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作戦会議

 この日の登校は、朝芽さんと一緒に話をやりながら、登校をした。


そして、そんな登校時間も終わり、私は今、教室前へと来ていた。


「おっはよ~」


「やぁ、おはよ~」


「おはようございます」


私が元気よく挨拶をやりながら教室に入って行くと、この日もまた、教室内では女月と紗美が話をしていた。


「やあ、2人で何を話していたの?」


「特になんてことはないのだけれども……」


「尾神さんの歌の件はどうしましょうかと思いまして?」


女月と紗美は、この日の朝もまた、数日前と同様に歌の件で心配をしていた。


「なんだ、その事か?」


「その事って、何よ!! 私は凄く心配をしているんだから」


「だから、その件はもう大丈夫じゃない!!」


「何が大丈夫なのよ。全然大丈夫じゃないわ」


確かに現状では、全然大丈夫ではない。


でも、この時の私には、歌の件に関しては、既に打開策を見つけていた。


その打開策と言うのが、朝の登校中に一緒に話をやりながら登校をした、朝芽さんを私達のアイドルカツ活動のメンバーに入れればいいという事である。


「だから、数日前に歌が上手い人で話をしていた、朝芽さんを私達のアイドル活動のメンバーに入れたらいいんだよ」


「なるほど、それは良いアイデアですね。歌が上手い朝芽さんがわたくし達の仲間に入ってくれれば、物凄い戦力になりますわ」


「やっぱり、紗美さんもそう思うでしょ?」


「思いますわ。朝芽さんが仲間になっていただけるのであれば、わたくしは喜んで賛成をしますわ」


紗美は、喜んだ様子で、朝芽さんを仲間に入れる事に賛成をした。


 しかし、女月の方はそうではないみたいだった。


「私は、どちらかと言うと、朝芽さんを仲間に入れるのには反対よ」


「えぇ!! どうしてだよ!? 朝芽さんが私達の仲間になってくれれば、女月ちゃんの歌の指導だってやってくれるし、何よりも、朝芽さんはなによりも、歌が物凄く上手いんだよ」


「それでも反対よ。初めは私も歌の指導に来てくれるのであれば、喜んで賛成をしたけど、あの図書部のクソ女のせいで、考えが変わったの」


図書部のクソ女!?


あぁ、あの山田の事か……


「確かに、山田は口が悪くてムカつくヤツだったけど、それもこれも全て、山田の友達である朝芽さんの事を心配して言った事だったんだよ」


「仮にそうであっても、あれだけ私達のやって来た事をバカにした人を、簡単に許せるの!? 私は許せないわ」


確かに、女月の言う通り、昨日の山田の発言に関しては、そう簡単には許せないけど……


「でも…… それは山田さんであって、朝芽さんは関係ないじゃないの!! 朝芽さんは悪くないじゃないの」


「それでも私は嫌なの。あの山田の友達って時点でね」


「ありゃ……」


女月が、朝芽さんをアイドル活動の仲間に入れたくない最大の理由が、朝芽さんがムカつく山田の親友であると言う理由であった為、私は、すぐに次の言葉が思いつかなかった。


 そんな感じで、私が女月に言う言葉を考えていると、紗美が女月に対し話しかけた。


「尾神さん、そうわがまま言ってはダメよ。確かに山田さんの発言は失礼極まりない事は確かですけれども、あの発言は全て、山田さんの友達である朝芽さんの事を思って言った事なのですよ」


「桜森さんまで麻子と同じ意見に周るつもり? 仮に山田の言った事がホントだったとしても、アイツは私達以上に動画投稿者全員をバカにしたのよ。そんなのって許せるの」


確かに、昨日の山田の発言は、私達をバカにするのと同様に、動画投稿サイトそのものをバカにしていたのは間違いはない。


でも、ニュースで取り上げられている動画投稿サイトに関する情報を観てみると、確かに山田の様に動画投稿サイトになじみのない人達だと、悪い印象しか与えない。


それぐらい、ニュースには悪い面ばかりが強調されて報道されているせいで、世間では動画投稿サイトに関しては良い印象は持っていないという事。


「確かに、山田さんの言った事には物凄く腹立たしく思いますわ。それだからこそ、わたくしは、山田さんにも考えを改めてほしいの」


「どういう風にさ」


「動画横行サイトは、悪い事ばかりではなく、良い事もあるのだと知ってもらうのですわ」


なるほど、その手があったか!


