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贖う者  作者: 魚野れん
第三章 悪魔とお茶会
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エゴと愛

 悪魔や天使など、異界の中位以上の者とこの世界の人間はある意味上下関係がはっきりとしている。彼らが人間の言う事をきくのは、契約だからだ。

 それも、彼らの気が向いた時だけだ。それ以外では完全に人間よりも高位な存在だった。

 その気になれば、人間の事などどうとでもできる。


 シェリルがそう仕向けられて、何も考えられず、異変にも気が付かないで過ごしていた事に非はない。選択肢があるようでない状態にされていたのだ。

 ロネヴェの思う通りにシェリルが動かされている限り、シェリルがロネヴェに対して罪悪感や負い目を感じる事は無意味だった。

 だが、シェリル本人の気持ちとして、そう割り切れるわけではない。


 彼女は小さく苦笑いするかのように口角をあげ、アンドレアルフスへ分かっていると伝えた。


「ある日、頼まれたんだ。

 ロネヴェの奴、俺に頼み事ばかりで困った男だったよ」

 ロネヴェはアンドレアルフスに会うなり、すぐに頼み込んだという。

 同胞を殺したから、近い内に自分は死ぬだろう。後の事はアンドロマリウスに頼むから、二人を支えてくれ。そういう内容だった。


 もちろん、アンドレアルフスはそんな面倒な事はお断りと拒絶した。そして、以前話した覚悟はそのままなのかとアンドレアルフスが問えば、ロネヴェは是と答えた。


 アンドレアルフスが問いかけた覚悟とは、シェリルという人間の女の為に、己のエゴと愛で命を捨てるというものだった。

 アンドレアルフスは愛は好きだが、エゴは好きではない。

 エゴは想い人を幸せにはしない。それは、ある意味一方的な片想いだ。本人から相手へではない。相手から本人への片想いだ。


 相手の気持ちを慮らずして、エゴを通す事は本当の愛ではない。アンドレアルフスはそう考えている。だからロネヴェが長い間想い人と過ごしていく間に、その覚悟が変わると信じていた。

 だが、その覚悟は変わっていなかったのだ。アンドレアルフスは諦めの溜息と共に、その願いを承諾した。




「だから俺があんたを呼び出した理由は、嘘じゃない。

 これで分かっただろ?」

「……あなたもロネヴェも、変わり者ね」

 シェリルの反応に、アンドレアルフスは首を傾げた。アンドロマリウスの名を出さなかった彼女に違和感を抱いたのだろう。

「変わり者、そう言えばマリウスだって変わり者だ。

 真面目すぎて変わり者になっていると言うのが正しいか」


 シェリルの表情は分かりやすかった。その表情で、アンドレアルフスは二人の仲はあまり良くない事を察する。

 アンドロマリウスが、ロネヴェとの事情をシェリルに話していないのだろうと見当をつけた彼は、溜息を吐いた。単純に呆れたのだ。


 だがその溜息を勘違いしたのか、シェリルはアンドロマリウスについて話す。

「マリウスは、何かを企んでいるわ。

 私には理解できない行動ばっかりで、何を企んでいるのか分からないけれど」

 シェリルという女は、ロネヴェが思っていたよりもずっと彼の悪魔を愛していたようだ。


 ロネヴェは自分が死んで、アンドロマリウスがその代わりに彼女を支えようとすれば全て済むと考えている節があった。

 アンドロマリウスはロネヴェに対する情はあれど、シェリルに対してはそうではないのだろう。

 だからこそ、第三者としてシェリルを見守るような態度を取っている。形はどうであれ、代理の保護者にでもなったつもりなのだろう。


 しかし、シェリルはその態度が気に食わない。シェリルにとって、アンドロマリウスは恋人を殺した仇でしかないのだから。優しくされようが、奴隷のように付き従われようが、変わらない。そういう所だろう。

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