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贖う者  作者: 魚野れん
第十五章 エブロージャの召喚術士
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悪魔に気に入られた召喚術士

 悪魔ロネヴェと出会ったシェリルは、一層知識を増やしていく。

 ロネヴェが与えたのは、召喚術士として街の皆に好かれるような対人能力だけではなかったのである。


 術式の研究に明け暮れていたシェリルに、どのようにしたらよりよい術式になるかを指摘したり、術式の完成に必要な知識を与える事もあった。

 それは、ロネヴェがシェリルを召喚術士として愛しているからに他ならない。


 召喚術士として必要と思う事に関しては、協力したのである。

 基本的に彼女の身の回りの世話は自分がし、人間の手が必要であればこっそりと商館の主であるアンドレアルフスの所から人間を借りてくる。


 とはいえ、必要以上に人型をとる存在の召喚を控えるように誘導するのは忘れない。己の立ち位置を守る為の最低限の操作をシェリルに行っていたのだった。


 当然ながらシェリルはそれに気が付く事なく、二人の暮らしは順調だった。たまに悪魔二人が同じ街にいるという事を脅威に思った存在からちょっかいは出されるが、それもアンドレアルフスの暗躍もあって大事になった事は一度もない。


 シェリルに気が付かれる事なく、それらを実行し続けていたのだ。現在のごたごたに毎回巻き込まれてしまうシェリルの状態からすれば、昔の方がとても手厚く守られているように感じるだろう。

 それはあながち間違いではない。


 だが、実際の所は難易度が上がっているだけである。単純に、シェリルに対する周囲の認識が変わったのだ。

 悪魔一人を虜にし、たまたま同じ街にもう一人悪魔がいるだけ。というのが、その頃のシェリルやこの街の評価であった。


 現在はといえば、シェリルの事を多様な表現ができる。

 悪魔一人を虜にして魔界の掟を破らせ破滅に導いた人間。その悪魔を倒した悪魔を封じ、契約を結びつけた策略家の召喚術士。

 更には、同じ街にいる悪魔を誑し込み、契約なしに侍らせている。といったような具合である。


 つまり、以前にも増してシェリルは様々な方面から悪い方向で評価されているのである。


 ただの召喚術士、から悪魔を引きつける策略家でありながら街の人間への奉仕を喜びとする召喚術士へとグレードアップしてしまったのだ。

 注目度の低かった昔と現在を比べるのは、短慮と言わざるを得ないだろう。


 とにかく、ロネヴェとアンドレアルフスに守られ、召喚術士としての技能と知識を磨き続けていったシェリルであるが、その日常は突然終わりを告げる。


 そう、ロネヴェがアンドロマリウスに倒されたのである。


 ロネヴェからすれば、予定の範疇であったが、シェリルにとってみれば青天の霹靂である。アンドロマリウスが現れるだろう事はシェリルもロネヴェから聞いていたが、死ぬ予定だとまでは聞いていなかった。

 大丈夫だ、心配はいらないと言われ続け、アンドロマリウスを撤退させたら日常へとまた戻れるのだと思わされていた。


 そんなロネヴェからの大きな裏切りを経て、シェリルは彼の企みに乗るようにしてアンドロマリウスを手に入れる事となる。

 ロネヴェからシェリルの面倒を見るように約束させられたアンドロマリウスは、どう考えても好感度が最悪であるシェリルと生きていかなければならなくなった。


 ある程度歩み寄れるようになるまで、だいぶ時間がかかった。元々独立心の強かったシェリルは、アンドロマリウスの存在に反発するように生きる気持ちを取り戻していく。

 その課程でアンドロマリウスは少しずつシェリルに受け入れられていったのである。


 シェリル本人は認めようとしないかもしれないが、現在のアンドロマリウスとの関係は極めて良好である。

 そのほとんどはアンドロマリウスの努力であった。

2018.11.3 誤字修正

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