「でもさ、わざわざそんな事をする必要はないと思うわ」


「どうしてですか?」


「だってさ、現に動画投稿サイトを悪いサイトだと認識しているのに、それを無理矢理考えを改めさせるような事をする必要もないと言いたいの」


どうやら、女月は紗美の考えには反対の様である。


「それに、アイツにとっては動画投稿サイトは悪いサイトだと思っているんだし、そのままにしておくのが一番だよ。あんなのはいくらやっても、考えは変わらない頑固者よ」


「それはやってみないと分からないですわ。そうでしょ、阪畑さん」


「えぇ!? まぁ、やってみないと分からないと思うけど……」


突然、質問をされて、マジでビビった……


「まぁ、そんな無駄な事は2人で勝手にやっていたらいいと思うわ。私は、あの山田が動画投稿サイトに対して、考えを改める様なヤツではないと知っているから」


「確かに、難しそうですけれども、なんとかして、山田さんにも動画投稿サイトの良い面をアピールして、朝芽さんをわたくし達のアイドル活動のメンバーに入ってもいいという事を認めてもらいましょ!!」


「なるほど、あの頑固な山田を認めさせて、朝芽さんを仲間に入れるという作戦ですね。これは面白そう。やる価値はありそうだね」


そして、女月が反対をする中、私と紗美は、動画投稿サイトに対して悪い印象を持っている山田を認めさせ、その友達の朝芽さんを仲間に入れる作戦を思いついた。



 その後、休憩時間にもう一度、紗美が私と女月のいる教室に来て、『山田も納得する動画』について考え出した。


「ところでさ~ あの山田さんを納得させるには、どんな動画をススメたら良いと思う?」


「ん~ やっぱり、『レンレ~』の動画を見せるべきだと思うの」


「なるほど、動画投稿サイトのトップの人の動画を観る事によって、良い動画投稿もあるという事を知っていただく作戦ですね」


「まぁ、そんな感じかな?」


休憩時間中、私と紗美はあまり乗り気でない女月と一緒に、『山田も納得する動画』を考える作戦会議を開いていた。


「動画投稿サイトに悪い印象を与えている人に『レンレ~』は、よくないと思うわ」


「えぇ!! どうしてだよ。『レンレ~』の動画は人気だよ?」


「でも、その人気って、主に子供に対してでしょ。それに『レンレ~』の動画のコメントなんて、暴言だらけのバカみたいなコメントばかりじゃないの。そんなコメントのある動画を山田なんかに見せたら、アイツは余計に動画投稿サイトを嫌いになるわ」


「そうだね……」


レンレ~の動画を見せるのは良い作戦だと思っていたけど、どうやら逆効果になってしまうみたいだね。


 その直後、私は朝の登校中に朝芽さんと、チャットの連絡先を交換していたのを思い出した。


「じゃあ、私達が実際に練習しているところを見せるのってのはどうかな?」


「そう言うけどさ、麻子はあの山田を呼び出せるの?」


「実は私、朝芽さんとチャットの交換をしたんだ」


「えぇ、そうなの。てか、いつの間に!?」


「とりあえず、凄いですわ。これなら、山田さんも呼び出せますね」


「うん。あと、ついでに、今日の放課後の練習に朝芽さんに練習を見に来る様に声をかけておいたんだ」


「じゃあ、今日の放課後は、朝芽さんが私達の練習を見に来るという事ですね」


「そうだよ」


私が、朝芽さんの連絡先を知っていると言った途端、女月と紗美は凄く驚いた様子でいた。


「しっかし、よく山田がそんな事を許したな」


「いや、朝に登校中には、山田はいなかったよ」


「なるほど、それでスムーズにチャットの交換が出来たというワケか」


「まぁ、なにわともあれ、今日の放課後は朝芽さんが練習に見に来るのですから、いつも以上に真面目にやらないとね」


「そうだな。今日は鬼コーチ面を封印しないとな」


「そう言って、いつも封印しておいてよ」


「ホントですわ」


「いつもはダメ!!」


「やっぱり、そうなるのね」


今日の放課後に、朝芽さんが私達の練習を見に来ると知った途端、女月と紗美は、凄く緊張をした様子となった。


 その後、私は朝芽さんのスマホに、今日の放課後の練習を見に来る際に、山田も一緒に見に来る様、チャット文を送っておいた。


「とりあえず、送信!!」


「これで、今日の放課後は、朝芽さんと山田さんが来ますわね」


「はたして、本当に山田は、私達の活動や動画投稿サイトに良い印象を持ってくれるのかしら」


とりあえず、『山田を納得する動画』を見せる会議は、動画ではなく、私達の練習風景を見せる事で決まった。

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