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頼み

 始めての動画投稿を終えた翌日の放課後、この日の私と女月の会話はもちろん、今日の晩ご飯のお話……


ではなく、昨日に投稿をしたダンス動画についての話である。


「そう言えば、あの後、私家に帰ってから投稿された動画を見たよ」


「もちろん、私も観たわ」


女月も私と同様に、家に帰ってから自分で投稿をした動画を観ていた。


「そうなんだ! それにしても、なんだか少しばかり感動するよね」


「そうよね。私達の撮影をしたダンス動画が、動画投稿サイトにアップされているという事に」


「動画投稿サイトにアップをされた、自分で撮影をした動画を観ているだけでも、まるで本当のアイドルになれた気分になるよね」


「うんうん、分かる。ほぼ毎日観ていたあの動画投稿サイトに、自分達も動画をアップをして、これからあの動画投稿サイトに投稿している常連さん達の仲間入りを果たすと思うとね」


そして、私も女月も共に、昨日に投稿をしたダンス動画の話で大いに盛り上がった。


「でも、動画の再生数は、初日だけだと3人ほどしかいなかったね」


「まぁ、初めての動画投稿だった訳だし、まだ有名でもなんでもないのだから、再生数に関しては仕方がないわよ」


「そうだよね」


 そんな中、私は昨日に投稿をしたダンス動画の画質の事について、盛り上がっている最中の女月に話を持ちかけた。


「そういえばさ、私達の動画って、他の人の動画に比べて、少し画質が悪くない?」


「それに関しては、スマホで撮影をしたのだから仕方がないわよ」


すると、女月は動画の画質が悪いのを、スマホのビデオカメラの画質のせいにした。


「確かに、スマホの場合だと、本物のビデオカメラなんかに比べると、画質は低いよね」


「そうよね。他の配信者のほとんどは、高いビデオカメラを使っているとかいう噂はあるし……」


「そう言えば、そんな話どこかの配信者が言っていたような……」


私は、動画を撮影する際に使うビデオカメラの値段を語っていた動画を思い出した。


「確か、安いので20万以上は使っているみたいだよ」


「本物のビデオカメラって、そんなに高いの!?」


「高いみたいだね。一般用でも5万以上はするみたいだし……」


「そんなにするんだね。一般用のビデオカメラでも」


「でも、それはまだホントに安い方だよ」


「かと言って、今の私達だと、本物のビデオカメラを買うお金もないし……」


確かに、女月の言う通り、高校生である私達に数万っもするモノなんて簡単に買う事は不可能である。


「そう言えば、あの動画投稿サイトって、再生数と動画チャンネル登録者の数に応じて、お金が入って来るシステムもあるし、いつかは本物の高いビデオカメラも買える日が来るかも知れないよ?」


「その前に、肝心な動画の画質が低かったら、動画そのもののクオリティーが低いと思って、動画チャンネル登録者なんて1人も来ないわよ」


「やっぱり、そんなものなのね」


当初は誰もが気軽に出来ると思っていた動画投稿サイトであったが、よくよく考えてみれば、そんな動画投稿サイトで有名になれる人は、ほんの一握りである事に。


更に言ってしまうと、そんな一握りの人達の使っているビデオカメラは、投稿された動画をみても分かる通り、明らかに高そうなビデオカメラである。


 そして、今の私達の投稿する動画は、一握りの有名人の様にはなれず、その他の一般の投稿者と同じ様に、ほとんど再生数がない動画を投稿し続けるしかないのかと思っていた矢先、1つの救済となる案を思いついた。


「そうだ!! 確か、この学校にはビデオカメラ等の撮影が趣味の桜森さんがいたよね?」


「桜森さんがどうしたの?」


「桜森さんに、私達の動画投稿を協力してもらったらいいんだよ!!」


私が閃いた救済の案は、別のクラスにいる動画撮影が趣味だと言われている桜森さんに、協力をしてもらい、私達の動画投稿を協力してもらおうという案であった。


「なるほど、桜森さんかぁ…… とりあえず、交渉してみない事には分からないわね」


「じゃあ、桜森さんがいる場所に行ってみよう!!」


「ところで麻子、桜森さんがいる場所なんて分かるの?」


「確か、図書室でよく出入りしているのを見かけるけど」


「じゃあ、図書室に行きましょ!!」


そして、私と女月は、桜森さんと交渉をする為に、図書室へと向かった。



 そして、午後の太陽の日照りを照らし少し開いた窓からは夕方前の清々しい風が入って来る図書室に入ってみると、私の予想通り、そこには桜森さんが1人で椅子に座って読書をしていた。


