1章 1話
――局地的に、氷河期が訪れた。
時刻は深夜、丑三つ時を越えた辺りの午前5時(丑三つ時というものが正確には何時を指すのか知らないが)。バイトを終え、遅めの夕飯も終え、テレビも見終え、南国しろくまアイスを貪りながらネットサーフィンに勤しんでいた俺は、白み始めた空に無情なる時の流れを告げられ、ついでにアイスが歯にちょっとキーンときて、戦慄を覚えていた。戦々恐々としていた。
(もう朝かよ……。寝る前に一服するか)
LUCIAとライターを手に取り、ベランダにでる。
室外機の上に座り、呆然と煙を吸った。
――――(いい加減、戻さないとな……)
あの日以来、俺の生活は狂っていた。生活サイクルは完全に崩壊し、大学もろくに出ていない。惰性でバイトをこなし、無気力に、ただなんとなく生きる日々。やりたいこともなければ、やるべきことさえにも考えが回らない。無意識的に、考える事を放棄していた。このままではいけないと、当然頭では理解していた。していたが、しかし俺にはそれを打破するだけの気力がなかった。つまるところ俺は、ごくごく平凡に端的に、有り体に言うと、生きる意味を見失っていた――――――――あの日また、彼女に逢うまでは。