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急展開

 女月が再び【Dー$】のメンバーに復帰したていう喜びも束の間。


すぐにまた、新たな難題はやって来た。


女月が【Dー$】のメンバーに戻って来たと言って喜んでいた同じ日の放課後、1本の校内アナウンスが流れた。


そのアナウンスは、新学期の日に、私達に動画の投稿を止める様に言った沢谷先生からであった。


私の予想通り、沢谷先生からのアナウンスは来た。


今度は、前回の時とは違い、動画投稿サイトを利用したいという気持ちをぶつけてやる!!


そう思いながら、私は女月と一緒に、沢谷先生が待ち構える職員室に向かった。


「やぁ、紗美さんに詩鈴」


「坂畑さん、予想通り、先生は動画をチェックしていましたわね」


「うん、チェックしていたね。でも、今度は逃げないわ」


「それは、わたくしも同じですわ」


「今日は、先生に、私達が動画をやりたいという事を、きちんと伝えるんだから!!」


職員室に行くまでの廊下で、私は紗美と詩鈴に出会った。


そして、私は紗美と話をやりながら、沢谷先生が待っている職員室まで向かった。


 そして、職員室に着いた私は、まるで扉の向こう側に魔王が待ち構えているかの様な、ドキドキとハラハラな少し恐怖心な気持ちで、職員室のドアを開いた。


「しっ、失礼しま~す」


私は、恐る恐る職員室の中に入り始めると、その後に女月と紗美と詩鈴も付いてきた。


そして、私は心臓がバクバクとなる勢いの中、私達を呼び出した沢谷先生の前まで来た。


その沢谷先生の表情は、まるで鬼の表情の如く、誰が見ても分かる通り、凄く怒っていた。


本当であったら、今すぐにでも、沢谷先生の目の前から逃げ出したい。


でも……


ここで逃げ出すわけにはいかない!!


今日は、私達が【Dー$】として、動画投稿サイトでの活動を続けたいというのを伝えに来たんだから。


「あっ、あの~ 今回は、何のご用件でしょうか?」


「何のご用件かって、アノ事に決まってるでしょ!!」


「アノ事とは?」


「惚けるのも、いい加減にしなさい!!」


沢谷先生は、物凄い怒鳴り口調で、右手で机を叩いた。


流石に、知らない振りをして、話に入ったのは不味かった……


先程の、怒鳴った沢谷先生を見た詩鈴は、まるで猛獣に睨まれた小動物の様に怯えていた。


「貴女達、以前にこの場で言ったわよね。2度と動画投稿サイトに動画を投稿するのを止めなさいと。でも尾神さん以外は投稿を止めなかった。なぜ?」


明らかに沢谷先生は、私達【Dー$】の動画をチェックしていた。


「それは、動画を投稿する事が、今の私達のやるべき事だからです」


ついに、言ってしまった。


私が動画を投稿したい理由を。


とは言うものの、物凄く漠然とした理由だけど……


「そう…… 結局、動画配信だからと言って、許可も取らずに公共の場所等で、勝手にビデオカメラを回しては周囲の人達に迷惑をかけている少年達と同じ様な考えなのね」


「私達を、あんなのと一緒にしないで下さい!!」


「一緒にしないで下さいって、あのね、貴女達のやっている事は、自分達では違うと思っていても、大人の目から見たら、結局は同じ様なものなのよ」


「どういう風にですか!? 具体的に教えて下さいよ」


「そういう風に、自分の考えが反対された時に、そうやって反発をしたりするところとかよ」


「それだけで、一緒にしないで下さい!!」


「まっ、自分の考えが否定されれば、そうやってカッとなって、反発をしたくなる年頃だもんね~ カッとなっていればいいわよ」


なんだか、沢谷先生からバカにされている気分だった。


またしても、私はすぐに反論をする言葉が思い付かなかった。


これでは、以前の時と同じだ……


「結局、貴女達は、動画投稿サイトという、誰もが自由に自分が映っている動画を配信出来る事によって、まるで自分達が有名人スターにでもなった様な気分でいるのよ。だからこそ、止める様に言われても、止める事が出来ないのよ」


「確かに、先生の言うとおり、動画を投稿している時の私達は、本物のアイドルになった様な気分でいます。でも、ただ気分を味わっているだけでは、それは子供がやるごっこ遊びにしか過ぎません。私達は、誰もが自由に投稿出来る動画投稿サイトだからと言って、投稿には手は抜いたりしていません。その証拠に、私達は投稿を真剣に行っているのです」


そして、沢谷先生の言葉を聞いた私は、反論の如く、咄嗟に思いついた言葉を言った。


その言葉は、まさに今までの私達【D-$】が動画投稿で行ってきた意思そのものを言った。


沢谷先生だけではなく、誰が聞いても言い訳にしか聞こえない言葉でしかないが、今の私にとっては、これこそが先鋭に伝えるべき本当の言葉でしかなかった。


「坂畑さん…… 先生はね、貴女達に犯罪者の元となるような動画の投稿は止めてほしいの。先生がそこまで言っても言い訳しか出来ないというのは、本当に止める気がないという事ね」


「はい…… 私は、先生の言うとおり、動画投稿を止める気は…… ありません」


私は、沢谷先生に動画投稿を止めないという事を、ハッキリと伝えた。


「そう…… なら、もう貴女達にはなにもいう事はないわ。いくら忠告しても止めなかった以上、それ相当の処罰が下される事だけは覚悟していなさい。高校は中学の様に義務教育ではないのよ。これの意味は分かるわよね?」


「充分に分かっているつもりです」


「それでも、忠告を無視して動画を投稿したというのは、覚悟はあったのね」


「そのつもりです」


 私は、沢谷先生の喋る事に、ただはいとしか言わなかった。


それよりも、それ相当の処罰って、どんな処罰?


