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3人しかいない撮影

 今日は、日曜日。


この日は学校が休みである為、久々の動画投稿に使う動画の撮影を行う日である。


季節は既に9月の後半にもなっており、前回の夏祭りの時の動画の投稿から、実に1ヵ月近くも経過していた。


まだまだ、暑い日続くが、さすがに朝になると寒く感じる。


 そんな、9月後半となった日曜日、私達は数日前の夜に、集まって【D-$】は解散させないと話をした公園に来ていた。


この公園で、今日の撮影用の動画の撮影は行われる。


 動画の撮影は、いつも緊張はするが、今日の緊張は、また一味違う緊張であった。


同じ月の新学期の日に、先生から動画の投稿は止める様に言われていたせいで、今日の緊張は、いつもとは一味も二味も違っていた。


先制は、あの時、次に動画の投稿をしたら、それ相当の処罰を下すと言っていた……


それを知っていながらの投稿。


本来ならば、マスク等で顔を隠せばいいのかも知れないが、私達は普段はどこにでもいるごく普通の女子高生。


でも、この動画を撮影する時はアイドル。


厳密には、アイドルと言うよりは、アイドルごっこ。


だからと言って、手を抜く訳にはいかない。


ごっこでも、全力でやれば、きっと本物みたいになれる。はず?


そう思い、私は今日の動画の撮影も、いつもの様に顔を出しながら行う事にした。


 そして、動画の撮影を行う前に、私は紗美と詩鈴の方を見た。


「紗美さんに詩鈴、準備はいい?」


「はいっ、わたくしは大丈夫ですわ!!」


「わっ、わたしも…… だっ、大丈夫ですわ!!」


紗美と詩鈴も、私と同様に凄く緊張をしている様であったが、ヤル気は充分にあった。


「そう、ならよかった。メンバーは1人足りないけど、あの日の夜から今日までの間、ホント頑張ってくれたと思うよ」


「麻子さん、いきなりどうしたのですか?」


「いや、特に何って事はないのだけれども…… なんだか、こんな事が言いたくなった気分でね」


「そうなの。確かに、麻子さんの気持ちは、分からなくはないですわ」


「こっ、この数日は、ホントに、みんなで頑張ったのですから」


「そうだね。確かに、みんなで頑張ったわよね……」


 投稿用の動画を撮影する直前、私はふとあの日の夜から今まで頑張って来た出来事を振り返っていた。


【D-$】のメンバーの1人、女月がいない中での練習や企画は、ホント苦労の連続であった。


今までは、私は女月の案に関しては、バカに思ったりする事が何度もあった。


でも……


いざ女月がいなかったら、撮影用の動画の案がなかなかまとまらなかったというのがよく分かった。


確かに女月は、余計な一言も多かったけど、その分、【D-$】の事を誰よりも考えてくれていたというのが、女月がいなくなった今になってよく分かった。


その証拠に、私にダンスを教えてくれたり、初期のアイドル活動の案を色々考えてくれたのは、女月であった。


私は今まで、自分の実力で【D-$】が回っているとばかり思っていたけど、実は私1人の実力ではなく、女月や紗美や詩鈴と言った【D-$】のメンバー1人1人の力があり、初めて【D-$】というアイドルが出来ているという事が、改めて分かった。


