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贖う者  作者: 魚野れん
第十五章 エブロージャの召喚術士
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シェリルという召喚術士

 この世界には能力の強弱はあれど、召喚術士と魔術師が存在している。

 召喚術士とは、異界に住む存在を喚び寄せてその能力を利用する人間の事であり、魔術師とはこの世界に存在する様々な因子を自在に操る人間の事である。


 術式を用いる点、己の力を術式に乗せる事で術式の展開を行う点などは両者とも似通った仕組みだが、大きく違う点もある。


 無の力が扱えるのは召喚術士だけである。無の力を扱えなければ、召喚した対象と契約を結ぶ為の代償が大きくなり、使役する難易度が格段に上がる。

 したがって、基本的にはまともな召喚を行う事ができるのは召喚術士だけとなる。


 魔術師は無の力を扱う事はできないが、その代わりに術式を省略できる。術式を省略する事の利点は即時に技を繰り出せる事だ。

 咄嗟に術を展開できるのは大きなアドバンテージである。術を即発できない召喚術士は常に「符」に頼らざる得ない。

 術式を描いた符を使い切ればそこで終わりである。


 このように両者にはできる事とできない事、向き不向きがあるわけだが、無の力を扱い、かつ術式の省略ができる人間はいまだかつて存在していないと言われている。

 当然の事だ。召喚術と魔術は根本の理論が違うのだから。


 魔力を循環させる事で事象を起こすのが召喚術士であり、己の魔力を消費させる事で事象を起こすのが魔術師である。そのように一般的には解釈されている。

 そう。これは一般論である。だから、エブロージャの召喚術士を見たら外の人間はこう言うだろう。


「――彼女は魔術師だ」と。




 シェリルが不在の時、もしくはどうしても出られない時以外、エブロージャの召喚術士は街の人間からの依頼を断る事はない。

 それは召喚術士という存在が少ないからであり、召喚術士は周囲の人間のよりよい生活の為に生きるべきだという格言を念頭に置いているからである。


 シェリルは古書に囲まれて幼少期を過ごした。というのも両親が営んでいる店が古書の専門店だったからだ。

 そこには魔術所やそれらの類、他にも様々な専門書が存在していた。


 生まれた時から色素の薄い彼女を両親は大切に育てた。あまり外には出さない代わりに専門書の渦へと放り込んだのである。

 シェリルが幼い頃から本へ興味を示していた事だけではなく、あまりにも周りと容姿の異なる彼女を心配した両親の配慮であった。


 シェリルは本への興味をより強くし、ありとあらゆる古書を漁って読み、知識を増やしていった。そうしている内に、自らの能力に気付いたのだ。

 それはたまたま何かを召喚してしまったのが始まりか、はたまた本に描かれた術式に手を添えた時に術式が光ったのが始まりか、さすがにシェリルも覚えてはいない大昔の事であった。


 それからは独学で簡単な精霊召喚を行い、少しずつ召喚した者から知識を受け取っていった。

 とうとう、自分の能力が安定したと自ら判断したシェリルは、街の人間に自分が召喚術士であると宣言した。


 当時、シェリルは五十になるかどうかという年齢であった。両親はなかなか成長しないシェリルを案じながら寿命を全うし、彼女は一人っきりになっていた。

 召喚術士と名乗ったシェリルは、街の要として様々な人間の悩みなどを解決し、街の人間は彼女の仕事に対して対価を支払った。


 また、彼らの期待に応えていく為、シェリルは術式の研究やあらゆる知識を増やす事にのめり込んでいく。

 そんな時に出会ったのが、悪魔ロネヴェであった。

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