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贖う者  作者: 魚野れん
第十章 砂漠の殿下 ─カリスへの道─
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二通りの道のり

 シェリル達は残るところ後少しであるカリフへの旅を、円滑に進める為の打ち合わせを始めた。いつまでも面倒な事になったと憂鬱な気分で愚痴っていても仕方ない。

 アンドロマリウスやアンドレアルフスに適わない相手などいないだろうが、だからといっていちいち追っ手と追いかけっこをしながら移動したい者もいない。


「仕事は請け負わずに傭兵姿でカリフまで行くのが楽そうだけど」

「まあ、移動だけしている傭兵も少なくはないからな」


 シェリルの言葉にアンドレアルフスが同意する。だが、リリアンヌは少し乗り気ではないようだ。

「空いているなら丁度良いって、違う行き先の仕事が舞い込んでくるかもしれないわ」

「それは普通に断れると思うが」

 アンドロマリウスに否定されたリリアンヌは、それでも心配そうにシェリルを見やった。


 アンドロマリウスの方は特には気にしていないようである。リリアンヌの視線にシェリルが頷いて見せれば、彼女はそれを受けてゆっくりと視線を戻した。

「王女という思いこみがあるから、それを使う手はない。

 人間から目の前にいるシェリルを守り抜く事は容易いが、面倒がない方が良い」

「俺達も人間みたいに戦わなきゃいけねぇしな」


 アンドレアルフスは、椅子の背にもたれて足を組む。対するアンドロマリウスは関心薄そうに窓の外を眺めていた。

「傭兵姿のままで移動するとして、どの街を通るか。ね……」

 シェリルが机へ広げた地図を指さした。そこは今シェリル達のいる街であった。


「ここから最短で、って考えると二通り考えられるわ。ブドウ栽培で有名なユラクスを通るか、色々な動物の畜産で有名なヤックシを通るか。

 どちらも距離は変わらないし、カリスに近いから地形も似たようなものだから、好きな方を選ぶのも手かもね」


 とん、とん、と二つの近くにある街をつついて説明する。アンドロマリウスがちらちらと地図の方を見ている。寄る街には興味があるようだ。意外にも現金な男である。


「マリウスはヤックシの方が気になるの?」

「……いや、ユラクスだ」


 シェリルがアンドロマリウスをじっと見つめると、目が泳いだ。どちらも捨てがたいらしい。シェリルは小さく笑みを漏らし、リリアンヌへと顔を向けた。

「私もユラクスが良いわ」

「俺は合わせるぞ」

 リリアンヌは迷いなくブドウの街を選び、アンドレアルフスはどちらでも構わないと言う。

 ユラクスと口にしたのは二人、残りの一人は任せるという事ならば決定したも同然である。


「じゃあ、ユラクスで決定ね」

「ほい」

「もう休まなきゃ」

「……」

 アンドロマリウスは相変わらず窓の向こうを覗いていたが、小さく頷いていた。シェリルはそれを確認すると、ベットへと体を横たえた。




 シェリルとリリアンヌの二人が眠る頃。アンドロマリウスとアンドレアルフス、二人の悪魔が動き出した。

 アンドロマリウスが窓の外を気にしていたのには訳がある。酒場で飲んでいた男の一人が、後を尾けてきていたのだ。恐らく念の為、情報収集をしておこうと考えての行動だろう。

 だが、そこから何かを見つけられても困る。芽を潰す為、二人は動き出したのだった。

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