そして今は、何よりも思う事がある。


それは、女月が再び【D-$】に戻って来る事である。


 私が、女月の事を考えていると、隣から紗美が話しかけに来た。


「それよりも麻子さん、今日の衣装の着心地はどうですか?」


「着やすくていいわ。でも、どうして今更そんな事を聞くのかしら?」


「今回の動画の撮影用に使う衣装の出来が、自分でも、未だに自信がないもので……」


「自信がない!? 紗美さんにしては珍しい発言だね」


「そう思うでしょう。実は、今までの動画の撮影用の衣装作りには、女月さんと話をしたりしてイメージを膨らませていたものでして」


「そうだったの」


以外にも紗美は、今までの動画の撮影用の衣装作りには、女月と話し合ったりして衣装を作っていた事を言った。


女月をキッカケに衣装の案が出来る……


なるほど、確かにこの言葉には間違いはないかも知れない。


その証拠こそが、夏休みの時の撮影である。


その時に着た衣装と言うのが、白のハイレグの様にキワドいレオタードであった。


そう言えば、あの衣装も、女月が着ていた競泳水着から案が思い浮かんだんだったっけ。


そんな【D-$】の衣装担当である紗美もまた、女月の力に頼っていた面もあったのだな。


ちなみに、今回の撮影用に使われる衣装は、女月の案がなかったからなのかは知らないが、今の時期とは異なり、夏らしく、清楚で可愛らしい白のワンピース衣装である。


 そんな感じで、紗美の衣装作りにも、女月の力が関わっていた事を知った後、今度は詩鈴が私に話しかけに来た。


「さっ、阪畑さん…… 今更になって、すっ、凄く緊張がしてきました……」


「どうしたの? 詩鈴」


「こっ、今回の動画の撮影用に歌う、うっ、歌の歌詞が、上手く、でっ、出来ているのかが、今になって心配してです」


「大丈夫よ、詩鈴。ちゃんと練習で何度も確認したじゃないの」


「たっ、確かにそうですけれども…… 今回は、いつもと違って、おっ、尾神さんの指摘がなかったもので、ホッ、ホントにこれで良いのか、心配ばかりですぅ~」


「そうなの。確かに、歌詞1つにしても、女月はいつも詩鈴に口出しをしていたわよね」


「はっ、はい…… そうなんです。言われている時はうるさいと思ったりもしていたけれども、じっ、実際には、尾神さんの指摘があって、【D-$】の歌の歌詞が出来上がっていたという事が、おっ、尾神さんがいなくなってからは、それがよく分かりました」


「なるほどね。女月も意外と役に立つのね。でも、大丈夫よ。心配しなくていい。この歌で絶対に大丈夫だから」


「ホッ、ホントですか!?」


「ホントよ。だから、自信を持ちましょ」


紗美だけでなく、詩鈴も女月の力に頼っていた面があった。


確かに詩鈴の言う通り、女月は少々うるさい面もある。


しかし、そんなうるさい面こそが、【D-$】の歌の歌詞作りに一役買っていた事は、詩鈴の話を聞いてよく分かった。


 そして、話も終わり、いよいよ動画に投稿する撮影を始める事に。


「そう言えば、先生がこれから投稿する動画を観ていたら、わたくし達は、一体どうなるのでしょうか?」


「そっ、それは…… わっ、分からないですわ……」


動画を撮影する直前、カメラをセットしに行く紗美は、学校の先生に見つかったらどうなるかという不安だらけであった。


「確かに分からないですわ。でも、先生に言われたからと言って、本当に逃げていては、夢は掴めませんわ」


「そっ、そうですよ!! だからこそ、今日、こうして動画を投稿するのではないですか!!」


しかし、紗美と詩鈴は、なにもマイナス思考ばかりではなく、プラスな前向きな思考も充分に持っていた。


まぁ、そんな思考を持っていなかったら、今頃、ここにはいないか……


 そんな事を思っている内に、紗美がセットしたカメラが回り始め、今回の投稿用の動画の撮影が始まった。


カメラが回り始め、まずは私の挨拶から始まった。


「みなさん、お久しぶりです。【D-$】の麻子です。投稿が遅くなってしまったのには、少し理由があります。それは、新学期の日、学校の先生から、動画の投稿は止める様にと言われました。その日以来、私達は先生の言う通り、動画の投稿を止めようか迷っている日々が続きました。でも、私達は動画の投稿を止めない事に決めました。この動画の投稿を始めた事により、共に協力をし合える仲間とも出会い、そして、何よりもこれからの将来に向かっての目標が少しずつではありますが、見えてきたからです。私達は、そんな夢と目標に向かう為、今回ばかりは先生の言う事を聞く訳には出来ないです。ごめんなさい、先生」


いつもとは異なり、少し長い挨拶となった。


「そして……」


「女月ちゃん!! この動画を観ていたら、【D-$】に戻ってきて!!」


その後、私と紗美と詩鈴は、今回の動画を観るかもしれない女月の為に、戻ってくるよう、メッセージを残した。

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