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マンツーマンで練習①

 楽しかったカラオケが終わり、明日からわたしも加わっての練習が始まるのを前にして、楽しそうに話をしながら歩いていた時に、その出来事は起こった。


「ねぇ、女月ちゃん、朝芽さんに言いたい事があるんでしょ?」


「確かにあったけど、いざとなると、やっぱり緊張するわね……」


カラオケが終わり、帰り道の時、阪畑さんが尾神さんの背中を押す様に、何かを言わせようとしていた。


いったいなんなんだろう?


「ほらっ、早く言うんだよ」


「わっ、わかってるわよ……」


再度、阪畑さんからしつこく言われた尾神さんは、緊張をした様子で、わたしに話しかけた。


「朝芽さん、お願いがあるの……」


「はい? 何なのでしょうか?」


「朝芽さんの歌の上手いのをお願いして、私に、うっ、歌を教えて欲しいの」


尾神さんの頼みとは、わたしに歌を教わりたいという事であった。


正直、わたしは尾神さんの事を、少々恐いと思っていた為、断りたいという気持であった。


それ以上に、このわたしに、指導なんて務まるとは、とても思えなかったからである。


「朝芽さん、私からもお願い。女月ちゃんの下手な歌声を、なんとかしてほしいの」


「わたくしからも、お願いしますわ」


尾神さんのお願いは、阪畑さんと桜森さんからも頼まれた。


さすがに3人同時から、同じ事を頼まれてしまったわたしは、安易に断れる訳もなかった。


「そっ、そうですね…… なんとかやってみますわ」


「ホッ、ホントにぃ~ あっ、ありがとう!!」


わたしが、尾神さんの歌の指導を行う事を認めると、それを聞いた尾神さんは、物凄く喜び、わたしの両手を握り、握手をしてきた。


「よかったじゃない。女月ちゃん」


「そうですわね。これできっと、歌が上手くなるわよ」


その様子を、阪畑さんと桜森さんは、ニコッと笑いながら見ていた。


しかし、それはわたしにとっては、大変な出来事の始まりであった。



 そして、翌日……


この日からは、わたしが加わっての本格的な練習が始まり、阪畑さん達は、とても嬉しそうにしていた。


「今日から、朝芽さんが加わっての練習だね」


「そうですわね」


「それに、あと半月で夏休みなんだから、それまでに、一気に動画投稿アイドルのレベルを色々と高めちゃおうよ!!」


「そうね。夏休みが始まるまでの間に、どれだけ練習が出来るかが勝負ですからね」


いつも練習をしている場所である、校庭の隅にいた阪畑さんと桜森さんは、夏休みが始まるまでの練習に対する意気込みを語っていた。


それは、まるで運動部にいる、部活動生の様な感じであった。


「確かに、夏休みが始まるまでに、どれだけ多くの練習が出来るかが、勝負ね」


「女月ちゃんも、確かにそう思うでしょ?」


「まぁ、そう思うわよね」


「でしょでしょ!!」


「だからこそ、この炎天下の下を、日焼けするまで、体力作りの練習をやるわよ!!」


そんな中、尾神さんは張りきった様子で、体力作りの練習に取り掛かろうとした。


「って!! なんで、女月ちゃんは言うもそうなるの?」


「そうなるというのは?」


「だから、なんで、体力作りの練習がメインになるの!!」


尾神さんの意気込みを聞いた阪畑さんは、そんな尾神さんに対し、ツッコミを入れていた。


「だって、ダンスをやるのには、体力作りがいるじゃないの?」


「まぁ、そうだけどさ…… 女月ちゃんは、いつも体力作りばかりだよ」


「体力作りは、基本中の基本よ!!」


そんな尾神さんもまた、阪畑さんに対し、言い訳を行っていた。


「女月ちゃんさぁ…… そんな事言うけど、昨日、朝芽さんから歌を教わりたいって言っていたじゃない」


「そう言えば、私、そんな事を言ったわね」


