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贖う者  作者: 魚野れん
第十六章 アルクの森
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アンドロマリウスの苛つき

 アンドロマリウスは、遠ざかっていく見知った気配を感じながら扱いにくい二体を相手取っていた。レンデレは大地を駆け、ハドルグは空を走る。

 片方に気を取られれば、もう片方は違う獲物を探しにいってしまう。適度に双方の気を引きつつ逃げ回る事は、そう簡単ではなかった。アホロテの集団を追った時とはまた違う難しさである。


 動きの鈍い個体をシェリル達が選んで移動を始めたが、まだ戻ってくる気配はない。

 アンドレアルフスが一緒なのだから、心配は無用だとは分かっていても、気になる気持ちに変わりはなかった。


 知能が低いとは言え、召還者が同じだという事は分かっているらしい。レンデレとハドルグがぶつかるように何度も仕組んだがちょっとした小競り合いにはなれど、本格的に戦い出すまではいかない。

 一人で二体を倒してしまう事も考えたが、両方と一定の距離を保ち続ける事がかなり難しく、すぐに諦めた。


 ひとまとめに攻撃してくれれば簡単なものを、二体は波状攻撃を仕掛けてくる。

 仕留めるのは自分だと言わんばかりの積極的な攻撃と、片方が攻撃を始めたら自分は様子を見るという両極端をやってのけるのだ。面倒な事、この上ない。

 知能が低いから戦闘能力も低いとは限らないという訳だろう。


 唯一の救いは、両方とも魔界の生物ではないという事だ。

 大義名分もなく、同郷の存在は殺せない為、三体の召還が終わった時には安堵した。


 ピュレンシスは魔界の生物であるが、あれは元々食材だ。問題はない。

 レンデレは魔界と異世界に通じる歪みが発生しやすい場所で生まれる。間の属性を持ちながら人間の世界で生まれ落ちる為、同郷ではなかった。


 ハドルグに関しては、不思議な生き物で神魔に属する生き物だ。レヴィアタンの亜種であるレヴィは魔族とも言えるが、ジズは歴とした神族だ。

 つまり、厳密に言えば魔族ではない。


 レンデレもハドルグも素早い動きを得意とする種で、単体相手でもやっかいな相手だ。

 アンドレアルフスはともかく、シェリルがこの速さについていけるかは疑問だった。それでも、やってもらうしかない。レンデレの足を狙って反撃をするも、ハドルグの攻撃を気にしながらだと中々当たらなかった。


 シェリル達に早く戻ってきて欲しい気持ちと、少しでも楽に倒せるようにするまで戻ってきて欲しくない気持ちがアンドロマリウスの中でせめぎ合っていた。

 恐らく空中の相手は手間取るとシェリル達も考えてハドルグを狙うはずだ。

 だからこそ、ハドルグを負傷させておく事が重要だとアンドレアルフスは考えていた。


 ――一瞬でも良い。

 ハドルグの意識が逸れればハドルグの動きを遅くさせるだけの傷を付ける事ができる。自分の眷属は空を飛べないからその役目を果たせない。

 だからと言ってレンデレの相手ができるほど敏捷ではない。


 時間が経つにつれ、思考にノイズが入り始めた。肉体の疲労からではない。シェリル達が戻らない事による不安と自分が思うように動けない事による苛つきのせいだ。

 小競り合いが多いせいで小さな傷が増えてきているのもアンドロマリウスを苛つかせる原因の一つかもしれない。

 ハドルグやレンデレも同様にかすり傷を負っているが、アンドロマリウスが考えているような重大な傷には至っていない。


 この世界に来てからというもの、思い通りに行かない事が多すぎる。ハドルグへ急降下して爪を長くした腕を振り下ろしたがうまく避けられてしまった。思わず舌打ちをする。

 短気ではない自信があったアンドロマリウスだったが、自分がどんどん短気になっている気がしてならなかった。

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