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贖う者  作者: 魚野れん
プロローグ
1/347

同胞殺しの罪

「そろそろお前が来ると思ってたよ!」

 よう、久しぶり。と軽く挨拶をする赤髪の悪魔に、じろりと鋭い視線が送られる。


 その視線の持ち主は、黒翼の悪魔。翼と同じ漆黒の髪は長い。それが女性的に見せるかと言えば、そうではない。長い髪が雰囲気を重くし、威圧感を増す助けとなっているようであった。

「人間に執心するのまでは許せるが、同胞殺しはだめだ。

 それは分かっていただろう」


 ――魔界に棲む者、同じ住処とする者を殺すなかれ。――

 “名持ち”と言われる核を持つ悪魔は限定される。悪魔の持つ核を狙って同族殺しが流行った結果、魔界に棲む者の数が激減するという事態が起きた。

 同胞殺しを罪とさせる程に欲しがられていた核は、悪魔の能力を底上げし、なおかつ悪魔の貴族になれるという魅力的な物だ。例えば、赤い悪魔はロネヴェの核を持つが、元々は名もない悪魔だった。


 彼は珍しく自然に発生した悪魔だ。アンドロマリウスに拾われた後、ロネヴェの核に認められて現在に至る。名もない悪魔でさえ、核に認められた途端に貴族の位が手に入る。悪魔は力を望む。弱肉強食の世界であるがゆえに、負のスパイラルが起きたのだった。


 核というシステムは、いつの間にか発生していたものだ。どのような法則で名持ちになれるのか、未だにはっきりとはしていない。

 更に、同時に複数持つ事が可能である事も、負のスパイラルに拍車をかけた。名持ちも、核の争奪戦に積極的になっていたのだ。権力を既に持っている名持ちは、自らの力の増大を目的として争奪戦に参加した。


 魔界全体の維持を考えなければならない上位の悪魔は、自分の敵がほとんど居なくなっても気が付かず。使役する魔界の者らが見つかりにくくなって、ようやく絶滅の危機に気が付いたのだった。


 その対応策として定められたのが、先程の一文だ。このままでは絶滅かと心配される程減っていた魔界の住民であるが、この一文が定められたおかげで数が増え始めている。


 因みに同胞殺しの罰とは、死である。アンドロマリウスがわざわざ大軍を率いて地上へやって来たのは、同胞殺しをしたロネヴェを処罰する為であった。


 名持ちは同胞殺しが重罪となった為、今まで以上に価値のある存在になっていた。他の者へ対する影響力も、それだけ大きなものとなる。


 名持ちの悪魔が同胞殺しとは、かなりの問題だ。名持ちだからと放っておく訳にはいかない。


「シェリルの為なんだ。

 あいつを守る為にはこうするしかなかった。

 例え、お前がこうして尻拭いにやって来ると分かっててもな」

 後悔のない、真っ直ぐな視線を向けるロネヴェに、アンドロマリウスは溜息を吐いた。その様子に赤い悪魔は済まなそうに視線を下げた。

 アンドロマリウスにしても、ロネヴェにしても、これ以上話し合うのは無駄な事だ。結果は変わらない。二人の悪魔は示し合わせたかのように動き出した。

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