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贖う者  作者: 魚野れん
第三章 悪魔とお茶会
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迎えに来た悪魔

「あんたがマリウスをどう思おうが勝手だが――」

 アンドレアルフスは大体の事情が分かってきた所で、異変を感じて眉をひそめた。

 結界に圧力を感じる。とても強大な力だった。


 アンドレアルフスの張った結界を力業で破壊しようとする力に額を押さえて耐えた。その力はアンドレアルフスの苦手とする聖の力だった。

 シェリルは突然不快そうな様子を見せた彼に、近寄ろうと立ち上がる。


「マリウスの方は、単純にあんたを案じているんじゃないか?」

 アンドレアルフスはそれを手で制す。力の使い方に心当たりがあった。アンドレアルフスが育てたのだから当たり前だ。


 召還されていない――つまり、この世界に認められていない――状態にも関わらず、綺麗に張った結界を力業で破壊される。それも、苦手な聖の力でやられては堪らない。

 アンドレアルフスはこの世界に、こっそりと存在しているだけだ。勝手にやってきている彼は、この世界に認められていない。力を誇示すれば、この世界から異物と判断されて弾かれる。

 丁寧に結界を作り上げるだけでも、後日の反動を思うと気が重かったのだ。それ以上のダメージは受けたくない。


 アンドレアルフスは結界を解く事にした。

 後少しでも判断が遅れていたら、結界は破られ、アンドレアルフスはすぐにでも魔界へ戻りたくなる程の痛手を被っていただろう。

 結界が破られる前に解くのが間に合った事に、安堵の息を付く。一呼吸置いてから、シェリルの背後に立つ男を認めて口を開いた。


「シェリル、お迎えだ」

「え?」

 彼の言葉に、咄嗟に背後へ頭を動かす。シェリルの視界には、不機嫌そうなアンドロマリウスの姿があった。




「アンドレ。

 ……お前、俺を謀ったな」

 現れたアンドロマリウスの最初の一言はそれだった。一言には止まらない様子で更に口を開こうとしている。

 だが、アンドレアルフスの返事の方が早かった。

「シェリルと一緒にいるのが俺だって分かっておきながら、容赦なく結界を破ろうとしただろ」

 間にいるシェリルの事など忘れてしまったかのような悪魔達に、彼女は唖然としていた。そんな彼女を気にする事なく、話は進んでいく。


「俺は単に、シェリルと話がしたかっただけだ」

 飄々とした態度のアンドレアルフスに、アンドロマリウスの眉間の皺が深くなった。シェリルは部屋の温度が下がったような気がしたのか、腕をさすっていた。

「嘘を吐くな。

 話がしたいくらいで、俺を撒こうと小細工までする訳がない」

「俺はするんだよ。

 それよりも卑怯だぞ。

 俺は純粋な悪魔なんだから、あんた等みたいな規格外な攻め方をされたら無事じゃ済まない」


 アンドレアルフスの機嫌も悪くなってきているようだ。シェリルは話に入れない為、二人を観察するしかなかった。

 更には、高位の悪魔が不機嫌そうに応酬しているだけで空気が重い。間にいるシェリルは重くなっている空気を精一杯吸い込み、呼吸する事も意識した。


「俺もプロケルも、自分の持っている能力を最大限活かしているだけだ。

 卑怯でも何でもないだろう」

 感情を露わにし、饒舌なアンドロマリウスをシェリルは初めて見た。


 寡黙な悪魔だと思っていたが、本当はそこまで寡黙ではないのかもしれない。そう、余裕のないシェリルに思わせる程だった。

「そもそも、俺は召還されてこの世界に居る訳じゃないから必要以上に力を使うと、この世界に弾かれる。

 そうでなくても、一旦魔界に戻らないと消耗が激しくなる」


 ぎり、と美しい悪魔が歯軋りする音を立てた。その音を聞いたアンドロマリウスの目が細められる。

「――まさか、お前はそれを狙ったのか?」

「……さあな」

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