認識される程度まで落ち着いた。


「この術かけてもらうと、何か楽なんだよな。

 助かる」

「存在感が強すぎて、この世界から反発受けてるのかもしれないわね」

 どこかすっきりしたような表情の彼に、シェリルが答える。すると横からアンドロマリスも口を開いた。

「俺たち悪魔はこの世界にとって異物だから仕方がない」

「あんたは関係ないから良いよな。

 堂々とこの世界に来た上、シェリルと繋がってるんだから」


 つん、とそっぽを向いたアンドレアルフスに、シェリルは苦笑する。拘束されているアンドロマリウスを羨むような発言だ。不本意な現状を羨まれても、アンドロマリウスとしては複雑な気分であろう。そうシェリルはちらりと彼を見やる。


「残念だが、シェリルには俺とお前の二人を束縛できるほどの力はないぞ」


 意外にもアンドロマリウスの反応は、アンドレアルフスをからかい返すものだった。挑発的な表情を見せる彼に、シェリルはただ小さく口を開いたまま瞬きを繰り返した。


 アンドレアルフスは歯を見せてしかめっ面をして叫ぶ。

「俺は自由でいたいからこれで良いんだよ!

 つか、それより早く人気のある所まで移動しちまおう」


 わざとそうしただけで特に気にしていなかったのか、ヒポカに飛び乗ると三人の周りを急かすように走る。

 つられるようにしてリリアンヌがヒポカにさっと騎乗する。シェリルとアンドロマリウスはそれぞれ溜息を吐いて、二人の後を追ったのだった。

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