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バレた!?①

 短かったようで長かった夏休みは終わりを迎えた。


今年の夏休みは、高校生活の記念すべき1年目と言うだけでなく、友達達と始めた、動画投稿サイトでの疑似アイドル体験を兼ねた動画を投稿する活動を始めた年の夏休みであった。


今までに体験をしたことのない事だけに、始めは歌やダンスには四苦八苦であったが、やり続けていくうちに、次第にそんな歌やダンスにも慣れていった。


そのおかげで、最近は以前よりも身体の調子が良くなったような気がしてきた。


これも、やっぱり……


毎日、ダンスの練習をしていたおかげかな?


あと、それだけでなく、動画投稿サイトを始めた事により、高校での新しい友達も出来ました。


そして、今日からは2学期の新学期が始まる日である。


夏休みの間は、私たちの動画投稿活動は部活動でない為、休み中の学校の利用は出来なかったが、学校が始まった今日からは、また、校舎での練習が出来るようになる。


新学期の始まりは、それだけでなく、学校内で久々に友達とも会えるという楽しみもある。


「おっはっよ~!!」


「あぁ、麻子、おはよ~」


学校の正門で出会った女月に、私は元気よく挨拶をした。


別に久々に出会った訳でもなく、それどころか、夏休み中もほぼ毎日出会っていたが、なぜか、学校という場所、それも制服を着ているというシチュエーションでの久々の出会いに、なぜかテンションが上がってしまう。


「おっ、おはようございます……」


「やぁ、朝眼さんじゃない!! 麻子と一緒に来たんだ」


「はっ、はい…… そうです」


私は、新学期である今日も、詩鈴と一緒に学校まで来ていた。


理由は簡単、なぜなら、私は登校中の道で、詩鈴と出会う確率が凄く高いからである。


これは、やっぱり……


運命の糸で結ばれている証なのかしら!!


 私が、そう思い、少し恥ずかしそうに照れていると、向こう側から、紗見が歩いてきた。


「あらっ、みなさん、おはようございます」


「やぁ、桜森さん、おはよう」


もちろん、女月の時と同様に、学校で制服姿の紗見を見かけると、やっぱりテンションが上がってくる。


 そして、偶然にも、学校の正門前で【D-$】のメンバー全員が揃ったので、ここからは、とりあえず教室まで話をやりながら歩くことにした。


「ねぇ、夏祭りの時のカラオケ大会の動画見た?」


「そりゃあ、見るでしょ?」


「もちろん、わたくしは見ましたわ」


「わっ、わたしも見ましたわ」


夏祭りのカラオケ大会に出た時の動画は、女月も紗美も詩鈴も、もちろんの如く見ていた。


「やっぱり、みんな見ていたんだね」


「当たり前でしょ」


確かに、自分の出ている動画は気になりますよね。


「その動画の件なんだけどさ~ 再生回数、かなりあったよね」


「そういえば、今までの動画よりも多かったわね」


「でしょでしょ!! やっぱり、多くの人の前で歌ったのが、聞いているんだと思うよ!!」


「わたくしも、そう思いますわ。やっぱり、多くの人が実際に見ている前で歌ったことが、私たちの実力を上げる以上に、【D-$】というグループがいることの宣伝にも繋がりました事ですし」


「確かに、多くの人に私達が歌っているところを見てもらったおかげで、前回の動画を始め、今までの動画の再生回数を大きく上がっていたしね」


「あと、コッ、コメントも、始めの時よりも、たくさんついていましたね」


「そうだね。やっぱり、人が多く集まる夏祭りのカラオケ大会に出場した事は間違っていなかったんだね」


「たっ、確かにそうかもです。始めは、凄く緊張をしましたけれども、実際にやってみると、すっ、凄く楽しいです」


「じゃあ、これからもまた、いっぱい人が見ているとこで、私達【D-$】の動画を撮ろうよ!! そして、私たちの活躍をもっともっともぉ~っと、見てもらおうよ!!」


そう言いながら、私は詩鈴の背後から、抱き着く様に飛びついた。


「キッ、キャア!?」


もちろん、突然背後から抱き着かれた詩鈴は、驚きのあまり、高い声を上げた。


そんな感じで、私達は、新学期の学校を歩いていた。


今の私は、今後も順調よく動画投稿活動が上手く行くとばかり思い、明るい未来の事しか考えていなかった。


そう、このメンバーで、今後も何一つ変わることなく、この様に友達をお喋りをしたり、動画投稿の為に歌ったり踊ったりと、楽しい青春の毎日が続くと思っていた。



 そう思って浮かれていた矢先、新学期が終わった直後、突然の校内放送で、私達【D-$】の4人のメンバーが、それぞれ職員室に呼ばれた。


「なんか、先生に呼ばれちゃったね?」


「なんなんでしょうね?」


「さぁ、わたくし達は、何か悪い事などした覚えはないし」


「もっ、もしかしたら、宿題の件かも、知れないですよ」


その為、私達はどんな理由で呼ばれたのか気になりながら、職員室に行くことにした。


「先生、何の用ですか?」


この時の私は、詩鈴同様、せいぜい、夏休みの宿題の件だと思っていた。


宿題に関しては、全部やりましたよ!!


