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贖う者  作者: 魚野れん
第九章 砂漠の殿下 ─追跡者と噂─

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束の間の休憩

 村を出た一行は、草原を進み続ける。大きな岩が顔を覗かせ、背の低い木々が所々に群れている。背の高い木はほとんどなく、目印のようになっていた。

「あの夫人の事、考え過ぎだったわね」

 リリアンヌがからかい混じりにシェリルを笑う。

「私の事を全く知らないし、特には恩もない人間なのよ。

 親切にされるなんて、ちょっと慣れてなかったものだから……」


 岩場で火をおこし、休憩しているシェリルが溜息を吐いた。近くではヒポカが草を食んでいる。

 彼女が空を見上げれば、真っ青で雲一つない青空が広がっている。シェリルの住んでいるカプリスの街よりも高度の高いここは、それでも快適な気温を保っていた。


 砂嵐のない草原となってからは、しっかりと巻き付けていたヒマトを緩めている。風を切ってヒポカを駆れば、ヒマトがはためき隙間から心地よい風が入ってくる。

 過ごしやすい環境となったとはいえ、休憩を挟まずに移動を続ける事はできない。ヒポカを休ませる為、こうして岩場でくつろいでいるのである。


「あ、鷲が飛んでる!

 珍しいわね」


 大きな鳥が比較的近くを旋回していた。何か獲物を見つけたのだろう。シェリルは滅多にみる事のない動物の姿にはしゃいだ声を上げた。

「変だな……ここからあの種類が住む森はちょっと遠いぞ」

「え?」

 シェリルが振り向けば、緊張した表情のアンドレアルフスが立っていた。顎を撫で、考えるそぶりを見せる彼にシェリルはさっと火を消した。


「変なのに絡まれたらやっかいだ」

「……早く移動した方が良さそうだな」


 岩場から降りて荷支度を始めていたアンドレアルフスがそれぞれのヒポカに荷を括り付けている。

「リリアンヌ」

「ええ」

 シェリルはリリアンヌに声をかけ、軽い身のこなしで彼女と共に岩場から降りた。


「あーあ、折角ひなたぼっこしてたのにな」

 残念そうに言うアンドレアルフスだが、その目は真剣に鷲を睨みつけている。彼の警戒度に緊張感を高めるシェリルは、ヒポカに飛び乗りその首を撫でた。

 誰ともなくヒポカに走れと指示を出す。十分に休憩をしていたヒポカは命令通りに疾走する。アンドレアルフスが先頭で殿がアンドレアルフスという、いつもの並びに自然となっていく。


 しばらくヒポカを駆らせると、大きな川に行き着いた。そこに橋はない。正確に言えば、橋だった物はあるが繋がっていない。

 濁流で破壊されたのか、はたまた人為的に破壊されたのかまでは分からないが、川を渡る橋は落ちてしまっていた。


「うーん、こりゃまずいな」


 アンドレアルフスの呟きは、シェリルとリリアンヌの耳には届かなかった。その代わり、地響きが伝わってくる。橋が落ちているのを確認していたアンドロマリウスが戻ってきて、アンドレアルフスの隣に並ぶ。

 シェリルが符を取り出してかざした一瞬の後、彼女の方へと弓矢が飛んできた。矢は彼女に当たることなく出現した結界に弾かれあらぬ方へと落ちていった。


「来るっ」

「いや、もう来てるだろ!」


 アンドレアルフスはシェリルの言葉に突っ込むと、姿を現した盗賊風の人間に剣を突き刺した。アンドレアルフスは男の肩に刺した長剣を抜きながら、シェリルの方を振り返る。

「正当防衛だから殺して良いよな!?」

 真剣に問われ、シェリルはこくりと頷いた。


 シェリルが辺りに視線を巡らせれば、隣に居たはずのリリアンヌはヒポカから降りて走り出していた。その手には短剣が握られている。

 恐れのない顔は、人間相手に慣れている事をシェリルに知らせた。完全に出遅れたシェリルはそれを心配そうに見るしかない。


 アンドロマリウスがリリアンヌの動きを気にする様子を見せ、その近くで盗賊と対峙する。彼の動きにシェリルは小さく息を吐いた。

「弓を持ってくれば良かったわ……」

 何もできないシェリルは、一人ヒポカに乗ったまま戦況を見守りながら呟いた。

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