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贖う者  作者: 魚野れん
第七章 砂漠の殿下 ─小さな異変─
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ディサレシア召喚

「この扉の近くに住まいしディサレシアよ、数多く世界を渡り続ける蜂よ。

 全てが渡るには小さき扉ゆえ、我が手伝おう」

 アンドレアルフスがシェリルを襲おうとしていた一匹を蹴り飛ばし、反動を使って袈裟斬りにする。アンドロマリウスが泉から離れ、二人の元へと飛んできた。

 得心したように彼へ頷いてみせると、アンドレアルフスは泉へと走っていった。シェリルの護衛を交代したアンドロマリウスは、近くに寄ってくるディサレシアを排除しながら彼女の術式が完成するのを待った。


 組み立てられていく術式で、水瓶がランプのように光を放っている。泉のそれとは違い、こちらは青い光であった。シェリルは光る水瓶に栓をして両手で持ち上げ、地面へと叩きつけた。

 ガラス製の水瓶はがしゃんと音を立てて割れ、術式そのものとなった水が地面へと広がり染み込んでいく。突如、泉の隣に大きな術式が浮かび上がった。


 結界の中とは言え、展開していく術式の真上にいるリリアンヌがきゃあと叫ぶ。クアはそんな彼女に額を撫でつけ、落ち着けと主張していた。

 一人で扱うには大きい術式である。しかし、元々の素質が十分な上に核持ちの悪魔二体と契約をしたシェリルにはそう難しい事ではなかった。

 シェリルは周りを気にせずに術の完成させるべく、術式へと力を注ぎ始める。彼女の力の練り具合に何かを感じたのか、ディサレシアが泉にいるアンドレアルフスへと攻撃するのを止めた。そして一部は彼の攻撃から逃げるように、もう一部は一直線にシェリルの方へと向かっていく。


「させねぇよっ」


 アンドレアルフスに背を向ける形となったディサレシアに向け、彼は剣を振う。剣先から小さな魔力の刃がいくつも飛び出した。ディサレシアは飛んでいった刃に切り裂かれていく。

 刃から逃げ切った数匹のディサレシアがシェリルへと襲いかかる。だが、アンドロマリウスが滑り込むようにして間に入り、長剣を振るうとディサレシアはシェリルへと触れる事なく地面へと落ちていった。


 シェリルの髪が、ふわりとなびく。一点を見つめるかのように、動かなかった瞳が揺れる。より意識を高める為か、彼女はゆっくりと目を閉じた。シェリルの展開する術式が青から白へと変化していく。術式の完成である。


「さあ、我が目の前に現れよ」

 純白となった術式が、一瞬のうちに赤く染まる。アンドロマリウスがシェリルを自分の胸元に抱き寄せる。召還術を行使した直後である彼女は、彼に引き寄せられるがまま身を預けた。

 赤く染まった式の中、所狭しとディサレシアが現れた。中でも、巨大な一匹が全員の目を引いている。


「おー、本当に女王蜂まで連れてきやがった!」


 女王蜂に一番近いアンドレアルフスが嬉しそうな声を上げた。滅多に見れるものではないだろうが、喜ぶようなものでもない。実際、リリアンヌの方はひきつった表情を浮かべ、クアを抱きしめている。クアを抱きしめているのはミャクスを守るためではなく、単に恐怖のためであろう。

「んじゃ、最大出力で行くぜ」

 すう、と息を吸い込んだアンドレアルフスは両手で剣を持ち、頭上から真っ直ぐ振り下ろした。ただ振り下ろすという動作ではあったが、複数の竜巻が発生した。凄まじい風が吹き荒ぶ。


 四方を荒らしながら蜂を巻き込み、粉砕していく。リリアンヌはそれを結界の中から真っ青になりながら見つめていた。身を守るすべのないシェリルはアンドロマリウスに抱きしめられたまま、その様子をじっと見ている。シェリルを守るアンドロマリウスの方はといえば、満足そうな笑みを浮かべた悪魔そのものといった様子のアンドレアルフスを面倒そうに見ていた。


 ひとしきり暴れ回った竜巻は、ディサレシアの虐殺に満足したのか消えていった。残ったのはシェリルが作り上げたリリアンヌとクアを守る結界とアンドロマリウスに守られたシェリル、竜巻を発生させた張本人のアンドレアルフス、そしてディサレシアの女王蜂であった。


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