表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
贖う者  作者: 魚野れん
第十四章 因縁の血族
207/347

悪魔と幻影の三者会議

 シェリルが悪魔二人を引き連れてエブロージャへと戻ってくるなり、見計らったかのようにヨハンが現れた。

 彼は誰が見ても怒っているとしか見えない表情でシェリルの帰還を喜んでみせる。


「お帰りなさい、シェリル様。

 大事なくお戻りいただけたようで、嬉しく思います。

 長旅でお疲れでしょう。後日改めてご事情を伺わせていただきます」


 表情はどうであれ、ヨハンはシェリルを力強く抱きしめてからしっかりと縦に頷き、去っていった。

 シェリルはアンドロマリウスをアンドレアルフスを交互に見て、それから笑った。

「おかえり、二人とも」

 その言葉に悪魔二人は静かに頷いたのだった。




 シェリルが眠りにつき、穏やかな寝息を立てている時、悪魔二人は幻影と話し込んでいた。


「幻影相手に相談とは、二人とも焼きでも回ったのかい?」

「アンドレからの写し身であればプロケルと直接話すのと大体同じだろうという考えからだ」

「幻影は、とりついた相手の意志を汲むのに悠長な事だね」


 プロケルの姿を燃した幻影は、ふふ、と笑って嬉しそうに表情を緩める。

 アンドレアルフスの方はそんな二人に口を出そうとはせず、ただ見つめているだけであった。


「今後の事について、大まかに相談したい。

 シェリルのここでの暮らしを守る為、俺達の立ち位置をどうしていくのが理想か、俺は決めかねている」

「いっそ、悪魔がうろついていない方が良いのかもねっていう話をしていたんだ」

「ふぅん……?」


 値踏みするかのような、重みのある視線がアンドロマリウスの全身を移動する。その姿は猫というよりはまるで蛇のようである。

 ひとしきりアンドロマリウスを見た後、アンドレアルフスを同じようにじっくりと眺めた。


 そしてアンドレアルフスへと語りかけるように口を開く。


「天使であり悪魔でもあるプロケルから言わせてもらおう。

 この世界の主たる神は全ての人間を愛し、導くようにと天使へ定めているが、実のところ神は“人間の理想の姿”に関して具体的には示していない。

 つまり、主は天使の自由意思に任せているわけだ」


 プロケルの幻影は優雅なしぐさで部屋の中を歩く。その後ろを追いかけるようにして小さな天使の幻影が必死に翼を動かしている。

 突然立ち止まると天使の方へ振り返り、舞台を模した氷の板を浮かばせる。もちろんこれも幻影である。その舞台に天使が降り立ちお辞儀した。


「言われた通りにしか動く事のできない個体は人間の目の前へと現れる回数は限られ、その他の個体は自由に活動する。主の言葉を自由に解釈し、主の言葉として行動する」


 舞台に突然シェリルを模した人間が現れる。天使は驚いた姿を見せ、それからシェリルの手を握った。


「これが召喚術を行う人間に嫌がられたりする原因の一つかな。思い込みの激しい個体は人間との会話が成立しなってしまうのさ」


 天使とシェリルの幻影は会話をするような動きを見せたが、天使が仰々しくシェリルを持ち上げ抱きしめる。

 小さなシェリルは慌てた様子で自らの衣をはためかせながら逃げるように姿を消した。


 シェリルに逃げられた天使は悲しむ動きを見せるかと思いきや、首を傾げて不思議そうにするだけだった。

 そんな天使の隣に黒衣の天使が現れる。


「悪魔の殲滅が役割の者や、人間を悪魔や禍事から守護する役割の者は、様々な誘惑が多い中、己を保たねばならない。

 誘惑あるいは神への信を失った者は堕天あるいは消滅の道を辿る。

 天使とは、大人であり赤子である。黒へ染まりやすく、また染まりにくいとも言える」


 最初にいた天使はどんどん翼が黒く染まり、美しい金糸のような髪はくすみ、闇色へと変化していった。

 その姿はどこかアンドロマリウスを彷彿とさるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