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贖う者  作者: 魚野れん
第十五章 エブロージャの召喚術士
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アホロテを追い、見つけたもの

 ひとまずシェリルとアンドロマリウスはミャクス達を召喚術士の塔へと匿う為に家へと戻ってきた。月明かりに照らされた塔は静まりかえった街の中で一際浮きだって、重厚感のある雰囲気を醸し出していた。

 相変わらず商館は煌びやかさを失わずに輝きを放っていたが、それが異質であるかのように感じられる。


 シェリルはこの街の不安感がそれらに反映されているように見えた。

 ミャクス達を匿った塔を術式で封じた二人は、再び砂漠へと移動した。砂漠は冷え込んでおり、シェリルはヒマトで体を覆ってきて正解だったと体を縮こまらせた。


「アホロテの動きがおかしいって、何が原因だと思う?」

「アホロテに何らかの理由がある事は確かだが、生命の危機を覚えているならば、彼らを追う何者かがいなければならない。

 アホロテを脅かす存在であるならば、人間にだって脅威だろう。

 噂になっていても不思議じゃないが、全くそういう話は聞かないな」


 アンドロマリウスは小さくうなり声を上げた。よほど不可解のようだ。シェリルはエブロージャが何かに巻き込まれようとしているのではないかと訝しむ。

 そうして思いついたのは一つだけであった。


「支配されているっていうのは?」


 ぽんっと口から発すれば、黒い悪魔は静かに首を横に振った。どことなくシェリルを馬鹿にするような雰囲気がある。

 だが、それ以上に何か思うところがあるのか、彼の意識の大部分はシェリルとは違う所に向いているかのようで、彼女の方を見てはいなかった。


「……あり得ない。

 それならば、俺にそれが関知できないのはおかしい」

「そう、よね」


 アンドロマリウスは陰謀などには人一番嗅覚が優れている。隠し事はできない。そう考えると、今回のアホロテの不思議な行動は自然なものであるという訳だ。

 自然現象であるならばアンドロマリウスの言う通り、アホロテ自体に何らかのそう行動を起こさざろえない事情があるに違いない。


 そこまで分かっていても、何も手がかりのない今、シェリルには全く思いつかないし、彼女以上に知識の豊富な悪魔でさえも原因が思い浮かばないのであった。


 アホロテの行動に何の心当たりもないまま、彼らが潜んでいると思われる場所まで行き着いた。白いヒマトを身につけていて目立ちそうなシェリルを、自らの漆黒で覆う。

 シェリルはその動きで自分達がアホロテの近くまで来ていた事を知る。彼女がアンドロマリウスを見上げれば、彼はゆっくりと足下を指さした。


 アホロテは地中でおとなしくしているらしい。こちらの足音を無視しているという事は、そういう事なのだろう。

「潜って様子を見よう」

 シェリルの頭に声が響いた。彼にぎゅっと捕まって密着する。それが合図となり、二人の身体は砂の中へゆっくりと沈んでいった。


 アンドロマリウスの翼が屋根となって、シェリルに降り注ぐはずの砂を避けていた。二人の足下には、数匹の蛇が砂をかいている。

 ゆっくりと沈んでいったのは彼らの働きによるものだったのだろう。

 いつの間にやってきていたのかシェリルには分からないが、それらが久々に見る彼の眷属である事は明らかだった。


 暫く沈んでいくと、開けた場所に出た。人工物のようにも見える巨大な空洞である。地下水脈の一つなのか、大きな地底湖が目の前に広がっていた。

 エブロージャに水はまだ豊富に存在しているという、確かな証拠であった。

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