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贖う者  作者: 魚野れん
第十一章 砂漠の殿下 ─殿下の策略─
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戦闘準備

 カリスの門をくぐった四人は、城へとは向かわずに街中へと入っていった。全員傭兵の姿から元の姿へと着替えている。

 久々に普通の旅姿である。変装する必要がなくなったという理由が大きい。

 だまた、傭兵姿でこの街へ入れば、後々にややこしい事態になりかねない。それを防ぐ為でもある。


「華美にならない程度にしてぇよな」


 そう言うアンドレアルフスは、派手な色彩ばかりを手に取っている。それをわき目にリリアンヌが艶やかな濃い桃色のケルガを肌に合わせていた。

「薄い方が良いかな……でも濃い方が映えるわね」


 リリアンヌに緑系の薄いケルガをアンドレアルフスが渡す。彼女はそれを受け取って桃色と比べ始めた。

 シェリルの方は青色を探しているらしく、様々な青を並べている最中である。アンドロマリウスがどんどん青いケルガだけでなくクロマまで持ってきて、収拾がつかなくなりそうだったが、シェリルは何も言わなかった。


「……」


 シェリルは真剣な眼差しで布地を確認する。同じ色でも織りが違ったり、模様が描かれているものもあったりと種類が豊富だ。

 そしてその中には、ビーズが付けられた装飾的意味合いの高いクロマまである。ここから選ぶのだ。選択肢が多いほど厄介なはずである。

「マリウス……下げて」

「……」

 すっと現れたアンドロマリウスが、シェリルの示したケルガを回収する。元の場所に戻しに行ったのだろう。シェリルはそれを戻しに行く彼を確認する事すらせず、ひたすら生地を見つめていた。




「結局いろいろ買っちまったな」

 アンドレアルフスが満足そうな表情で言う。アンドロマリウスは溜息を吐くが、その隣にいるシェリルは笑っていた。

「でも収穫はあったんだから良いじゃない。

 私もこれで堂々とできるわ」

 シェリルの言葉にリリアンヌが笑う。


「いつでも堂々としてて問題ないと思うけど」

「これまで追いかけられてたんだから、そうはできなかったじゃない。

 だからそう思ったの!」


 目的地に辿り着いたのだから、着替えて支度を済ませれば城へと入る事ができる。そうなれば、もう意味の分からない噂に付きまとわれて狙われるという事はなくなるだろう。

 まだ城の中に入っていないとはいえ、シェリルは解放感を味わっていた。


 早速宿へと向かい、全員着替える。結局リリアンヌは濃い桃色を基調とした薄手のケルガに、淡い緑色のクロマを纏わせ、異国の花を思わせる姿に仕上がった。

 シェリルは複数の青を組み合わせた濃淡のある、海を思わせる姿をしている。


「リリアンヌ、これあげるわ」

「え?」


 シェリルがおもむろに見せたのは、足首に巻き付ける飾りであった。きらきらと様々な石が輝いている。その中には、ユーメネの市場で買ったルチルクオーツも入っている。

「お守り代わりよ。

 何かあった時に、あなたの身代わりになってくれるわ」

 シェリルはリリアンヌの右足首に巻き付けた。淡い色彩が、少しだけ可愛らしいさを演出する。


 リリアンヌがシェリルから一歩下がり、突然踊り出す。しなやかで滑らかな動きに合わせ、足首の飾りが音を立てる。妖艶な腰つきは見る者を惑わす悪魔のようだ。

 今度は、たん、たたんと足音に合わせて軽快な踊りに変わる。頻繁に上下する足元がきらきらと輝く。妖精のような可愛らしさが現れ、先程の妖艶な雰囲気は掻き消える。


「……素敵」

 シェリルが呟けば、気が付いたリリアンヌがくるりと一回転し、優雅にお辞儀した。

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