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贖う者  作者: 魚野れん
第十一章 砂漠の殿下 ─殿下の策略─
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クリサントスの耳飾り

「本当に残念だったわね」

 シェリルはゆっくりと一歩ずつ足を進めた。その先には倒れ込んだクリサントスの姿がある。

「さっき投げた指輪だけど……」

 彼女の足下に、指輪に反応してクリサントスが投げた髪飾りが落ちている。それを手に取って確認してみれば、その髪飾りには力が残っておらず、ただの装飾物になっていた。


「衝撃を感じた途端に発動する仕組みだったの」

 クリサントスの腕を持ち上げ、彼の腕を飾りたてているいくつもの輪を外す。彼の腕輪はしゃらしゃらと金属音を立てながら、シェリルが持っている紐でまとめられていった。

 もちろん指輪を外すのも忘れない。

 

 全ての飾りを取り外し終わる前に、一度クリサントスの目が開いた。

「……なぜ拒む」

「私があなたのものじゃないからよ」

 ぱちんと軽い音と共にシェリルの指輪が落ちた。真っ二つに割れたのである。彼女は気にするそぶりも見せず、クリサントスをただ見つめた。


「わ、たし……は――」

「……はぁ」


 再び意識を失ったクリサントスに小さく溜息を吐き、シェリルは彼の耳飾りを外しにかかった。

 小さな宝石がいくつも連なったそれが、シェリルの指を輝かせる。彼女はその光を忌々しそうに見つめる。


 ただの宝石ではない。シェリルの指輪と同等、もしくはそれ以上に高度な術式が組み込まれているのだ。腕輪や他の装飾品にも術式が組み込まれた物は多くあった。

 それらの中でもひときわ優れた代物である。

 恐らくこれがシェリルの術式を弱めていた元凶だ。シェリルは彼から奪った布で耳飾りを丁寧に包み込んだ。


「残りは4つか……

 後は結界系ばかりだし」


 シェリルは自分の手を見て溜息を吐いた。どう考えても数が足りない。アンドロマリウスが戻ってくるのは夜明け後であろう。リリアンヌの覚悟に報いる為、シェリルも覚悟を決めたはずだった。

 だが、この間抜けな殿下に妥協してやるつもりはない。どうすれば、無事に切り抜けられるか。シェリルは自分の纏う布へと手をかけた。




「見晴らし良いだろ?」

「……そういう問題じゃない」

 悪魔二人は住み慣れた街へと戻ってきていた。扉の向こう側は、商館の屋上だったのである。背の高い建物である故に、ここならば突然何かが現れようとも見つかる事はない。


 この街から兵は引いているようである。その代わり、彼らは砂漠で待機していた。

 正確な数は分からないが、少ない人数ではない。この街を破壊するには十分であった。


「まずは宣戦布告だな」


 そう言うなりアンドレアルフスが屋上から飛び降りた。

 アンドロマリウスはすぐに翼を広げ、街の端まで羽ばたいていく。アンドレアルフスの方はそれを追いかけるように空を走った。

 彼の跡が小さな煌めきとして夜空に残る。アンドレアルフスは魔力の節約を止めたようだった。


 悪魔二人は街から出ると、そのまま空中に浮かんでいた。アンドレアルフスが手のひらに光球を作る。

 不自然に現れた光に、クリサントスの兵が気が付いた。

2018.11.17 一部修正

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