『玄人仕事・アーカイブス #7~#9』
#7 『ボーイズドリーム・ロボティクス』
<2016.6/1 ~ 9/7投稿>
長過ぎた「#6」に続き、約三ヶ月かけてまた一から構成した新章です。
珍しく仲間うちからお褒めの声がかかり、読者さんからも「もう一回読みます」と言われるなど、綺麗にまとまった作品となりました。
全十章のうち、実は最もうまくいった章というイメージがあり、仕上がりも制作期間も作者として理想とする章です。
全40話、大まかにみて十二万文字くらいだと思いますが、このくらいだと文庫一冊弱くらいですので、長さとしても丁度いいですね。
これを書いておいて言うのはどうかと思うのですが、実は千場、それほど「ロボットもの」に詳しくはありません。
連載が結構に長くなっていたことと、「ロボットもの」に詳しくない人でも入れる内容にすることを考慮に入れて、資料無し、あるのは自らのうっすいロボットもの全知識だけで挑みました。
ここまでのお話が結構に重めのものだったのでコメディ多め、これからの他の章とのバランスを考え、息抜きの章として作っています。
このお話は、ある日、友人との酒の席で――
「ダテさんがガ〇ダムの冒頭みたいにロボットに乗り込もうとしてさ、でもあの人は残念だから操作できるわけないんだよ。それで別のちゃんとした主人公が現れて、そいつがかっこよくロボットで主人公するんだよ。それをダテさんが「いいなー」っていいながら見てるだけっていう……」
という、しょうもなさすぎる思いつきを友人に話してみたら、
「なにそれ見たい、残念なダテさん見たい」
と、思った以上に好感触だったために創作が実行されました。今ではいい思い出です。
本編も折り返しを越えたから…… というわけではありませんが、若干別の章の要素が多めの章ですね。
ラストバトル中に、アロアが使っていた全身から魔力を吹かす技を目眩ましに使ったり、要塞空母を『爆発』の真魔法で沈めたりしています。
懲罰房という牢に閉じ込められても平然としていたり、軍人たちに容赦がなかったりするのも、最後まで読まれた方ならわかるかなぁという感じです。
最後のボトル、十二年ものの話のあとで伊達は二十一年ものをキープしていますが、ミスではありません。
ジェイルがちょうど二十一歳なのでという、彼らしい微妙に頭の悪い小粋っぷりです。
そういえば今までは濁していましたが、「#7」では固有名詞のネーミングに「音楽」が関わっています。
基本的に人物名や機体名などは、曲のタイトルや歌詞の中にまれに出てくる「だから誰だよ!」とつっこみたくなる、永遠に謎な人物たちの名前が盛り込まれています。
全てではありませんが、一部の名前は頭に「ミスター」や「ミセス」をつけてみると面白い発見があるかもしれません。古いのばっかりですけどね。
各部タイトルは「機械」っぽいものを挟んでいます。
#8 『アズ・タイム・ゴーズ・バイ』
<2017.2/4 ~ 5/21投稿>
「#7」終了四ヶ月後に投稿を始めた「タイムリープもの」で、『玄人仕事』として新規に用意された最後の章です。
私は十章のシリーズものになると、どうやら八章あたりに「異質」な話を欲しくなるらしく、ほかの章とは全く異なる章となりました。
舞台としては1930年代くらいのヨーロッパをモデルにしています、多分。
大仕掛けとして「タイムリープ」「デイトル」と二つを持ってきているので、魔物などのファンタジー要素は盛りすぎかなと思い、極めて普通の世界になりました。
やっぱり物語を作っているとどうしても一度くらいは「タイムリープもの」に挑戦したくなるもので、私の腕で可能なのかなと不安ではありましたが、思いの外うまくいってくれました。
全章通して大人向けの部類に入る章で面食らった人も多いと思いますが、比較的評判のいいお話でした。
ここまでの章で伊達が事件を解決できなかった、人の助けになることができなかったというお話は入れていませんでしたので、「苦い解決」も普通にあるということを示すため、あのような結末です。
「なろう」で連載という形になると一章あたりが長期になるので、長々読んでくれた方々に対して遺恨の残る「バッドエンド」は描きづらいものがあります。
