動画投稿サイトは凄い
2010年代前半は、かつての1980年代以来の空前のアイドルブームであると、どこかのサイトで見た事がある。
しかし、そのサイトはどこにあったかなんて、今は覚えていない。
なぜなら、ネットを見ている時なんて物事を考えずに適当に面白そうな記事を探しながら見ているのだから。
ただ、1つ言える事がある。
昔のアイドルと今のアイドルの大きな違いは……
「おい! 阪畑、聞いてるのか!!」
「はっ、はい!! なんでしょうか!?」
「何でしょうかじゃないだろ? さっきから何度呼んだと思っているんだ!?」
「そうでしたか。それはスミマセン」
今は、昼食前の最も空腹な時間帯である4時限目の『政治・経済』の時間である。
そんな授業中にも関わらず、私、阪畑麻子はいつもの様に窓際の席に座りながら、どこまでも青く広がる大きな空と大きく広がりすぎた白い入道雲をボーを考え事をやりながら眺めていた。
もちろん、ボーと窓を眺めていた事に関しては先生に怒られ、その後は先生が指定した場所の問題を答える羽目に合う事になりました。
そんな感じで先生に怒られた私、阪畑麻子は、この学校のブレザーの制服を着て、茶髪ロングの髪型の前髪の左側にヘアピンを止めている髪型をしている、自分で言うのもなんだが、可愛い女の子である。
そして、時間は昼食の時間となりました。
「そう言えば、ゴールデンウィークも終わったね」
「そうだね。そしたら次は夏休み。記念すべき高校1年の夏休みはどこに行こうかな?」
「どこかに行くにも、私、そんなにお金ないから、あまり遠出は厳しいよね~ せっかくの女子高生1年目なんだから、今までに出来なかった夏を経験してみたいものね」
ゴールデンウィークが終わり、高校生活も始まり1ヵ月が過ぎた今、このクラス内でもいくつかの仲良しグループが出来上がり、それぞれのグループ内で楽しく会話をされている。
私、麻子も同じクラスの友達である尾神女月と2人で楽しく話をしていた。
尾神女月は、身長は私よりも少し小さく、黒のショートカットで後ろをツインテールではなく、両サイドに結んだ髪型をしている。
「そう言えば、麻子は何かバイトしていたっけ?」
「ん? 私はバイトなんてやっていないけど?」
「そうだったわね。麻子がバイトなんてやる様な感じには見えないものね」
確かに私は女月の言われる通り、バイトをやる感じではない。
高校に入ってから、そろそろ1ヶ月だけれども、バイトをやっていないどころか、部活にすら入っていない。
そして、現在もこうして友達の女月と一緒に、のんびりとした高校生活を送っているのである。
そんな中、女月は私の顔を見て、話を始めた。
「そう言えばさ、『レンレ~』の動画見た?」
「『レンレ~』? あぁ、例の動画投稿サイトで有名な人ね」
女月は突然、バイトの話から例の動画投稿サイトの話を始めた。
例の動画投稿サイトと言うのは、ここ数年の間で世界中で大ヒットをし、中にはその動画投稿サイトで生計を立てているサイトである。
そんな人の中には、年間数億も貰っている凄い配信者もいると、別の配信者が言っていたのを、以前に同じ動画投稿サイトで見た事がある。
「そうそう、その人よ。中にはアンチな意見を言う配信者もいるけど、私はその『レンレ~』って人は凄いと思うわ」
「どうして?」
「だって、ギターの演奏が偶然にも海外のユーザーの目に止まって以降、その『レンレ~』って人の動画チャンネル登録者は、うなぎ上りに増えていったのよ!!」
友人の女月は、レンレ~という例の動画投稿サイトのトップ配信者の事を熱く語り始めた。
「更に、動画チャンネルの人が増えれば、その分『レンレ~』の動画を見る人が増えるじゃない。そしたら、『レンレ~』の元には、たくさんの大金が入って来るじゃない」
「そう言えば、その動画投稿サイトって、動画を見てくれた人の数におおじて、その動画の配信者にお金が入って来るシステムがあるのよね」