桜森さんを見かけた私は、読書に夢中になっている桜森さんには少し悪いが早速後ろから肩を叩き、話しかける事にした。


「あの、桜森さん。少しお話をしてもよろしいでしょうか?」


「あっ!! はいっ、ご用件とはなんでしょうか?」


読書中に突然背後から肩を叩かれた桜森さんは、突然のあまり声をかけた瞬間はビクッとして驚いていた。


彼女の名前は桜森紗美さくらもりさみという人であり、身長は私とあまり大差がなく、金髪のボブパーマの髪型をした、高貴なお嬢様風の人である。


「私達に協力をしてくれないでしょうか?」


「協力とは、何をでしょうか?」


私は、単刀直入に肝心の中身を言わなかった為、桜森さんはなんの事か分からず、疑問に思う表情をしてしまった。


「こらっ、麻子ったら、肝心の中身を言わないとダメでしょ!!」


「そうだった!!」


肝心の中身を言わずに森宮さんを困惑させてしまった事で、今度は女月が桜森さんの所にかけより、私に変わり、事情を説明しようとした。


「とりあえず、この動画を観て欲しいの?」


「この動画をですか? 別に構いませんわ」


そして、女月は桜森さんに、昨日のダンス動画を観てもらう為、スマホを見せ始めた。


「ダンスを踊っている動画ですわね」


「そうよ。この動画は昨日に私と麻子で撮影をした動画なの」


「そうなのですか、凄いですわね。ダンス動画を投稿していらっしゃるなんて」


「最も、このダンス動画を上げたのは、現在、私と麻子で動画投稿サイトを使ってのアイドル活動を始めた為なの」


「アイドル活動をですか!? 凄いじゃないですか!!」


女月から観せてもらっているダンスの動画を観ていた桜森さんは、私と女月が動画投稿サイトを使ってのアイドル活動をやっている事を知ると、感激をする様に驚いた。


 そして、ダンスの動画が終わると、女月はスマホを自分のポケットの中へと直した。


「それよりも、どうして私にその動画を観せてくれたのでしょうか?」


「実は、ここからが本題なのよ」


そして、動画をなぜ観せてくれたのか疑問に思っている桜森さんに対し、女月はここへとやって来た目的を語り始めた。


「さっきの動画を観てくれても分かる通り、画質が良くなかったでしょ?」


「確かに、言われてみますと、良い画質とは言えなかったですわね」


やっぱり、私達のダンス動画の画質は、よくなかったみたいだ。


「やっぱりそうよね。そこでお願いがあるの。桜森さん、私達の動画撮影に協力をしてくれないでしょうか?」


「私は何を協力したらいいの?」


「桜森さんは、確かビデオカメラの撮影が趣味でしたよね」


「えぇ、そうですけれども……」


女月の突然のお願いを聞いた桜森さんは、戸惑い困惑をした様子で聞いていた。


「その、趣味のビデオカメラで、私達のアイドル活動を撮影してほしいの!!」


「私からもお願いします!!」


そして、女月は恥ずかしそうに顔を赤くしながら、桜森さんに強くお願いをした。


その流れで、私も桜森さんに強くお願いをした。


「えぇ!! こんな私なんかで良いんですか!?」


もちろん、桜森さんは、更に驚く様に戸惑った様子となった。


「桜森さんしか頼れる人がいないんだよ!!」


「お願い、動画撮影をしてくれるだけで良いから!!」


戸惑う様子の桜森さんの事をお構いなしに、女月と私は先程と同様に強くお願いをした。


 そして、桜森さんはしばらく考えた後、口を開き喋り始めた。


「良いわよ。あなた達のアイドル活動に協力あげますわ」


その言葉は、動画投稿の撮影に協力をしてくれるという一言であった。


「ホントに!! ありがとう!!」


「やっぱり、声をかけてみるもんだね」


この言葉を聞いた途端、私と女月は、静かにしなければいけない図書室にも関わらず、飛び跳ねる様に喜んだ。


「余程嬉しそうね。でも、もちろんタダとは言わないわ」


しかし、それもつかの間。


桜森さんの次の一言を聞いた途端、私と女月の喜びはウソの様に納まった。


「という事は?」


「動画投稿を行う代わりに、私もあなた達が行う動画投稿のアイドル活動に参加させてもらえないでしょうか」


始めは、高いギャラを取られるのかと思っていたけど、桜森さんの考えはそうではなかった。


「桜森さんも一緒にやるの? 私達は大歓迎だよ!!」


「ありがとう。それじゃあ、わたくしも今日から動画投稿アイドルですわね」


まさかの、動画投稿アイドルのメンバーが1人増えました。

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