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贖う者  作者: 魚野れん
第十六章 アルクの森
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三種の生物

 考える時間はわずかだ。召還される対象の予測が正しいとも限らない。賭に近い事を成し遂げるには、少しでも攻略できる確率を上げるしかない。

「俺が囮になろう。

 想定外の二体であろうが引きつけられる余力はあるはずだ」


 囮に手を挙げたのはアンドロマリウスだった。彼が確実に一体を倒すという手もあるが、その間に二人が引きつけたままにしておけるかは分からない。

 対象が予想よりも強者であれば、引き留めきれずに各個撃破される側になりかねない。


「俺とシェリルが確実に一体をしとめる訳か……

 一番容易そうな奴を俺が選んで挑発するから、シェリルは遅れずついてこいよ」


 アンドレアルフスはアンドロマリウスの言葉に乗り、シェリルへと声をかける。彼女は何も言わず、アンドレアルフスを見つめ、ただ頷いた。

 術式からまず現れたのは鳥だった。恐らく、鳥である。シェリルはぱっと空を見上げ、目を凝らした。

 この世界の生き物ではない。だからといって過去に召喚した話が残っている生き物でもない。


「ハドルグか。ドラゴン属の何かだと思っていたが、面倒だな」

「……行ってくる」


 アンドレアルフスが愚痴をこぼせば、アンドロマリウスは文句も言わずにすぐさま飛び立った。臙脂と紺のグラデーションで彩られた長い尾を持つ美しい姿であるが、アンドレアルフスの解説によるとレヴィとジズの間の子であるらしい。

 知力の低いレヴィを母に持つハドルグの知性はそこまで高くはない。と言われても、シェリルにはピンと来なかった。


 だが、低くはないだけで油断はできない生き物に違いない。

「おっと、次がお出ましだ。

 うげ……」


 アンドレアルフスは明らかに嫌そうな声を出した。ゴーレムにも似た、岩の固まりが大地へと落ちる。

 ずしんと地響きを立てたそれは、かなりの重さがありそうだ。


「ね、何なの?」

「ピュレンシスっつーんだが、知ってるか?」


 シェリルは首を横に振る。アンドレアルフスは、だよなぁ、と溜息を吐いた。恐らく今までシェリルが見た事のない生き物だけを呼んでいるのだ。

 シェリルが相手を知っているかどうかによって、彼女の能力はだいぶ左右される事を理解しているからだ。正体をできる限り悟られたくない、なるべく姑息な手段を使いたがる、そんな所が奴らしい。


 奴、と言ってもアンドレアルフスに検討がついているわけではないが。


「貴重な栄養食なんだが、何故か動いてる……」

「え?」

「殆ど動かない、石っころみたいな奴のはずなんだが、ゴーレムになってやがる。

 いや、そもそもこれはゴーレムなのか?

 って最後の一体が現れやがった!」


 アンドレアルフスの理解に及ばない生物が現れていたらしい。シェリルは分からないながらに、無理矢理飲み込んだ。

 知らない生物しか現れないのならば、知ろうとする事を止めて対処するしかない。つまり、力でごり押ししようという事だ。


「そ、そう。で、最後のは何?」

「レンデレだ。ありゃだめだな、マリウスに頼もう。

 俺達はピュレンシス行くぞ!」


 念の為に名前を聞いたが、やはりシェリルには分からなかった。

 アンドレアルフスの方は、最後に現れた、獣人のような大きい影を見てげんなりとした表情でそうシェリルに言い、ピュレンシスというらしい岩の固まりへ向かって走り出した。


 彼が嫌そうな顔をするという事は、倒すのが面倒なのだろう。シェリルは覚悟し、彼を追いかける。

 アンドロマリウスは三体目が現れた途端、方向を変えてレンデレへと飛びかかる。不意打ちを食らったレンデレは怒りを露わに吼える。


 飛びかかろうとしたレンデレめがけ、アンドロマリウスを追いかけていたハドルグがぶつかった。レンデレは青黒い鬣を逆立てている。

 ハドルグは分が悪いと悟ったか、空中へと舞い上がってレンデレの手が届かない上空へと逃げていった。

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