「そうそう、本来なら1人0,1円になるのだけれども、動画チャンネルの登録者が増えれば、1人につき1円になったりもするそうよ」
「ホントに!! それは凄いね」
確かに、動画チャンネルの登録者が増えれば、リスナーも自然に増え、それで食べていける様になる!! と、女月が熱く語る話を聞いていた私は強く思ってしまった。
そして、私は思い切って、女月に動画投稿サイトを使って金儲けが出来るかも知れないという話を、まるで悪人の様に持ちかけた。
「そう言えばさ、その動画投稿サイトでさ、私達も一攫千金が出来るんじゃないかな?」
「えぇ!?」
「ほらさ、今の時代は昔の時代と違って、色々と出来る時代じゃない」
「色々と出来ると言うのは?」
「例えば、『レンレ~』さんの様に、今の時代ならプロのミュージシャンじゃなくても、多くの人に自分のギターの演奏を見てもらう事が出来るじゃない!!」
「確かにそうね。でも、一昔前でもプロでなくても多くの人に自分の演奏を聴いてもらおうとする方法はあったわよ。例えば路上で演奏をするとか」
「でもさ、その方法だと、その路上ライブをやった周辺の人しか聞いてくれないじゃない。それだと、その場にいる人の評価が全てになってしまうよ」
「なるほどね。確かに初めに行った路上ライブでの評価が低ければ、それが全てだと思い込んでしまい、自分には才能がないのだと思い込んでしまうものね」
確かに女月のいう通りである。
一昔前の時代であれば、例えギターの演奏でなくても、絵にしても自作小説にしても、一昔前は日本全国いや世界中からの評価など貰うのは、そう簡単なものではなかった。
かと言って、現在でもそう簡単に世界中からの評価を得るのは簡単な事ではないのだけれども……
それから、私は更に動画投稿サイトを使って、何か出来ないか考え始めた。
「そう言えばさ、もし私達が動画投稿サイトをやるとしたら、どんなのが良いかな?」
「そうねぇ~ 今の『レンレ~』は商品紹介で動画の再生回数を稼いでいるけど、私達がいきなりそんな商品紹介を始めても、絶対に誰も見てくれないわね」
「確かにそうね」
この件に関しては、確かに女月のいう通りである。
商品紹介だけで多くの再生回数を稼げるのは、人気というブランドがあってのもの。
いきなり素人、その上女子高生である私達がやったところで、人気が出て再生回数が伸びる訳もない。
「そう言えば中には、歌を歌ったり、ダンスを踊ったりしているだけで、再生回数を稼いでいる配信者も中にはいるわね」
歌やダンス?
「それだ!!」
その時、私の脳裏には、以前に見たアイドルに関する記事が書かれたサイトの件を思い出した。
これも全て、女月のさりげない一言のおかげである。
そのおかげで、私はとってもよいアイデアが浮かんだ。
そのアイデアとは、私達も歌を歌ったりダンスを踊ったりする動画を投稿すればいいという事を。
「私達もさ、歌ったり踊ったりするアイドルの様な動画の投稿をやればいいんだよ」
「私達で?」
「きっと行けるよ。世の中の動画投稿サイトを見てみれば分かる。女子高生は女子高生というだけで人気があるのだから!!」
「その根拠はどこにあるの?」
確かに、女月のいう通り、始めは根拠もなく言った。
しかし、一度言ってしまったのだから、そのない根拠を貫いて行かなければならない。
「そっ、それは…… まぁ、とりあえず、人気のあるアイドルだって、ほとんどが10代後半じゃない!」
「確かに言われてみると、男性アイドルと違って、女性アイドルの場合は、若い方が人気があるわね」
「そうでしょ! だったら、若い女子高生である私達なら、きっと上手く行けるよ」
そして、私は初めはなかった根拠を貫き、ついには女子高生が人気であるという根拠を、自分で見つけてしまった。
「確かに、動画投稿でアイドルなんて面白そうね。私達でアイドル活動してみる?」
「そうだね。やってみましょうか!!」
こうして、昼食時のさりげない会話から、私と女月の動画投稿によるアイドル活動の計画が始まった。