これは書いていいことなのかわかりませんが、作家にとってバッドエンドはある種の逃げのような側面もありますので、正直あまり書きたくはないですね。なにがしかのテーマとして置かない限り、今後も安易なバッドエンドものはお出ししないと思います。
「#4」よりも色濃い形で伊達が強さを用いない章です。
いつもこうでは作者としても退屈しますが、こういうお話は好みです。正直を言えばもう何章かこれくらい静かなお話も入れたかったですね。
各部のタイトルは日付になっています。
「c」のあとの数字が、もう一人の方から見た世界が繰り返した回数で、後ろはそのままに日付です。地味に「朝」「夜」などの部分をどうするかが一番苦労しました。(4時は深夜? 早朝? みたいな)
「c」は「chapter」……? ……すみません、忘れてしまいました。どこかに書き留めてはいたような覚えもあるのですが…… しまらないですね。もっとピンと来る単語だったような……
#9 『アマチュア・ワークス』
<2017.6/17 ~ 11/15投稿>
『玄人仕事』の核心とも言える「#10」へと続くお話です。
「プロフェッショナルもの」と言っていいのか、一章完結、一話完結のオムニバスで、主人公が最初から何らかの経験や技術を持っている作品―― こういった作品ではよくある最終回パターンをなぞりました。
シリーズの最後の最後にして、「主人公」について語られるというパターンですね。
普通に異世界移動ものを書くのだとすれば、第一章はここからになるのかもしれません。ですがお話のスケールからして一番大きなものになることから、この形に収まりました。
仮にですが、このお話から書き始めていたとすればどうだったのでしょうね? ひょっとすると普通の「異世界もの」として、今より読者の方に受け入れられていたのかもしれません。今更試すことはできませんが……
でも、「#1」を投稿し始めていた頃の技術で書いていたらと思うとゾッとしますので、きっと今の形がよかったのではないでしょうか。
念願の「#9」執筆。別にせっかくだからというわけではなく、本章では「伊達良一」を主人公として語るということで、あえて一人称を選びました。
『素人があえて伝える~』の講座でも書きましたが、三人称とは全く違った難しさのある一人称。『玄人仕事』の合間に一人称の作品をいくつか書いていたことが助けとなり、なんとか形にすることができました。
主人公の感情を伝えるにはいい形式で、逆に「#9」はこちらを選ばなければどんな作品になっていたかわかりません。
過分に血なまぐさい章でして、本作のR15設定は、この章があるために設定していました。
特に戦場での狂気的なシーンは序盤の章を投稿しているうちから、「いつかあのシーンを書かなきゃいけないのか」と思い浮かべることも多く、実際に執筆を始めた時は「ついにここか……!」と身が固くなる思いでした。
どこまで猟奇的にやれるか、どこまで責めた表現ができるか、そしてどこまでで筆を緩められるか―― 「#9」全体を通してもそうでしたが、あくまで『玄人仕事』としての柔らかさを見失わないことに注意が必要でした。
ただ残酷な世界を描く、この作品にそんなことが求められているとは思いませんでしたし、それは千場のやることではありませんでしたので。
戦場でのシーンもそうでしたが、やはりルアを出せたときは「ついに」という気持ちが大きかったです。
ただ本当に難しい人物で、ヒロインとしてはスタンダードな性格設定のはずなのですが、なかなかに自発的に動き出してくれないことに困りました。
変に気負い過ぎていたのか、子供時代である良一を含め、全体的にこの章の人物たちは動きが固かった印象です。
自発的に動きだすのはハリーゼルが一番早く、作者の側としては彼が全体を引っ張ってくれた印象があります。ああいったタイプの人物を書くのはさすがに初めてなのですが、思いの外書けるものですね。
そういえばこの話から出てくる「時の壁」は、秘技ではなく秘儀と表記していますが、間違いではありません。
これは以前に私が四年ほどかけて作った作品からそうだったのですが、神様から授かった力は「儀式」によって行使するという意味をもたせています。使い方自体が「秘密」の「儀式」なんですね。
各部のタイトルは「色」を含んでいます。場面によって変わります。




