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贖う者  作者: 魚野れん
第十章 砂漠の殿下 ─カリスへの道─
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魔力搾取の術式

 サシャの二度目の誘いを断り、二人は部屋へと戻ってきた。魔力を彼女に渡した疲れは当然だが、それと同じくらい精神的にも疲れを感じているのだろう。二人ともどことなく生気がない。

 無言のままベッドの中へと潜る。どうすれば明日までにこの魔力の不足を補えるだろうかと考える事すら面倒になっているようだった。




 シェリルは朝早く目覚めた。何かが不安で寝付くのが遅くなった割に、普段よりも早く目が覚めたのだ。その、得体のしれない不安感のせいだろうか。

 彼女はその原因が何かと改めて考えたが、やはりこれだという心当たりはなかった。ふと、自分よりも早く眠ってしまったリリアンヌを見る。


 彼女はまだ眠っていた。シェリルは思わず苦笑を漏らす。シェリルの感じている“何か”など全く感じていないのだろう。

 よく眠っている彼女を後目に、シェリルは身支度を整え始めた。


 シェリルの身支度が終わる前にリリアンヌが目を覚ました。

「もしかして私、寝坊したっ?」

 がばりと起き上がった第一声がそれである。元気そのもののリリアンヌをシェリルは笑った。


「寝坊はしてないわ。

 それにしても寝付きも良かったし、そんなに眠かったの?」

「全然寝た記憶ないの。

 気が付いたらこれよ!」


 リリアンヌは慌ただしくがさごそと荷物を漁る。ああでもない、こうでもない、とブツクサ言いながら身支度をしていた。

 シェリルの方は、革鎧を身に付け、その上からクロマを巻いて、朝食に行くのに十分な格好となっている。朝食を済ませたら、ヒマトを纏うだけで出発できるようにしたのである。


 リリアンヌがこれから身に付けるであろう革鎧を投げ、それがシェリルの足下に転がった。瞬きをしてシェリルは革鎧を拾う。

 彼女はあっという間にケルガをしっかり纏い、荷物を持ってシェリルの方へと歩いていく。

 シェリルのすぐ側に荷物を置いたリリアンヌは、彼女から鎧を受け取って身に付けた。革紐でしっかりと固定し、何度か引っ張って具合を確かめる。

「ごめん、お待たせ」

「良いのよ」

 二人は頷くと荷物を持って扉を開ける。部屋を出ると、悪魔二人が待っていた。


「……おう」

「……」


 何となく疲れた様子の二人をシェリル達は首を傾げた。

「昨晩、呼び出しに応えたら魔力を持ってかれたんだ」

「大丈夫なの?」

「いや、むしろお前は大丈夫か?」

 アンドレアルフスの言葉にシェリルが聞けば、アンドロマリウスが逆に心配してくる。訳が分からず、シェリルは顔をしかめた。


「部屋にも魔力を奪う仕掛けが仕込んであったから、それを心配したんだろ」

「え? 部屋?」


 アンドロマリウスが空に指で術式を描く。その術式を見たシェリルの顔色が変わる。

「これ、魔力低い人とか関係なく作用するじゃない」

 頭を縦に振ってから、アンドレアルフスはサシャに教えてもらった朝食をとる時のおすすめの店へ向かって歩き出す。


「よく気付いたな。

 この術式は単純な作りになっていて、条件とかがないから魔力がなくても吸い取ろうとする。

 魔力の少ない奴が一番辛いだろうな」

「……だからリリがすぐ寝たのね」

「気が付いたらさっきだったからなぁー」

 リリアンヌがのんきに言う。


「あんたは鈍感で元気なのが取り柄だろうが」

 アンドレアルフスがリリアンヌを鼻で笑う。リリアンヌはそれを笑い飛ばして、「早く朝飯食おうよ」と先を行こうとした。


「ばかめ、行くのはそっちじゃねぇよ」

「ぐ……っ!」


 アンドレアルフスが勢いよくリリアンヌの腕を引っ張る。すぐに彼は手を離したが、結構な力がかかったのだろう。リリアンヌは肩をさすっていた。

「ほんと乱暴な男なんだから!」

「あんたみたいな女にゃこれで十分さ」

 二人のやり取りをシェリルはどこかほっとした気持ちで眺めるのだった。

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