さっきの沢谷先生の言葉からして、明らかに退学!?


まさか……


仮に、退学処分はなくても、間違いなく謹慎処分だろな……


どっちにしろ、女月と紗美と詩鈴には、凄く悪い事をしたな。


元々、動画投稿サイトを使ってアイドル活動をやろうなんて言い出したのは、この私。


そして、私のワガママに付き合ってくれたのは、女月と紗美と詩鈴。


この3人は、今までに私のアイドル活動を充分に助けてくれた。


助けてくれた3人とは異なり、私だけが3人を不幸に落としていては、3人には悪い。


だからこそ、処罰を下されるのは、私だけでいい。


私が、女月と紗美と詩鈴の3人分の処罰も受ける!!


そう、私は強く心の中で思った。


それが、今の私に出来る、唯一の3人への助けとなると思ったからである。


 あと、最後に私達【D-$】が今まで頑張って来た事は全て無駄ではなかったという事を、先生、その他の人達にも知ってもらいたいと思った私は、ひとつの提案を思いついた。


「先生、最後に1つお願いがあります」


「最後とは大げさね。何かしら?」


「今度の文化祭で、私達のライブをやらせてください!!」


私は、勇気を出して沢谷先生に言った。


本当であれば、この場では言うものではないと知りつつも。


「わっ、わたしからも、おっ、お願いします!!」


「わたくしもからです。お願いします!!」


「私からもです。お願いします!!」


その咄嗟の願いは、私だけでなく、詩鈴を始め、紗美と女月も沢谷先生に頭を下げて、文化祭でのライブが出来る様にお願いをした。


「いやっ、いきなり何を言っているの? 普通に無理でしょ」


その、突然の行為には、さすがの沢谷先生も、驚いた表情をしていた。


「そこを何とかします。お願いします!!」


「だから、無理だって言ってるじゃないの!!」


「先生にも知って欲しいのです!! 私達が今までに頑張って来た事を!!」


そして、私は頭を下げ、沢谷先生に強くお願いをした。


「そこまで言うなら、やらせてやれば?」


すると、隣の席にいた別の先生から、文化祭でのライブの許可の声が聞こえた。


「なっ、何を、言っているんですか!?」


「だから、そのままだよ。そこまで言うなら、一度ぐらいはやらせてやってもいいと思うけどな」


「まぁ、確かに、一度ぐらいなら……」


「でしょ!! この一度のライブで、人気がないと分かれば、コイツ等も、きっと諦めがつくでしょ」


「人気がなければ、多分、諦めるでしょうね」


「でしょでしょ!! だからこそ、一度はやらせてやるべきですよ!!」


「少しぐらい現実を見せるのも、悪くはなさそうね……」


沢谷先生と会話をしている先生は、霧島先生と言う男性の先生である。


霧島先生は、少し若い年齢の先生であり、男性教師でありながら髪は耳が少し隠れ首元まである長さの黒髪であり、女子生徒からも人気が高いイケメン教師である。


 オバサンの沢谷先生とイケメンの霧島先生の会話を聞いていると、所々が私達には失礼な発言もあったが、どうやら文化祭でのライブは可能になったみたい。


あとは……


「先生、文化祭でのライブは可能でしょうか?」


「まぁ、今回は特別に文化祭でのライブを認めますわ」


「あっ、ありがとうございます」


私は、沢谷先生から文化祭でのライブの許可が下りた途端、沢谷先生に頭を下げ、お礼の一言を言った。


その瞬間、女月と紗美と詩鈴の表情は、喜んでいるというよりも、突然の出来事の為、凄く驚いた表情だった。


「先生、もう1つお願いがあります」


「今度は何?」


「文化祭のライブで、私達に人気があるという事を見せる為、ステージである体育館を満員にしてみます」


「だから、それがどうしたのよ?」


「もし、満員に出来た時は、私達の処罰は取り消してください」


「はっ、何言ってんの!?」


「その代り…… もし、体育館を満員に出来なかった時は…… 私達は、動画投稿を止めます。そして、処罰は、私1人が全員分を受けます」


私は、沢谷先生に言った。


文化祭でのライブで、ステージを満員にする事で、【D-$】メンバー全員が助かる道を。


その代り、もし満員にならなければ……


全責任は、私1人で負うと。


みんなを救うには、この方法しか思いつかなかった。


「ちょっと麻子、何言ってんのよ!!」


「そうですわ!!」


「かっ、考えを改めてください!!」


この案には、さすがに女月も紗美も詩鈴も反対をした。


「何言ってんだよ!! 体育館を満員にすればいいだけの話じゃない!!」


「そんな事が可能なの!?」


「やってみなと、分からないよ!! だから…… やる前から逃げていてはダメ!!」


私は、女月の方を見ながら、絶対に可能だと、強く言った。


 すると、どこからか、パンパンと手拍子が鳴る音がした。


その為、音がした方を見てみると、手を叩いていたのは、まさかの霧島先生であった。


「お見事!! 君の心の強さは見事なものだよ!! せっかくだしさ、この案を認めてあげなよ」


「そんな簡単に決めてもいいのですか?」


「いいんじゃないの? その方が面白そうだし……」


そして沢谷先生は、霧島先生と少しの間、話を始めた。


 そして……


「わかったわ。阪畑さんの要求を、今回は認めるわ」


「あっ、ありがとうございます」


「ただし、約束は絶対に守る事よ!!」


「分かってます。その為にも、全力で文化祭のライブをやります!!」


とりあえず、急な事であったが、私達【D-$】は、文化祭でのライブをやる事が決まった。


このライブが、私を含め【D-$】の全てがかかってる……


こればかりは、失敗は許されない。


私は、そう、強く心に思った。

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