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贖う者  作者: 魚野れん
第十七章 贖う者
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二人だけの会議

 アンドロマリウスは一度席を立ち、街の地図を持ってきた。それをテーブルへ広げ、長い爪で叩く。

 叩かれた場所に小さな赤い光の点が現れた。


「天使の印がこの街のあちこちに付けられていた」

「天使の印って?

 あなたのその、色の変わった眼と関係があるの?」


 アンドロマリウスが増やしていく印を見つめながらシェリルが問いかける。

 彼の右目は透明感のある碧眼であった。深く落ち着いた紅の瞳は左目だけで、天と魔を示す対極の色をしている。


「天使同士にしか見えない印で、天使が何かをしたという事を知らせるものだ。

 この瞳は、その印を見る為だ。

 通常はあらかじめ打ち合わせをしておいて、その条件にあったものだけに印を付ける」


「じゃあ、天使達は今、作戦中って事?」

「いや、正確には違うと考えている」

 アンドロマリウスが付けている印の色が変わる。今度は青だ。


「印がついているものはいくつか条件が違っていた。

 それぞれの意志で、実行した印を残している可能性もある」

 シェリルはアンドロマリウスがつけていく印を見つめていた。

 それにしても数が多い。


 説明を受けていない為、彼らが具体的に何をしていたのかは分からないが、少なくとも短期間で実行したものには思えなかった。

「印が付けられた順番とかって分からないの?」


「残念ながら分からない。

 これは、本当に残念な事に印としての意味しか成さない。

 その上、印を残した術者が死んでも他の天使が消さない限りは残り続ける。

 だが、それだけあって万が一敵側に印を見られた場合でも、暗号としては最適だ」


 印は一種類、あらかじめ決めておいた条件を達成した時だけに付ける。厳密に言えば、暗号ではないのだろう。と、シェリルは思った。

 これは、ただの目標達成しましたと伝える信号だ。信号もパターンをつければ暗号となるが、そういう用途には感じられない。


 いつの間にか、アンドロマリウスがつける印の色は緑色に変わっていた。まだ印を付けるつもりのようだ。

「赤い印は人間に付けられていた天使の印だ。

 常に移動してしまうから、印の付けられた人間が住んでいる家に置いている。

 本当は印が付けられた時にいた場所の方が好ましいのだが、さすがにそれを探るのは無謀だ」


 なるほど、確かに赤い印は住宅の多い区域に集中している。シェリルはそのまま話を促した。

「青い印は建物に付けられていた天使の印になる。

 天使が行動を起こした事は確実だが、内容が分からない」

「……随分と大ざっぱね」


 シェリルが呆れ半分に言えば、アンドロマリウスは肩を竦めてみせる。

「こればかりは昔からだ。諦めてくれ。

 残りの緑色は建物の中にある物に付けられていた」

 テーブルに広げられた街の地図は、だいぶ賑やかに変わっていた。


 三種類の色は、一カ所に固まる事なく、ばらけている。

 アンドロマリウスが言う通り、それぞれの印が付けられる条件は一見した限り、規則性があるようには思えない。

「印の他に何か残ってなかったの?

 どこかに証拠は残っているはずだわ」

 シェリルは外に出られない為、やきもきしていた。その上、体調も悪くて苛ついていた。無駄だとは分かっていても抑えきれず、口から出てしまう。


 言ってしまったと、心の中で自分に毒を吐いたが、アンドロマリウスは気にしていないようだった。

「そう簡単に言うな。事象が起きる前から見ている場所ばかりではない。

 何が変わったのか比較しようがない」

 アンドロマリウスは小さく微笑んで、シェリルの頭を軽く撫でた。

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