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贖う者  作者: 魚野れん
第十七章 贖う者
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天使の印

 天使の印があるのは分かった。いくつかの印の中に、この前シェリルの薬で死んだ家が含まれている。

 その事から、自分達を貶めようとする計略であるという確証を深めたアンドロマリウスは、その印が残されている場所の一つに向かう事にした。


 辿り着いたのは、時計塔だった。

 特に最近関わりがあった記憶はない。印が残されていても、印自体が大ざっぱな目立ち方をする為、残念ながら具体的な位置は分からない。


 アンドロマリウスの知っている天使は、平凡な個体について言うならば、そこまで知性はない。知性を持てば持つほど純粋ではなくなるからだ。

 純粋で混じりけのない、そんな天使など存在しないだろう。


 完全なる白と完全なる黒がないのと同じである。完全なる透明も存在しない。つまり、そういう事だ。

 人間も知性を宿す事で、様々な変化が起きる。何かを知り、何かに気付き、そうして考えて行動する。


 天使の場合、それを繰り返せば、天使から逸脱する可能性が増える。疑問を感じ、その答えを探すという行為は天使の活動を考えれば毒となる事が想像つくだろう。

 つまり、自問自答を繰り返すといつかは自分という存在のあり方に対して問うようになる。何かと比較したくなる。

 それは同僚を競争相手のように感じさせたり、人間と天使のどちらが神に愛されているのかを比べたくさせたりする。


 自分の仕事に疑問を持つようになるかもしれないし、そのせいで脅迫的に仕事をしたくなったり、その逆になったりするかもしれない。

 天使は駒である。

 複雑な思考を持たせず、ただ人間を見守るだけ、ただ悪魔と対峙するだけ、そういった役割だけをこなすのが理想だ。


 それを永遠と続けさせたいならば、やはり知性は邪魔なのである。


 アンドロマリウスは最低限の知性を与えられた天使を思う。彼らには悩みがない。羨ましい事だ。知性の少なさは、逆に彼らの行動を読みにくくさせるのに大いに役立っていた。

 単純な思考の積み重ねが、嫌がらせのように降りかかってきている。時計塔は、全くの無駄足だった。印以外の痕跡は見あたらない。


 もしかしたら、たまたまこの場にいた人間へと何かを施し、その場所へ実行したという意思表示代わりに印を残したのかもしれない。

 その場合、残念な事に施した物と場所は一致しない。

 死んだ人間のように、動かないのならば話は別だが。


 そう言えば、遙か昔に似たような失敗を犯して怒られている天使がいた気がする。アンドロマリウスは力なく頭を振ってその思考を追い出した。

 この場所は諦め、違う印の場所へ行くべきだろう。アンドロマリウスは視線を上げ、いくつもある天使の印を睨みつけた。




 いくつかは何かを誰かに施した場所で、残りは天使の祝福をかけられた人間、あるいはシェリルが以前に依頼を受けた人間が住む場所であった。

 これだけでは天使が何をしようとしていたのか、うまく読みとれない。


 シェリルと関わりのある人間に何かを施したのだろうが、天使の祝福をかけられた人間とシェリルと関わりのある人間は同一ではなかった。

 普通ならば、シェリルと関わりのあった人間に施した方が有用ではないかと思うのだが、天使の考える事はアンドロマリウスの理解を超えていた。

2019.10.12 誤字修正

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