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贖う者  作者: 魚野れん
第十四章 因縁の血族
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自分の空間と愛され力

 シェリルはアンドレアルフスの話を聞き終えると簡潔に自分の置かれていた状況を伝えた。

「ま、これも夢を見ているような状態だったと言われてしまえば納得いくんだけど」

「管理された部屋に軟禁、ねぇ」


 考え込むそぶりを見せるアンドレアルフスに、シェリルは心当たりがあるのだろうか、と首を傾げる。

 彼は少しだけ口を閉じ、それから改めてシェリルに視線を向けた。


「ある程度力を持つ者だけが、自分の空間ってやつを作ることが出来るのよ。

 もちろん、その空間の規模は作る者の力に依存するんだけどね――って、空間に関する知識をあげた時に教えなかったっけ?」

「自分の空間に関する項目はなかったわよ……」

「あら、ごめんなさいね」

 それからの説明はシェリルにとって、初めて知る事ばかりであった。


「あたしだって持ってるし、マリウスやロネヴェももちろん持っているはずよ。

 ロネヴェの空間は、多分ロネヴェの核に確認すれば見つけられると思う。

 マリウスの場合は、空間移動を禁止するあんたの術があるから解除しない限りは使えないわね」


 空間を歪ませる事によって作り上げるもので、その規模がとてつもなく大きくなれば、それが一つの世界となるのだという。

 つまり、とてつもなく大きく自分の空間を創り出せる存在が「神」と呼ばれるのだ。


「不思議に感じるかもしれないけど、感覚としては箱の中にまた箱があるのよ。

 その中に外側から入り込む存在がいたら無関心ではいられないでしょう?

 だから、箱の中に無許可で入り込む場合には負荷がかかる。あたしみたいに」


「……それで、この世界には私みたいな召喚術士がいる、と」

「そゆこと。

 で、あんたは多分魂だけをその空間に投げ込まれたんでしょうね」


 実のところ、シェリルはかなり危険な状態だったのではないか。いや、その前にアンドロマリウスが昔にかけてくれた術式はどうなったのだろうか。

 あれは、記憶が正しければ肉体から魂が離れないようにするものだったのではないか。


「多分、それは無理だと思う」

「どういう事よ?」


 シェリルは自分の胸元を開き、自分の魂を引き出そうとすれば現れるはずの術式を見るように言った。

 面倒そうにしているアンドレアルフスであったが、人差し指をくいっと曲げて何かを引っ張ろうとする素振りを見せる。

 その瞬間、一瞬ではあったがアンドロマリウスが施した術式が現れた。


「あら、あの子がこんな事してるの知らなかったわ。

 うぅん、この術式は破られてないのか。確かにこれじゃ無理ねぇ。

 って事は、」

「違う状態でその空間にいたって事だと思うの」

 アンドレアルフスは頷いた。シェリルは眉をひそめる。

「あの天使って、そんなに手ごわいの?」

「……正直に言えば、そこそこね。

 この世界の事を気にしないで戦うなら別だけど」


 あと、使った力の回復力が違うのよねぇ……とアンドレアルフスが小さく呟いた。シェリルは意外そうに声を上げる。


「え?」

「あら、知らないの?

 この世界に愛されてる天使は、消耗した力の回復速度が速いのよ。

 だから回復速度が遅いマリウスはその点、元々不利なの」


 何でもないように言うアンドレアルフスをシェリルは睨んだ。アンドレアルフスが悪い訳ではないし、言われなければ知りようのない知識でもある。

 これまでこの世界で、悪魔と契約した召喚術士と天使と契約した召喚術士が大きくぶつかり合った事はない。


 そして、戦争で使われるのは魔術師であり、召喚術士が使われた事はない。

 戦いという点に限定すると、召喚術で戦闘として使役する者に関連する知識は弱いのであった。


 どんな手段でシェリルを封じ込めたのかは分からないままであるが、このままアンドロマリウスがあの天使と戦い続けるには限界がある。一見、そうは見えないが、もう王手に手が伸びている状態に等しい。

 頭の中に、自分ができそうな事を羅列しようとした。思いつくのはそう多くはない。


「この世界に生まれた私は、天使よりもこの世界に愛されている?」

「二択で言えば、その通りよ」

「分かった」


 アンドレアルフスの答えを聞いて、シェリルはゆっくりと目を閉じた。そのまま背筋を伸ばし、胸元のケルガを再び開いた。

2018.11.17 誤字修正

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