「あなた達4人に、聞きたいことがあるのだけれども……」


「何でしょうか? 先生?」


先生は、少し固く重そうな表情で、私達の方を見ていた。


この少し固く重そうな表情をしながら私達を見ている先生は、私と女月のクラスの担任の先生であり、名前は沢谷先生。


セミロングのパーマが当たった黒髪でメガネをかけた、中年のオバサン先生である。


そして、私達は少しばかり、緊張をした様子で担任の沢谷先生の前に立っていた。


「パソコンの某動画投稿サイトを見ていたのだけれども……」


そんな固く重そうな表情をした沢谷先生は、動画投稿サイトの件で話を始めた。


どうやら、私達が動画投稿サイトにアップをしていた動画を見ていたようだ。


「その動画がどうしたのでしょうか?」


「その動画投稿サイトに、あなた達4人に似た人がいたのよ」


もしかして、バレた!?


その瞬間、私の全身が冷える様に、冷や汗が流れた。


別に、クーラーが効いている職員室のせいなんかじゃない!!


明らかに、ヤバいという理由である。


でも……


実際に、学校の校則には、動画投稿サイトを利用してはいけないという校則は、書かれていない。


じゃあ、バレたら、一体どうなるの?


先生に怒られるの?


それとも?


私は、その件の事が少し気になった。


「それは、先生の気のせいだと思います」


「そうかしら? 尾神さん」


「はっ、はい…… そうですよ」


「そう…… 人違いね……」


そんな中、女月が冷や汗をかきながら、沢谷先生に人違いである事を言った。


本当であれば、ここで他人のフリをしてやり過ごそうと思うところであるのだが、この時の私は、私達が動画投稿サイトに動画をアップしていると言ったらどうなるか、その結果が気になっていた。


「にしても、どう見ても、あなた達に似ているのよね~ 本当に人違いかしら?」


「ほっ、本当に、ひっ、人違いですよ。先生!!」


「そうですわ。尾神さんも朝芽さんもそう言っているのですし……」


そして、私達の顔をジロジロと見ながら疑う沢谷先生に対し、詩鈴と紗美もまた、他人のフリをして誤魔化そうとしていた。


「先生」


「なんなの、坂畑さん?」


「先生の言っている動画って、どの動画の事なんですか?」


とりあえず私は、沢谷先生が本当に【D-$】の動画の事を言っているのか、その確認を取ってみた。


仮に、バレたとしても、軽く注意を受ける程度だろうし、動画投稿サイトの利用禁止にはならないと思う。


いっそのこと、正直に学校側に動画投稿サイトに動画を投稿していると言った方が、何かと都合が良いかも知れない。


その方が、学校を使った動画投稿や練習もやらせてくれるかも知れない。


その時の私は、自分でそう勝手に判断をした。


「確か、歌って踊ったりしている感じの動画だったかしら? あとは、レオタード着用や夏祭りのカラオケ大会で歌っている動画もあったわね……」


それは完全に私達だ!!


沢谷先生は、完全に私達【D-$】の動画を観ていた!!


本当であれば、私も女月や紗美や詩鈴の様に、他人のフリをして誤魔化したいのだが……


この時の私は、何を思ったのか、担任の沢谷先生に真実を言ってしまった。


「あぁ、先生もあの動画を観ていたのですか?」


「あなた達も、あの動画を観た事があるの!?」


「はいっ、観ているというよりも、あの動画は、私達が投稿しているんですよ!!」


私は、満遍の笑顔を浮かべながら、沢谷先生に私達が動画を投稿しているという事を言ってしまった。


どうせ、軽く注意を受ける程度だろうと、甘い気持ちであった為、私は自分の勝手な判断で、女月と紗美と詩鈴とは異なる選択をした。


しかし、その選択は、後に時間を巻き戻せるのあれば完全に巻き戻してリセットをしたいくらいの出来事であったという事を、この時の私はまだ知らなかった。

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