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贖う者  作者: 魚野れん
第十六章 アルクの森
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二人の距離感と双子の区別

「ロネヴェとの契約があるから俺はお前をこれからも守るし、支えていくつもりだ。裏切りもしない。

 もちろん死なない程度に、だが」

「十分よ。分かっているわ」

 これは、立ち位置の確認だろうか。シェリルは今、自分は今までになくアンドロマリウスに心を許していると、自分の行動が示している事に気が付いた。


 ロネヴェとの契約を破るわけにはいかず、その上シェリルからは束縛の術を受けている。そして、二つの条件を守る為の契約をシェリルと交わしている状況だ。

 契約事で雁字搦めになっているアンドロマリウスは、仕方なくシェリルの面倒を見ているという事になる。


 シェリルの方は恋人を殺したアンドロマリウスを許す事ができず、かと言ってかの悪魔を殺す事もできず、飼い殺ししている。有意義に使えるだけ使おうという、そういう事である。

 それだけの関係だ。


 それ以上の感情を介入させれば、この奇妙な関係は終わる。ロネヴェとシェリルのような関係には、絶対にならない。

 仲間のように、家族のように接していても、事実はそうでない。そう二人がそれぞれ考えている事からこそ成り立っている関係でもあった。


「ロネヴェとの契約以上の事をさせるつもりはないわ。

 ただ、これは……昔からやってみたかった事なの。

 あなたが弱っていたから、これは良い機会だと思って」

「……勝手にしろ」

 あまりにも愛想のない声に、いい加減にしろと言われたのかと勘違いをする。

 シェリルの動きが止まったのを、アンドロマリウスは見逃さなかった。


「他の奴より、俺の面倒をみさせた方が余程安全だ」


 ぼそぼそと呟かれた言葉は、シェリルをほっとさせた。もしかしたら、アンドロマリウスもシェリルと同じく、距離感が掴みにくいと感じているのかもしれない。

 同じ気持ちでいると思えば、悪くない。シェリルは何事もなかったかのように手を動かし始めたのだった。




「まあ、本当に二人になってる!」

 シェリルは目の前にいる双子を一度に抱きしめた。

 ぎゅうぎゅうと押しつけられるように抱きつかれたヨハンとユリアは、苦しそうなそぶりもなく笑っている。


「体調は大丈夫? 不便な所とかはない?」

「大丈夫だよ」

「困った事があったら絶対言ってね、私も力になるから」

「大丈夫だって」


 目の前にいる少年と少女を交互に見ながら、シェリルは心配性の姉みたいに話しかけていた。アンドロマリウスはそんな光景を後目にアンドレアルフスと話をしている。

 二人の悪魔はあまり浮かない表情をしていて、その話の内容もあまり楽しいものではなかった。


「ヨハンの身体はもってどれくらいだ」

「……本人次第。でもそんなに長くはない」

 悪魔から見れば、ヨハンとユリアの魂の分割具合には大きく差ができていた。

 アンドレアルフスの事だから、一族を守るのに必要最低限しかヨハンには与えなかったのだろう。


 アンドレアルフスにとっては、優先順位はユリアの方が上だ。それは性差のせいだとも、それ以外の能力的な問題だともいえる。

 少なくともアンドロマリウスはそう思っていた。


 ユリアは本当にアンドレの一族であり、彼女の腹から生まれる人間は確実にアンドレの一族だ。別にヨハンがアンドレの一族ではないという訳ではない。

 ただ、彼と番となる女性が別の男との子を身篭る可能性は捨てきれないというだけである。

 確実さを求めるならば、やはり女系だ。


 そして、ヨハンよりも聞き分けがよく知的好奇心もある。

 更に言うなれば、ヨハンはシェリルに傾倒しつつあるがユリアは中立を保ち、自らがアンドレの一族であるという自覚を強く持っている。

 もちろんこれは、アンドロマリウスが見ている範囲での見解であり、事実とは違うかもしれない。

 だが、今までの経験上、そう大きくは外れていないはずだ。

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