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贖う者  作者: 魚野れん
第十一章 砂漠の殿下 ─殿下の策略─
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長い待ち時間

身支度を整えた四人は城門の前へと立っている。門の両脇には兵士が。また、城壁の上にも見回りの兵士達が四人を見つめている。

 シェリルの隣にはアンドロマリウスではなく、赤を基調とした派手な色合いのアンドレアルフスが並んでいた。

 アンドロマリウスはシェリルの後ろ、リリアンヌはアンドレアルフスの後ろにそれぞれついている。


「エブロージャが召還術士、シェリルである」

「エブロージャの商館が主、アンドレアルフスである」


 シェリルの透き通るような声と、アンドレアルフスの艶のある声が響いた。一呼吸おいて、シェリルが口上を続ける。

「共に、カリスが皇子、クリサントス様よりご招待いただき参上した次第」

 シェリルの挨拶が終わると、少しも経たぬ内に城門が開いた。四人はそれぞれ顔を見合わせ一歩踏み出した。




 城門をくぐれば、執事の一人が案内に現れた。その後に続いて応接室へと移動する。鮮やかな色彩がこの城の特徴であるが、この部屋はまた一段と派手である。

 原色に近い色が組み合わさり、様々な模様を描いている。家具を暗めの色合いで統一しているからか、派手さはあるものの重厚な雰囲気を保っていた。


「……相変わらず派手ね」

 ソファーに沈み込んだシェリルがややうんざりとした様子で呟いた。アンドレアルフスがその言葉に頭を縦に振る。

 アンドロマリウスやリリアンヌはこの城に入るのは初めてである。二人は辺りを見回すだけだ。

「ま、何代にも渡って好みが変わんねぇってのは……すげぇよなぁ」

 この城を知る二人は、ただつまらなそうにクリサントスの登場を待っている。密室はすぐに解かれた。だが、それは執事が飲み物を持ってきたからだった。

 扉の開く音に背筋を伸ばした四人は、また密室へと戻った途端に脱力した。


「しばらくここに現れるつもりはないのでは?」

 リリアンヌがおもむろに切り出した。最初は物珍しげに辺りを見ていたリリアンヌであったが、さすがに飽きたようだ。

「……焦らす事によって自らの優位性を確保する、という考えもあるな」


「関係ないわよ。

 少し話をしたら帰るつもりだし」


 シェリルがきっぱりと言うと、アンドロマリウスは押し黙った。この召喚術士が惑う言葉など滅多にないのだろう。

 今この瞬間、突然クリサントスが現れて、何かをしでかしても動じないのかもしれない。

 アンドロマリウスにそう思わせる程、強い言い切り方である。押し切られたアンドロマリウスを、アンドレアルフスがくすりと笑う。それに気が付いたアンドロマリウスが、彼をじろりと睨んだ。だがそれは余計笑いを誘うだけであった。


「帰らせてくれっといーけどな」

 アンドレアルフスが不穏な一言を放り投げた。その言葉を拾ったシェリルの眉がつり上がる。

「……覚悟しとけよ。何すんか、分かんねぇ奴なんだろ?」

「何かあったらその時よ。

 全力でめちゃくちゃにしてやる」


 シェリルは本気のようである。アンドレアルフスは、苦笑して空を見つめた。

「何とかしてやっから、そんな顔すんなよ」

「私達が近くにいるんだもの、何とかなるわ」

 シェリルは返事をせず、耳元の飾りを弄る。シェリルがここまで自らを飾り立てる事はない。

 だが、これらはただの飾りではない。護符であり、術式を封じた魔石もある。城の中で符を堂々と持ち歩く訳にはいかない。

 だから敢えて飾り立てているのだ。


「……何か、気になるのか」

「そりゃ気になるわ。

 こんなに遠くまで来てしまったんだもの」

 シェリルの額にかかる宝石を掴み、アンドロマリウスが軽く口付けた。青白い光が霧散し、代わりに艶やかな紅い光が宿る。

「!?」

 シェリルは懐かしい力に目を見開いた。これはロネヴェの力である。


「……核の有効活用だ。

 これは絶対にお前を守る」

「どう、して……」


 シェリルの掠れた声を無視し、アンドロマリウスが続ける。

「お前は大丈夫だ。

 お前の大切なものも、大丈夫だ」

「…………」

 シェリルはただアンドロマリウスの言葉に小さく頷いた。

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