「だったらさ、女月ちゃんの今日の練習は、朝芽さんに歌を教わる練習をしたら」


あぁ、そう言えば、昨日に尾神さんに尾他を教える約束をしていたんだった……


「それも、そうね。せっかく朝芽さんがいる事だし、今日は、次の投稿に向けての、歌の指導をやってもらおうかしら」


「それが良いと思うよ!!」


「わたくしもですわ」


尾神さんが、わたしに歌の指導をやってもらおうとした事に対し、それを聞いていた阪畑さんと桜森さんは、2人そろって賛成をしていた。


「というワケで、朝芽さん、今日は私に歌の指導をしてくれる?」


「はっ、はい…… このわたしに、上手く指導は出来るかどうか分からないけど……」


「大丈夫だよ。朝芽さんなら、きっと出来る。大丈夫だって!!」


阪畑さんが自信を持って、わたしに尾神さんへの歌の指導は上手く出来ると言って来た。


「とっ、とりあえず…… 出来る限りの事はやってみますわ!!」


「いいよ、その調子!!」


そして、わたしは、少し自信を持って言うと、それを聞いた阪畑さんは、わたしを応援するかの様に声をかけた。


 こうして、阪畑さんと桜森さんが見守る中、わたしは尾神さんへの歌の指導が始まった。


「そっ、それじゃあ、尾神さん、いっ、今から歌の指導を始めますね……」


「はいっ、お願いしますね。朝芽先生!!」


「せっ、先生!?」


「そうよ。先生よ」


「どっ、どうしてですか?」


「どうしてもこうも、私に教えてくれるんだから、先生じゃないの」


突然、先生と言われたわたしは、一瞬、凄く驚いた。


今まで言われた事のない言葉を言われたわたしは、凄く戸惑ったのかも知れない。


「たっ、確かに先生ですよね…… 先生と言えるよう、頑張って見せるわ!!」


わたしは、緊張をした様子で、尾神さんに言った。


「よっ、その調子だよ、朝芽先生!!」


「朝芽先生、頑張ってください!!」


そんな中、地面に座ってわたしと尾神さんの様子を見ていた、阪畑さんと桜森さんが、面白がる様にわたしの事を先生と言って来た。


そのせいでわたしは、またしても緊張をしてしまった。


 そんな中で、歌の指導は始まった。


「さっ、朝芽先生!! まずは何をしたらいいのでしょうか?」


わたしに、張り切った様子で、目をキラキラと輝かせながら、尾神さんは、わたしの指導に期待をしていた。


「まっ、まずは…… 声を高く出してみる事からやってみましょ」


「声を高く出す?」


「そっ、そうですわ…… こっ、こんな感じに……」


そう言いながら、わたしは手本として、高い声を出してみた。


「なるほど、この様に、透き通った感じで声を出していけばいいんだね」


「そっ、そうですわ……」


尾神さんが期待をする中、わたしは、高い声を出し終えた後、とりあえず返事をしておいた。


「じゃあ、次やってみるわね」


そう言いながら、尾神さんは、先程のわたしの様に、高い声を真似して出し始めた。


しかし、尾神さんがわたしの様に高い声を出してみたものの、ただ大きな声を出していただけであった。


「おっ、尾神さん…… ただ、声を大きく出すだけではダメですわ」


「えっ? ダメなの」


どうやら、尾神さんは、普通に大きな声を出せば良い物だと思っていた様である。


「ダッ、ダメよ…… 歌を出す時の声は、地声ではなく、透き通るような裏声で出さないと、綺麗な声は出ないの」


「そうなの?」


「そうですわ。もう一度、やってみて」


「わっ、わかったわ……」


そう言って、尾神さんは、もう一度、声を高く出し始めた。


とりあえず、練習を始めてみたのだが、本当にこの様な練習法で合っているのか、わたしは逆に不安でした。


それにも関わらず、尾神さんは、歌が上手くなる為に、歌の練習を頑張っていた。

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